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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その312~統一武術大会五回戦、閑話①

「久しぶりだな、アルフィリース」

「は・・・ルイ?」


 アルフィリースはルイが声をかけてきたことに驚いた。いや、もちろん参加表の勝ち抜けを見て、ルイが参加していることは知っていた。だがルイは知り合いでも必要がなければ話かけることはないし、アルフィリースとは気が合うがそこまで親しいかと言われると疑問と言えた。そしてアルフィリース自身、ここまで競技会以外では常にレイファンに付き従うか、イェーガーで指揮を執っていたためルイとは顔を合わせていない。

 そもそもルイがどうしてこの大会に参加しているのかが不明なのだ。噂では、ブラックホークは北のオークの大軍に睨みをきかせるために全団員が集結していると聞かされていた。

 確かに腕試しとしてはこの競技会は格好の場だが、フリーデリンデの天馬騎士隊やカラツェル騎兵隊がほとんど出場していないのも、彼らが北で睨みをきかせているからだと聞いている。

 ミュラーの鉄鋼兵は傭兵団としては一番の大所帯であり、人数から考えても全団員が参加すれば逆に砦の方が狭くなるといって半数が放任されたらしい。これは本戦で戦ったサティラからの情報だ。

 そういうわけで、アルフィリースはルイが自分の方向に寄ってくるとは思っていなかった。だが無視するわけにはいかない相手でもある。


「天覧試合一番乗りだな。気分はどうだ?」

「実感がないわね。それよりこの後の会議に参加することで頭がいっぱいよ」

「ふむ、確かクルムス王女の護衛をしているのだったか?」

「よく知っているわね、その通りよ」

「噂話を集めてくるのが得意な奴がいるからな」


 ルイは出口に静かに立っているレクサスをちらりと見たが、レクサスはアルフィリースに興味がないのかそこは知らぬ顔をしていた。

 アルフィリースは怪我のことを悟られぬようにしながら、ルイに要件を訪ねる。


「せっかくだけど、急ぐのよ。話はまたの機会にゆっくりしない?」

「そうだな。今日の夜はどうだ?」

「明日はだめ?」

「いや、今日がいいな。久方ぶりに酒でも酌み交わしたい気分だ」


 そう告げたルイの瞳に、一瞬の鋭さが宿るのをアルフィリースは見逃さなった。これはただの誘いではないと理解したアルフィリースはため息をつきながら、自然に返した。


「じゃあ今日の夜、7点鍾でイェーガーを訪ねて来て? その頃には一度帰っているはずだから」

「ああ、極上の酒をもって尋ねよう」

「ちなみにどこの酒かしら?」

「北の産地だ。新鮮だから美味いはずだ」


 ローマンズランドの情報か――アルフィリースはルイの要件を察し、ふっと笑った。


「楽しみにしているわ。つまみには何を用意しようかしら?」

「いらんよ。ただ堅苦しいのは嫌いだな」

「心配しなくても身内だけにするわ」


 アルネリア関係者には話にくいということか。アルフィリースはルイの話の内容が気になったが、今は怪我の応急処置が優先と考え、その場を後にした。まだアルフィリースに話しかけたそうな者はいたが、アルフィリースは足早にそれらを無視するように出て行ったのだ。

 レクサスが隣を通り過ぎるアルフィリースの表情をちらりと見たが、話かけはしなかった。その後で、ディオーレがルイの元に寄ってきた。


「貴殿、アルフィリースと知り合いか」

「ああ、最近何かと出会う機会が多くてな。まぁ傭兵をしている女で、それなりに有名なら知り合う機会も多いだろう。広そうで、狭い世界だ」

「そうだな、有名どころは互いに名前くらいは知っているが。フォスティナがこの大会に出ていないのは残念だが」

「イェーガーに身を寄せているらしいが」

「本当か? まさに世界は狭いな」


 ディオーレが納得したように頷くので、奇妙な感じがしてルイが質問した。


「ところでかの有名な騎士殿とお見受けするが、ワタシのような下賤な傭兵に話しかけていてよいものか?」

「ふふ、下賤どころか高貴な出ではないのか。貴殿とは一度模擬戦で剣を合わせている。まだ幼さが残る歳だったが、模擬戦で、しかも木剣で、殺気を放ちながら私に斬りかかってくる新兵はそうはいない。覚えているぞ? 後にローマンズランドで大層な出世をしたそうだが」

「きっと別人だろう。ワタシはそんな立派な経歴をもっていない。ただの一介の傭兵だ」


 ルイが素っ気なくディオーレに背を向けたので、むしろディオーレの方が驚いていた。ディオーレに話しかけられて、何も興味を示さず去っていく人間はそうはいない。だからこそディオーレも確信した。間違いなく、ローマンズランドとの共同訓練で出会った、後の師団長候補だったと。



続く

次回投稿は、3/14(木)19:00です。

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