表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1931/2685

戦争と平和、その468~廃棄遺跡⑨~

「・・・なんだったのですが、あれは?」

「道化にしては化け物じみた強さといえるな。ただの人間がああなりえるものなのか」

「惚けたところがなければ、かなり危うい相手でした」

「・・・なるほど、『王種』かもしれんな」


 オーランゼブルがぼそっと呟いたのを、ライフレスは聞き逃さなかった。


「王種? 王種とは、魔物のことではないのか?」

「そう思われているが、真実は違うのだろうな」

「だろうな?」

「我々もよくわかっておらぬのだ。一つ確かなのは、王種というものは自然発生するものではなく、継承されるものということだ。王種と呼ばれる個体を倒すと、倒した者にその能力が継承される。能力は同じとは限らず、異なる形で発現する場合もある。ドラグレオを思い出せばわかりやすかろう? あれは普通の人間でありながら、白銀公という王種の能力を継いだものだ。カラミティも八重の森の王種の能力を継いだ人間だな。

 もっとも、それは五賢者も同じだが」


 驚きの発言にライフレスが目を丸くしたのが面白かったのか、オーランゼブルが髭を触りながら目を細めた。


「なんだ、知らなかったのか?」

「当然だ。五賢者などとは話したことはおろか、面識すらないのだから」

「それもそうか――だがおかしいとは思わなかったのか? 自然発生的にどの種族からも強力な個体は生まれ得るが、グウェンドルフのような真竜と比肩する能力を持つのは本来魔人だけだ。イェラシャは翼人族、ブロンセルは古巨人、ゴーラに至ってはただの狸の獣人だ。真竜に並び立つべくもない種族たちよ。それぞれ種族の中ではぬきんでた強さを持ってはいたが、王種を討伐することでさらなる力を得たのだ。

 もちろん王種といっても、その力は様々だ。継がれる能力も一定かどうかはわからぬ。一つ言えるのは、寿命が延びて全盛期の肉体を維持できることと、全体的に肉体能力が上乗せされるということか。非力なはずのハイエルフの私ですら、素手で石を砕くことになんら労力を必要とはしないからな」

「なんと・・・」


 今まで耳にしたことすらなかった事実に、真剣な表情で考え込むライフレス。そのように延命する方法があったのであれば、魔術で肉の身を捨てたのはなんであったのか、考えてしまったのだ。

 オーランゼブルもまたライフレスの悩みを感じ取ったのか、話題を逸らした。


「あくまで可能性の話だ。それよりも今やるべきことは別にあるだろう」

「・・・そうだな。まずはウッコなるものの討伐が優先ではあるが。だがお師匠、一つ聞いておきたい。ウッコなるものは、王種ではないのか? 討伐した者にさらなる力がもたらされる可能性はないのか?」


 ライフレスの指摘に、オーランゼブルははっとした。それはオーランゼブルですら考えていなかった可能性だった。ウッコとアッカの脅威、そして討伐することのみで頭がいっぱいで、倒した後のことを全く考えていなかったのだ。

 記録では、アッカを倒した誰かにその能力が継承された様子はない。だがウッコも同じとは限らないのだ。オーランゼブルは俄に難しい表情になると、ライフレスに命令した。


「可能性がないとは言えぬな――ならば余計に先を急がねばなるまい。ライフレス、探索を急がせよ」

「承知した。エルリッチよ、猶予はあまりないぞ?」

「そのようですな。先を急ぎましょう」


 エルリッチも事態の重大さがわかったのか、オーランゼブルのことは抜きにしても急ぐ姿勢を見せた。ドルトムントは複雑な感情を抱きながら、先ほどの打ち合いの手ごたえを反芻していた。


「――遊具で俺の剣を捌くとは屈辱だ。あの手ごたえは姉上以来――次に出会った時は、必ず」


 ドルトムントは剣を握り締めると、エルリッチからの報告をまんじりともしない気持ちで待っていたのである。


***


 一方、遺跡の外では――


「ドゥーム、言われた通りにありたけの魔物を集めたぞ?」

「こっちもできたっぺ」

「ご苦労様」


 ドゥームの命令通り、ミルネーとケルベロスが魔物を集め、遺跡の中に追い立てたところだった。魔物や魔獣にはそれぞれドゥームが狂化の魔眼をかけ、オシリアの恐怖と威圧で追い立てた。さらには中に入っても止まらぬように、何体かにはドゥームの悪霊を憑依させ、操っている。

 ドゥームがこのような行動に出たのは、もちろん面白そう、そして他人の邪魔をするのが楽しいからという興味が一番だが、他にも理由があった。



続く

次回投稿は、1/24(金)16:00です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ