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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1932/2685

戦争と平和、その469~廃棄遺跡⑩~

 オシリアがドゥームの行動を疑問に思って質問する。


「ねぇドゥーム、こんなことをして何の意味が? 私たちの存在を勘付かれるだけじゃなくって?」

「もちろん説明した通り、面白いということが一番だけど?」


 ドゥームの返答は軽い調子のものだったが、オシリアもドゥームの性格を理解し始めている。意味のないことを、最近のドゥームはやりたがらない。じっと見つめるオシリアにドゥームは観念したかのように話し始めた。


「・・・僕も確信があるわけじゃない。だけど、オーランゼブルが失敗するとしたらここだと思う」

「失敗?」

「今回の事態が、完全にオーランゼブルにとって予想外の出来事ってことさ。オーランゼブルの計画が千年以上も前から発動しているのは知っての通りだ。その計画を狂わせたのは、アルフィリースの存在であり、あるいはアルドリュースの存在だったこともわかっている。

 だけど所詮人間のやったことだ。修正するのに必要だった時間も、十年少々のことだ。全体からみれば微々たるものだろう。だけどウッコはどうかな? オーランゼブルさえ力の及ばぬ化け物だとして、ひょっとしたら、計画の全体像さえ覆すものかもしれない。

 今まで、計画の準備が整ったからと工房に引きこもって出てこなかったオーランゼブルがこうやって直接姿を現したのが良い例だ。しかも、僕を再洗脳して手を借りようとしたんだぜ? 魔人と真竜にさえ脅威となる化け物を倒すために僕の力を借りようとするなんて、まさに猫の手を借りるようなものだ」

「言ってて情けなくならねぇべか、ドゥームさ」


 ケルベロスが残念そうな顔で告げたが、ドゥームは気にしない。


「そんなことで怒るようなプライドなんか持ち合わせちゃいないね。肝心なのは、ここからオーランゼブルの隙を見つけることだ。なんならウッコなる魔物がオーランゼブルを殺すっていうのもある意味ではありだけど、それじゃあ僕の気が済まない。あのハイエルフは、この数千年を後悔させるような残酷なやり方で殺さないと気が済まないからね」

「つまり、ウッコは倒しつつ、オーランゼブルの弱点を探すってことか?」


 グンツの言葉に頷くドゥーム。だがグンツは納得のいかない顔だ。


「そいつはムシが良すぎねぇか、旦那。それにさっき送り込んだ魔物になんの関係があるっての」

「だからさっき道化師みたいなあいつを先に行かせたろう? あれが上手いこと引っ掻き回してくれるさ」

「・・・ああ、さっきの。でもただの人間でしょう? 只者ではないでしょうけど」


 先ほどふらりと現れた奇妙な風体の男をドゥームは見るなり、話しかけるために姿を現した。そしてしばらく話すと、まるで親友の再会のように熱い抱擁を交わしていたのだ。ドゥームと気が合う生きた人間がいるとはきっとロクでもないことには間違いないが、ドゥームは何かを彼に託して別れていた。

 それが何かをオシリア達も教えてもらえなかったが、ドゥームの表情はこれから起こることが楽しみでしょうがないといった表情だった。


「ねぇオシリア。オーランゼブルって、お洒落に興味があると思う?」

「は? 言っている意味がわからないわ」

「そりゃああれだか? 髪や髭を三つ編みにするかどうかって話だか?」

「髪はともかく、髭を結ぶ馬鹿はいねぇだろ」

「それ、西側の辺境民に謝りなよグンツ。彼らは髭を伸ばして結わえるぜ?」

「マジかよ。すまねぇ」


 なぜかグンツが西に向けて謝ったが、ドゥームの意図はわからないままだった。

 だがドゥームは遺跡の中に送り込んだ魔獣を通じて、ある程度中の様子がわかっているようだった。おそらくは、送り込んだ魔獣である程度の地図作成マッピングを行っているのだろう。時々地面に木の枝で図形を描きながら、経路を確認しているようだった。

 そうこうするうち、ケルベロスの部下であるオークたちから報告が上がってくる。地上を警戒させていた面子だが、彼らが報告を上げてきたのだ。


「へぇ、アルネリアが動き出しただか。こことは別の入り口から、遺跡の中に入ってるって?」

「やっぱり入り口は複数あるんだね。だけどこの遺跡は広さはともかく、地下に深い。広さだけなら大草原の遺跡ほど大きい物を見たことはないけど、カレヴァンが守っていた遺跡よりもここの方がはるかに深いんだ。中の地図があるならともかく、ウッコの所まで一直線に向かっても相当かかる。朝が来るまでに到達できるかな?」

「で? これからの私達の行動は?」


 ミルネーの質問に、ドゥームが木の枝をひらひらさせながら答えた。


「ある程度の経路が判明したら、転移で中に飛ぶ。遺跡の防御は働いていないから、転移を使うことも可能だろう。可能であれば、ウッコ討伐の援護射撃と、オーランゼブルの邪魔。あとは、誰がウッコを起こしたのかを確認することかな」

「ウッコを起こした? どうしてそんなことが?」

「ウッコが起きることが予定調和なら、オーランゼブルがそれを外した予想をするわけがないからさ。そうすると、人為的な力が働いたと考えるのが自然だろう?

 そうなると、ウッコを起こした馬鹿は破滅願望の持ち主だ。ある意味では、オーランゼブルより厄介な存在ともいえる。大陸の命運なんて、どうでもいいって言っているようなものだからね。

 この大陸は僕の遊び場だ、なくなったら困る。つまりは、アルフィリースやアルネリアと手を組んででも、ウッコを起こした馬鹿は仕留める必要があるってことさ」

「なるほど、あなたの希望は理解したわ。じゃあ地図作成が終わるまでは待機ってことでいいのね」

「ああ、一刻もあればある程度わかるだろう。それまでは――おかしいな」


 ドゥームが地図を描く手をいったん止めた。その表情に少し困惑が見える。



続く

次回投稿は、1/26(日)16:00です。連日投稿になります。

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