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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その304~統一武術大会五回戦、アルフィリースvs森の戦士オルルゥ②~

 そして時間となり、会場が埋まり始める。武術大会も日程が進み、選手が少なくなるにしたがって使用される会場も減っていく。当然、観客も収容される。審判が選手紹介を始める頃には、会場は満員となっていた。飛躍的に、注目度が高まっていく。

 まずはアルフィリースが会場に姿を現した。アルフィリースは腰に木剣、手には分銅と短剣を組み合わせた武器を持っている。


「まずは間合いで優位に立とうというところですか」

「間合いで負ければ一方的に打ち込まれるだけでしょうからね」


 エクラとヴェンが口々に語る。そのアルフィリースは、仲間の方に向かって笑顔で手を振る余裕すらあった。

 ロッハがそれを見て隣にいるラインに話しかけた。


「お前のところの大将は大した女だな。この状況であれだけ余裕があるのか」

「逆だろ。こっちを不安にさせないための強がりだよ。んでもって、おそらくは自分に対する不安を紛らわせているんだろうな。

 あのオルルゥって女は、今大会の大本命だろ。俺の見た限り、あれ以上の競技者はいない」

「なぜそう言い切れる?」

「獣人にゃわからんだろうが、長物三倍力って言ってな。槍などの間合いで上回る武器を剣で打ち破るには、三倍の実力が必要だって言われているんだよ。

 レーベンスタイン、ディオーレ、ティタニア。全て剣が中心の戦士だ。規則ルールなしの戦いならともかく、この武術大会でオルルゥを倒す方法がない。俺もまぁ無理だろうな。

 逆に聞くが、ロッハ。お前ならどう倒す?」

「それはだな・・・」


 ロッハもまた言葉に詰まった。限定された空間では、そもそもロッハの戦い方はそれだけで制限されている。ロッハもまたこの条件では、オルルゥを倒すだけの方法を見つけられていないのが正直なところだった。

 だがラインがそこでぼそりと呟いた。


「まぁ、そんな絶対不利な状況を覆しうるのが俺達たちの団長なわけだが。今日は何を見せてくれるのかね」


 ラインの不安とも期待ともつかぬ言葉と共に、アルフィリースが競技場に近寄っていく。審判となったブランディオが恨みがましい視線をアルフィリースに一瞬投げたが、アルフィリースはそれを知ったうえで口笛を吹いてやり過ごした。


「か~っ、むかつくやっちゃ」

「あなたがこの試合の審判なのは私のせいじゃないわよ?」

「わかっとる、わかっとるけどな? 何が悲しゅうてワイはこの建築物を昇り降りしながら審判せんといかんのや?」

「あー、審判台の作成まで気が回らなかったわ。ごめんなさい」


 アルフィリースがよそ見をしながら謝ったので、ブランディオはアルフィリースに一層腹が立ったが、アルフィリースの視線は既にオルルゥの動向に向けられていた。

 そのオルルゥは、アルフィリースから遅れてゆっくりと入場してきたのである。


「ちぇ、動揺はなしか。それにしても・・・?」


 オルルゥの装いはいつもと違っていた。まず泥水でも吸わせたかのような布を体に巻き、必要最低限の場所だけを隠している。おそらくは迷彩なのだろう、あの姿でジャングルに潜伏されれば見つけることは不可能に近い。そして背中には長短二つの棒を指している。またなぜか小脇には鶏を抱えていた。

 だが一番の変化は、仮面をつけていないことだ。圧倒的な戦い方と、野性的だがまだあどけなさが残る美しい顔の女性が現れたのだ。会場は一時ざわめいたが、そのざわめきが一瞬で小さな悲鳴に変わった。オルルゥが手に持っていた鶏の頭を捩じり、一瞬でその心臓を手刀で突いたからだ。

 鶏から滴る血をオルルゥは浴びると、その血を体に塗りたくり始めた。幼く見えたその風貌が、殺気と威圧に満ち溢れていく。


「あれは?」


 ラインがロッハに聞く。


「戦士団の本気を示す血化粧だろうな。たまに激戦となる場面でああいった戦士を見ることがあったが、片腕が千切れたくらいでは止まらぬくらいの苛烈さを見せる」

「あー、つまり俺らの団長の危機ってことか」

「しかも相当な危機だな」


 ロッハの頷きがあった時、ラインは奇妙な光景を見た。確か、試合開始の合図はまだのはずだ。



続く

次回投稿は、2/26(火)20:00です。

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