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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その314~統一武術大会五回戦、閑話③~

「レクサス、お前はあの二人の試合が無事に終わると思うか?」

「試合は終わるでしょ、ティタニアの圧勝で。だけど、問題はその後っす。もうバスケスには、試合の行く末なんて関係ないんじゃないですか? その後、何が起こるのか方が問題だと思いますよ。

 それにさっきちらりと見たら、ティタニアの顔色が優れないように見えました。昨日のアルネリア内でのひと騒動といい、何かあったのは間違いないでしょう。民衆には上手く隠していたかもしれないっすけど、あれだけ派手に暴れりゃわかる奴にはわかっちゃいますよ」

「なるほど。まぁワタシは目下のところ、アルフィリースと話し合いの時間を持てればそれでいのだが・・・」


 この不穏な流れをそのまま無視してもいいのかどうか、ルイもまた不安の影に囚われ始めていたのだった。


***


「ふぅ~」

「全く、無茶をし過ぎですね。アレを使わなかったのは賢明でしたが」


 アルネリアのシスターに治療を受けた後、アルフィリースはしばし安静を言い渡された。アルフィリースはあくまでレイファンの護衛を申し出たが、シスターが鬼のような形相で止めたので、さしものアルフィリースもたじろいだ。ミランダが頂点にいると、全体にあのような雰囲気が波及するのかと、可笑しくもなったのだが。

 ラーナが先ほどの光景を思い出して、身震いする。


「ただの一般のシスターがあんな圧力を発するなんて、アルネリア恐るべきですね」

「ええ、瀕死の患者にあの殺気を放てば、たいていの者は大人しくなるでしょう。事実、アルフィリースは重傷ですが」

「やーね、ちょっと傷を縫ったくらいじゃない」


 魔術を用いての戦闘後、回復魔術では治りにくいことを知れたのはアルフィリースにとって僥倖だった。実感として想像はしていた可能性だが、理屈はまだ不明のままだ。影はそもそもそのことを知らなかったし、驚いた様子があった。そのため、アルフィリースは腹の傷を縫う羽目になったのだ。

 さすがにこれでは動くことはままならない。やはり、下手したら内臓が飛び出るくらいの深さだったと言われた。今は皮一枚大丈夫だが、今腹に一撃を加えられたら致命傷になりかねない。アルフィリースは護衛をルナティカとリサに任せ、今日は静養することとした。主だった団員たちにも止められたし、傍にはラーナが、外にはミュスカデが付き添いというよりは、見張りに近い形で付くこととなった。

 アルネリアのシスターたちは既に下がり、部屋には団員しかいない。アルネリアの人手が足らないというのも要因だが、アルフィリースの希望にはできる限り沿うようにとのミランダの命令だ。通常なら個室が与えられること自体がないのだが、この特例が仇となった。

 リサが部屋の外の状況に気付いた時には、既に手遅れだったのである。


「アルフィ! いけません、すぐに逃げ――」

「そうはいかん」


 部屋に中に滑るように入ってきた巨躯は、リサがアルフィリースを庇うのよりも、ラーナが立ち上がるよりも早くアルフィリースの傍に立っていた。ただ一人、アルフィリースだけが覚悟していたかのように、相手のことをじっと見つめていた。


「来ると思っていたわ、ベルゲイ」

「そうか。ならば俺の要件もわかるな?」


 殺気を隠そうともしないベルゲイがアルフィリースの前に仁王立ちで立ち塞がった。開いた扉の先では、腰から砕け落ちたミュスカデが見える。おそらくは気を当てられて気絶したのだろう。魔術耐性はあっても、一流の武芸者に対する耐性は魔女にはない。

 現にラーナもまた、今のベルゲイに気圧されて震えている。リサは身構えてはいるが、ベルゲイ相手には何もできまい。それは怪我をしているアルフィリースも同じなのだが。

 アルフィリースはベッドに座ったままだが、怪我人とは思えぬ毅然とした態度でベルゲイに対峙した。


「女子の寝所に押しかけてその殺気、一流の武芸者のやることではないわね」

「抜かせ、貴様のせいで我々の千年の悲願が途絶えそうなのだ。武芸者としての矜持など、今の俺にはない」

「純粋な復讐者ということかしら。ならば、要件は当然ウルスの居場所よね?」


 ベルゲイが無言で頷いた。下手に誤魔化せばどうなるかはアルフィリースでなくともわかるだろう。だがアルフィリースもまた退く気はなかった。脅されて何かを差し出せば、この先も同じことが続くからだ。

 アルフィリースがベルゲイに答えた。


「イェーガー内の宿舎よ、ただ宿舎のどこかまでは把握していないわ。まだベッドから起き上がるのが限界程度でしょうし、動かせば命の保障はできないわ。それほどの重態よ」

「それはどうでもいい。命さえあれば問題ない」

「私にはどうでもよくはないわ。今彼女は賓客として私の傭兵団に置いている。もし強引に連れ去ろうとすれば、私の傭兵団数千人が相手になるわよ?」

「数千も相手にする必要はない。最初の百ほどを圧倒的な力で殺せば、残りは散る。戦とはそのようなものだ」


 アルフィリースとベルゲイの視線が火花を散らす。そしてアルフィリースが先にため息をついた。



続く

次回投稿は、3/18(月)18:00です。

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