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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
1902/2685

戦争と平和、その439~統一武術大会ベスト16終了後、イェーガー内にて③~

「・・・なるほど、こいつは怖い傭兵団だ。俺は何かできることがあるかよ?」

「敵の情報が欲しいわ。姿が見えない上に、それぞれがラインと互角前後の腕前。レイドリンド家とは何者なのか、その情報を頂戴。そして襲撃をかける時には手伝ってもらうわよ?」

「しょうがねぇか。ルイ、レクサス。お前達も協力しろよ?」

「乗り掛かった舟ではあるが、ベッツ。ワタシ達には別に役目もあるのだ」

「そっすよ。俺たちだって、酔狂でここに参加しているわけじゃないんだ。ちゃんと役目があるんすよ?」


 促したベッツに二人が反論したので、ベッツの顔が渋くなった。


「んだよぉ、副長の命令が聞けねぇってのか?」

「こちとらヴァルサスの承認と命令で動いているんすよ」

「そういうわけだ。というわけでアルフィリース、お前の伝手を頼りたいのだが」

「いいけど対価はいただくわ・・・ちょっと待って、もしかしてその内容って、今回の平和会議に関わることかしら?」


 アルフィリースが受けようとして一瞬躊躇したのだが、ルイは少し考えて頷いた。


「状況次第ではそうかもな」

「内容、あるいは部分的にでも私に話せる?」

「詳細は話せんが、ローマンズランドに関わることとだけ」

「・・・あなた、スウェンドル王が平和会議に参加しているって知っているかしら?」

「怠惰の代名詞の様な、あのボンクラ王が? どういう風の吹きまわし――」


 言ってからルイはしまったと思った。ルイの出自に関しては、団内でも知らない者が多い。レクサス、ベッツ、ヴァルサスなどは知っているが、他の者は知らない。元ローマンズランドの軍属だと知れれば、それなりにまずいこともあるだろう。現在は髪を黒く染めているが、かつては魔術の特性で髪の色が白に近い青となっていたが、そのままにしておいたせいでルイの正体に気付いたローマンズランドの関係者はいなかった。何名かは気付いていたかもしれないが、少なくとも接触はなかった。

 アルフィリースの眉がぴくりと反応し、ルイの言葉を聞き逃さなかったことを示していた。


「ルイ、あなたローマンズランドで王と謁見できる立場にあったの?」

「・・・まぁ隠すようなことでもないが、ローマンズランドで師団長だった。少々問題を起こしたせいで、歓迎されるような立場ではないぞ?」

「アンネクローゼと知り合い?」

「ああ、私の軍隊での後輩にあたる。あれの指導をしたのはワタシだ」

「そっか・・・じゃあアルネリア教に話をつけてもいいわよ」


 アルフィリースがにこりとしたのだが、ルイはその笑顔を見て脂汗をかくような思いだった。アルフィリースはわずかな情報からルイの出自を想定して、かまをかけたのだ。あるいは、全てを知っていた可能性もあるが、それがいったいどれほどのことを知っているのかは想像もつかない。まさに魔女の笑みとはこういうことかと、気持ちを落ち着けるのに深呼吸を必要とした。

 そこに今度はターシャが入ってきた。


「アルフィリース団長、お話中すみません」

「今度は何かしら?」

「イルが知り合って連れてきた少女ですが、どうやら寝てしまったようです。エメラルドやエアリアルとカードゲームに興じていましたが、そのまま寝てしまったのでイルマタルの部屋で休ませていますが、どうしますか?」

「またかっぱがれたの?」

「ははっ、あの子ども普通じゃないですよ・・・エアリアルと賭け事で互角にやり合うなんて、なんて化け物・・・私の三か月先のお給金がすってんてん、じゃなくて」

「ターシャ・・・破産するわよ? だけどなんだかんだ子どもでしょう? 寝かせておけばいいじゃない」

「それが、身なりからも口調からも、やんごとなき身分に感じられるのです。護衛がいないのも変な話でしたが、ひょっとしてあの少女が護衛を撒いたのだとしたら、問題になりませんか?」


 確かに、どこかの使節団の関係者だとしたら問題になりうる。イェーガーの中も安全とはいえないが、ここまで夜更けとなると今更どこの国の関係者か探すのも面倒だ。対応をジャバウォックに任せたせいで、こちらに報告が遅れていたのが問題だった。イルマタルがこっそり自室に連れ込んでいたから、気付かないのがふつうと言われればそれはそうだが。

 ただでさえ頭の痛い問題が多いのに、さらに悩みが増えるのかとアルフィリースが悩む。


「――名前はなんと言ったかしら?」

「ウィラニアと名乗っていました」

「――待て、それはウィラニア殿下ではないのか?」


 ターシャの告げた言葉に、ルイが驚いて反応する。そしてまたしてもあっ、という顔をした後で、もう遅かったかと渋い顔でアルフィリースに話しかけた。


「アルフィリース、ひょっとしたらそれはローマンズランド第三王女、ウィラニア殿下ではなかろうか?」

「・・・ちょっと待って、みんなして私を困らせたいの? 何の悪戯で、ローマンズランドの姫君が私の傭兵団でおやすみなさっているわけ?」

「ウィラニア殿下はお転婆姫で有名でな。家臣を困らせて遊ぶのが大好きな方で。私がローマンズランドを去る前には既に有名だった。特に得意なのが、姿を隠すことだ。齢4歳にして、半日王城で身を隠すことができるのだぞ? どれだけ家臣団と女中たちが血相を変えて探したか」

「イルマタルも姿を隠すのは得意ね・・・何かしら? ナイツ・オブ・ナイツといい、今日はかくれんぼ上手の日なの?」

「冗談言っている場合ですか」


 ターシャが思わずアルフィリースに軽くツッコミを入れていた。アルフィリースが山積みとなる問題に頭を抱えた時、今度は地面がぐらりと揺れていた。



続く

次回投稿は、11/25(月)19:00です。

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