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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1918/2685

戦争と平和、その455~道化師の遊戯⑧~

「避けろぉ!」

「ひょひょひょ!」

「!?」


 糸を使ってのバフルールの一斉射撃。シェキナの持っていた矢を、爆発したように一斉に打ち出した。もちろんバフルールが弓矢の扱いに優れているわけでもないし、このような射ち方をしたことがあるわけでもない。その狙いは不正確で滅多射ちである。

 この場にいる者なら問題はないはずだった。だから放った矢がバフルールの残した糸にひっかかり、バフルールですら予想外の軌道を描いたことが、ウルティナに予想できようはずもなかったのだ。


「・・・・・・え?」

「おい、ウルティナ?」


 ウルティナの胸に矢が突き刺さっていた。ウルティナとて、今まで何度も攻撃を受けたことがある。訓練で、実戦で、何度も斬りつけられ殴られ、乙女の柔肌として恥ずかしく思うほど、傷痕がそこかしこ残っている。

 もちろん矢だって何度も受けた。だからいつものように引き抜こうとして、ウルティナは力が入らないことに気付いた。そして意図したわけでなく、膝から力が抜けて崩れ落ちたのだ。


「あれ――これって、まずいかしら?」

「ウルティナ? おい、下手な冗談はやめや」

「ひょひょひょ。致命傷ですねぇ、それ」


 手を叩いて喜ぶバフルール。間髪入れずライフリングが懐から出した瓶の蓋を開け、ヴォドンが魔術を使用しようとした。だがそれを見たバフルールはさっさと屋根の向こうに消えた。


「(こんな体じゃあさすがに存分に戦えませんよぉ~体が馴染むまでさようならぁ~)」

「どうなっている?」

「気功の扱いだろうが、超人の領域すら超えているな。多分、躰に溜めていた気功を全て使って生きている。血止め、気功で練った糸を使ってシェキナと体をくっつけ、心臓を強制的に動かしたのだろう」


 ヒドゥンの見た先には、枯れ果てたバフルールの元の体があった。体に脂肪としてため込んでいた気功を、全て頭部に集中して逃げた。そんな人間がいるなど聞いたことがなかったが、実際にやってのけたのだから仕方ない。

 だが仕方ないですまない人間がいた、ブランディオである。エネーマがウルティナの容態を見るために傍に寄ろうとして、ぴたりと足を止めた。近寄るのが不可能なほどの凄まじい殺気が、結界の様にウルティナとブランディオの周りに張られていた。

 既に傷口は氷の魔術で止めてある。そしてウルティナの動きが非常に緩慢になっていた。その様子にエネーマが違和感を持った。


「(時間停滞の魔術? この男、時間操作の魔術を使うの?)」


 エネーマが驚いたのはこれだけではない。なんとブランディオはエネーマが見ている目の前でその姿が消えたのだ。短距離転移だったが、発動までの予備動作も魔術収束もまるでない。呼吸するように自然に、ブランディオの姿は消えていた。


「何が――」


 エネーマが驚く間に、ブランディオの姿は逃げ出すバフルールの正面にあった。突然の出現に驚いたバフルールが急停止する。


「うわぁお!」

「どこ行くねん、ワレ」


 ブランディオが突然錫杖をバフルールの頭上に振り下ろした。バフルールの白羽取りは失敗し、その脳天を割ったかと思われたが、またしても糸に邪魔されていた。ブランディオの一撃の重みにバフルールの脚が地面に沈むが、それでも糸は切れなかった。


「いかに威力があろうとも、力づくでは絶対に切れませんよぉ~気功とはそういうものですから!」

「さよか。そしたら、その気功なんちゃらを使ったらええんやな?」

「はいぃ?」


 バフルールが驚く暇もなく、ブランディオの錫杖が糸を切断し、バフルールを真っ二つにしていた。バフルールは久しぶりに、自分が驚かされる側に回ったのだ。


「あなたも、気功使いぃぃぃ?」

「あほ抜かせ、今覚えたわ。あんさんの使い方みてたら、そんくらいできるわ」

「ええぇ~凄すぎぃ・・・」


 バフルールが崩れ落ちたが、ブランディオは容赦も油断もしない。ぱちんと指先を鳴らすと、巨大な円柱が落ちたかのように空気の塊がバフルールを肉塊に変えた。そして今度は地面を球体に抉って収束させると、その肉玉を召喚した得体のしれない化け物たちの中に放り込んだ。

 バフルールであった肉玉に群がる化け物たち。そして欠片すら残さずたいらげると化け物たちは霧散して消えた。同時に、ブランディオの姿も再び消えたのだった。



続く

次回投稿は、12/27(金)17:00です。

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