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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1908/2685

戦争と平和、その445~太古からの覚醒⑤~

「ぎゃん!」


 それは乱暴ではあったが、鉄球はどこかに飛んで行った。殺意を再生力に変えて再生したリアシェッドは、二人を素早く救い出した。


「セロー、ハムネット! しっかりなさい!」

「・・・るっせーな、聞こえてるよ。そもそも不死身なんだから死にゃしねぇよ」

「・・・激し、く同意。リアシェッド、お人よし」

「五月蠅いわね」

「んで、誰よ? 俺らを助けてくれたのは? 敵ではなさそうだが、味方でもなさそうだな?」


 そこには僧侶の姿をした女、それに背中に大きな荷物を背負った女、獣の皮と服を被った女、それに手に大きめの本を抱えたローブ姿の女がいたのだ。

 その誰もから血の匂いがする。どうやら戦闘をしてきたことは間違いがなさそうだが、先頭の女僧侶が少し気の抜けたような声で獣の皮を被った女に語りかけた。


「・・・『道化師』がいないじゃないの、『弓兵』?」

「既に移動した後のようだ、『僧侶』殿」

「ち、使えないわね」

「そうは言ってもさぁ? 道化師の後を追うのは大変よぉ?」

「死体の後を追って行けば間違いなくたどり着くでしょうが、基本面白いところに向けて歩いて行くのが道化師。今どこが一番面白いか、と言われれば、間違いなく統一武術大会でしょう」


 僧侶がリアシェッドを殴り飛ばしたであろう棒状のメイスをひゅん、と回す。


「ゼムスがしばらく単独で依頼を受けないといけないから、道化師を見張っておけと言っていたのに、こんなことで見失うなんてね」

「仕方がないわ。道化師を逃がさないでいられるのはゼムスくらいよ。あとはシェバかしら」

「っていうか、道化師の傍にいて生きていられるのがゼムスだけ、みたいな?」

「副長殿も問題ないと思っていたのだが、道化師は腕前を上げていたな」

「厄介な。このまま放置すれば、我々が大陸中の諸侯から目をつけられるわ。もはや生死は問わずね。確実に殺しましょう。行くわよ、『薬師』、『万能学者』」

「言われずとも、そのための我々の召集でしょう『僧侶』エネーマ?」

「しょうがないなぁ、高くつくよぉ?」

「おい、ちょっと待てよ。こんだけのことをしといて俺らに挨拶なしか?」


 全くこちらを見るそぶりすら見せなかった四人組の女子に、セローグレイスがつっかかった。瞬間、僧侶エネーマがため息をついた。


「スピアーズの姉妹であるあなたたちを見逃してあげようとした、我々の配慮がわからなくて? あなたたちなんかに構っている暇はないの」

「てめーらの追っている奴がこっちに粉かけてきたんだぜ? 事情ぐらい説明しやがれ」

「そんな義理も時間もないわ。それにあなたたちは見つけ次第、即刻始末するように傭兵ギルドに手配書が出回っている。捕獲も我々の実力なら容易い。さっさと大人しく領地に引っ込んで、お姉さんの尻でも舐めていなさい、雑魚共」


 徐々に苛ついたエネーマの額に青筋が浮かんでいた。だがそれはセローグレイスも同様だった。そのセローをリアシェッドとハムネットが止める。


「争うつもりはないわ、どうやら助けてもらったようだしね。だけど私たちも舐められっぱなしじゃ終われないわ。見つけてやり返すつもりよ」

「跡、追える。臭い覚え、た」

「お前ら、勇者ゼムスの一党だな。道すがら説明くらいできんだろ? じゃなくても勝手にやるけどな!」


 そう言い放つ三姉妹だったが、エネーマは仲間の顔をちらりと見ると、顎で付いてくるように促した。道すがら、エネーマ以外の三人が挨拶する。


「『弓兵』シェキナだ、よろしく」

「『薬師』ライフリング、慣れ合うつもりはないわ」

「『万能学者』ヴォドゥンよ。よろしくね~。ねぇねぇ、不死身なんだって? 解剖してもいーい?」


 ヴォドゥンがセローグレイスの目をのぞき込んだが、そのヴォドゥンの目が真っ暗な闇のように見えて、セローグレイスですら思わずたじろいだ。そのヴォドゥンの首筋をエネーマが掴み上げ、引き摺っている。


「あーん、せっかくの研究素材なのにぃ!」

「余計な時間はないと言っただろう」

「・・・道化師、と呼んでいたわね。それが私たちに突然攻撃を仕掛け、あなたたちが追っている相手? 何者なの?」


 リアシェッドの質問に、エネーマが急ぎ足で歩きながら答えた。


「仲間よ、一応ね。向こうはそう思っていないでしょうけど」

「我々もそう思っていない、安心してくれ」

「? わからないわね。仲間なら協力して私たちを殺すんじゃないの?」


 その言葉に、四人ともが絶句していたが、ヴォドゥンだけがへらへらと話し始めた。


「道化師は最悪の快楽殺人者なんですよぉ? 道化師にしてみたら、ただじゃれているだけなんでしょうけどねぇ」

「息をするように死体を積み重ねる奴だ。あれには人の命も道端の石ころも同じ。子どもが意味もなく石を並べて遊ぶことがあるように、何の脈絡も目的もなく、ただ人を殺す。道を歩くのに邪魔だから殺す、今殺すと面白そうだから殺す、笑いが取れそうだから殺す。その程度の感覚だ」

「ギルドに認定される傭兵として勇者未満の最高評価、S級を取った優秀な傭兵だ。同時にギルドにかけられた最高賞金額の手配犯でもある」


 ライフリングとシェキナが語る。三姉妹は彼女たちについていきながら話を聞いた。そしてエネーマが苦々しく話す。



続く

次回投稿は、12/7(土)18:00です。

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