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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1928/2685

戦争と平和、その465~廃棄遺跡⑥~

「なんという体たらくだ――元の場所に送り還してやろうか」

「いっそ塵に還したらどうだ」

「そこまでには及びますまい、お師匠。こう見えてこやつ、この遺跡の探索に必要な能力を備えております」

「ほう」


 ライフレスは噛みつくブランシェをひっぺがすと、エルリッチを助け出した。


「いつまでふざけている」

「王よ、私は悪くありません!」

「ガイコツがゼンブワルイ!」

「ふぅ・・・ドルトムント?」

「私に何か期待されても困りますな」


 ドルトムントは仏頂面で答えたが、少し懐かしい空気を思い出していた。かつて冒険をしていた頃、このようなことは日常茶飯事ではなかったか。今ではもう遠くの記憶過ぎて、思い出すのも難しいが。

 ライフレスはブランシェをひっぺがすと、優しくなだめた。


「ブランシェ。俺と共にいる時は、それなりの身だしなみをしろと教えたな?」

「ウウ・・・服キルの、ニガテ」

「俺と共に何かをする時だけでいい、ちゃんとするのだ。強くなりたいのだろう? ならば我慢も必要だ。エルリッチのことはいいが、俺の言うことは聞け」

「オウサマのイウコトナラ、ショウガナイ・・・」


 ブランシェはしょんぼりとしながらも、きちんと衣服を身に着け始めた。それがアルフィリースに似ているから、どうにも妙な気分になるのだが。

 そしてエルリッチは噛みつかれた頭を撫でながら、身だしなみを整えていた。


「お見苦しい所をお見せしました」

「まったくだ。俺の過激な崇拝者がいた時代なら、お前たちは手打ちだな」

「はは、ご冗談を」

「なぜ俺が冗談を言わねばならん」


 ライフレスの言葉に、エルリッチは肝が冷えた。


「俺の部下には、俺でもやりすぎだと思うくらい過激な連中がいたからな。戦争では役に立ったが、手綱を握っておくのは大変だった。奴らの姿を見れば魔王の方が逃げ出したものだ」

「くわばらくわばら、今彼らが生きていなくて何よりですよ。で、王よ。私に期待することとは?」

「貴様の得意技を見せよ。土塊人形ゴーレムの作成だ」


 その言葉に、エルリッチがにたりとした。


「久しぶりですな。存分にやってよろしいので?」

「ここに満ちる大流マナの量なら、工房を構えずとも存分な数が作成できよう。俺の使い魔は作成に鳥獣の死骸が必要だからな。ここで作るには向いておらん」

「その点私なら土さえあればいくらでも作成できますからな。ではこの遺跡の探索に使うということでよろしいでしょうか?」

「理解が早くて何よりだ。では早速この地図と照らし合わせて、正しい順路を構築しろ。遺跡の道筋は変化している可能性がある。その可能性も含めてな」

「御意にございます」


 遺跡の中でありながら地面がまだ土であることが幸いしたのか、エルリッチは早速ゴーレムの作製に取り掛かった。エルリッチの魔術にて土が人型に変形し、それらがさらに魔法陣を描きながらエルリッチの魔術の能率と出力を上げていく。

 それを見ながらオーランゼブルは頷いていた。


「なるほど、ゴーレムを利用してさらに魔術を構成するのか。面白い試みだ」

「土さえあれば素材は他に必要とせず、魔力の供給も最小限でしょう。奴が人間であった頃からの特技と聞いています。もっとも、人間であった頃は医者としての診療活動の補助をさせていたようですが」

「才能の無駄遣いだな」

「御意にございます」


 欲がないといえばそれまでだが、エルリッチが今のように変貌するまでにどのような経緯があったかは気になるところだと、ライフレスは考えた。己が覚醒した際に、たまたま自分の魔力の波動を発見したとかなんとかで、自ら売り込んで部下となった男だが。話相手には飢えていたし、自分が眠っていた間の情報も欲しかった。多少五月蠅くはあったものの、邪魔にもならぬからそのまま仕えることを許したが、もう少し考えてやってもよいかと考えたのだ。


「(思えば、俺の部下にも面白い奴が多かったな――日々戦のあとは宴会をして――冒険者であった頃から連れて来た仲間――物書き、芸人、吟遊詩人、浮浪児――戦いの役にも立たぬ者も多くいたが、それはそれで面白かった。またあのように仲間を募るのも面白いか――)」


 ライフレスがふとそんなことを考えながらオーランゼブルと話し込んでいたが、エルリッチはゴーレムの作製を続けながらドルトムントを傍に呼んだ。

 その際にオーランゼブルとライフレスが話し込んでいることに気付き、二人に見えないようにしてドルトムントに向けて魔力で空に文字を書きながら筆談を試みた。



続く

次回投稿は、1/18(土)16:00です。

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[一言] >エルリッチは肝が冷えた。 いや君、骨しかないんじゃ?
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