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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その456~道化師の遊戯⑨~

 そして今度はウルティナの元に再びブランディオが出現していた。時間にして10数えもしない間の出来事だったろうか。エネーマが誰かを呼ぶ暇すらなく、ブランディオは消え、そして再度出現して。

 驚き呆然とするエネーマに向けて、ブランディオは無表情でウルティナを抱えながら告げた。


「見逃したるから、さっさと消えや。さっきの気色悪い奴は仕留めといてやったわ」

「・・・随分な言い方だわ。私たちを誰だと」

「勇者ゼムスの仲間だなんて事実が、何の保障にもなると思うなよ。ゼムスなんぞ、相手にする価値もないから放っとるにすぎんのや。目障りになったら潰す、でなけりゃ放っておく。ただそれだけの存在や。

 後ろ盾もなく、ちょいとばかし腕が立つことが何の役にも立たんことは当のゼムスがよくわかっとるやろ。お前らが誰を殺して誰をいたぶろうが、アルネリアの邪魔にならん限りは捨て置いてやるわ。が、それを勘違いして一線を越えたら容赦せん。

 そんくらいわかれや」


 ブランディオの言い方は癇に障ったが、エネーマはそのまま退いた。ブランディオの底の知れない能力もそうだが、その名前と正体に覚えがないことが余計に気にかかったのだ。


「(ウルティナの年代は覚えている。巡礼となる者は各地方から選抜されるが、優秀であれば15歳になる頃にはグローリアや口無しの専門機関に一度集められ、指導を受けている。そこでも頭角を現す者だけが、実地経験を経て巡礼に選抜される。

 だがブランディオという者の名前は前後5年程度の世代には覚えがないわ。いったい、あの男はどこから出てきたの?)」


 エネーマは疑問を呈しながらも、ライフリングとヴォドゥンを伴って早足で移動する。


「シェキナ――バフルールは?」

「仕留めたそうよ」

「そ、ならいいわ」


 シェキナが死んだことにライフリングは何一つ感慨を抱いていないかのように、そこで話を終えた。だがそれは三人共に同様である。いかに化け物じみた道化師が相手とはいえ、死んだ者に思いを馳せるような間柄ではない。少なくともそのような感傷を抱くようでは、生きてこれない戦場を生き延びてきた。共に戦った者が入れ替わることなど、ざらだった。

 そしてヴォドゥンの興味は既に別に向いている。


「彼、すんごく強い巡礼だねぇ。後輩?」

「いいえ、あんな奴知らないわ」

「私でも使えない魔術を使っていたよ? 興味あるなぁ・・・同じ匂いがしたもの」


 ヴォドゥンは興味深そうにしていたが、その表情からは薄ら笑いが消えていた。ブランディオに本気で興味を抱いた証拠だろうが、今更ヴォドゥンが単独行動をしてもエネーマには止めるつもりはなかった。それに、道化師は自らの沽券と評価にもかかわるが、ヴォドゥンが暴走したとして止めようという輩は仲間にも誰もいまい。ヴォドゥンはとても『理性的に』暴走する。自らがやったという証拠があるとして、消す時は村一つごと消すことを厭わないからだ。

 それに、そもそも本気になったヴォドゥンに単独で勝てる仲間は誰もいない。ゼムスですら、引き分けがようやくだった。ヴォドゥンに睨まれたら最後、命運は尽きる。

 そしてヒドゥンが一つ気になったことがあったように、少し考え込んでいた。その表情に、エネーマが気付く。


「どうしたの、下僕。何か気になることがあって?」

「いや・・・気のせいだろう。そんなこと、ありえるわけがないのだ」

「? 何よ、気になるわね」

「久しぶりに戦ったからな、勘を取り戻すのにもう少し時間がかかりそうだということだ」


 ヒドゥンが気になったのは、ブランディオが瞬間的に放出した魔力の量である。ヒドゥンはオーランゼブルの傍に長らくいたが、その全力を見たことはない。オーランゼブル自身が戦うことが非常に稀であるし、全力を出すほどの相手など滅多に存在しない。

 その中でもある程度、このくらいだろうという魔力の目安はつく。もちろん比肩する者など見たことがないからあくまで推測する程度に過ぎないのだが、魔力の総量だけで比較するなら、ライフレスの1.5倍程度がオーランゼブルの魔力の総量だろうと推定している。

 使う魔術、防御と攻撃の比率、消費効率などによって変わってくるが、魔力の総量だけならブラディマリアにすらオーランゼブルが圧倒する。だからありえないのだ。20年そこそこしか生きていないはずのただの人間が、オーランゼブルの魔力を凌駕するなどということは。だから、きっと勘違いということで終わらせることにした。

 ヒドゥンはエネーマに呼び出されたと言うことに苛立ちつつも、久方ぶりに戦いの場を持てたことにある意味では感謝していた。エネーマとその仲間との連携で少し試してみたいこともあったし、オーランゼブルの元を強制的に離れたことで見えてくる可能性もあるだろうと思う。目的を遂げるにはオーランゼブルの元にいることが一番容易いと考えただけで、もうその手伝いをする必要もなくなってきたからだ。

 それに、先ほど感じた懐かしい気配をどう動かすかで、これからの状況も変わるだろうと踏んだのである。



続く

次回投稿は、12/29(日)17:00です。

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[良い点] 各視点の描写があるため各キャラクターに個性がでている。モブキャラが全然いない。 [気になる点] 流石に魅力的なキャラが多いですが覚る限界がきました。勇者一党をキャラクターセツメイに追加お願…
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