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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その267~悲願㉗~

「(ジェイクはティタニアの姿形を知らないはず。ジェイクは単純に純粋に強い者への憧れとしてティタニアを尊敬したかもしれません。ならば好きにさせるのも女の度量でしょう。今回のことはエルザが倒れたことでミランダがから秘密裏に頼まれたとはいえ、危険な橋を渡るつもりはありませんでした。ティタニアをやれればよいですが、アルフィリースに内緒にしてまで命をかけるようなことではありませんからね。

 対してティタニアがどんなつもりだったのかは知りませんが、許せないのはジェイクを巻き込んだこと。命の別状がないにしろ、ジェイクの命を危険に晒したのがどうしても許せない。そしてその原因となった理由が、もしジェイクに何らかの理由で心奪われたとしたら――生かしておくわけにはいきませんね)」


 狂気に燃えるリサの瞳を見ながら、ドゥームがほくそ笑む。


「(いいね、いいねぇ。リサちゃんが怒れば怖いのは知っていたけど、ティタニアに対して矛先が向いたのがまたいいね。知らず知らず抱く女の情念を隠しながら、絶望する女と嫉妬する女の戦い。醜くて、イイねぇ!)」

「ドゥーム、悪いことを考えている」


 デザイアの指摘に、笑顔で応えるドゥーム。


「僕が悪いこと以外を考えるとでも?」

「思わないけど、オシリアがいないと、ちょっと自由?」

「まぁ、ちょっとね。後はグンツの方がうまくやってくれれば、もっと面白くなりそうだけどね」


 ドゥームはもう一つの仕掛けが上手くいくことを願いながら、リサの周囲に留まることにした。幸いにして、彼の存在を咎める者はここには誰もいないのだから。


***


「今度は霧か。実に多様な仕掛けですね」


 ティタニアは体に無数の傷を負いながら、自分を取り巻く状況を分析していた。幸いにして、地面が崩れたことで相手もこちらを見失ったのか、一度攻撃の手が休まっていた。先ほど気功を大量放出し、かつ着地と共に衝撃波を放射状に放出して防御できなければ、さすがに死んでいただろう。

 この状況に追い込むためには、かなりの手練れが複数名いるのだろう。扱う魔術からしても、アルネリアの関係者とは別に協力者がいることは推定できた。


「(魔術協会が協力しているのか――いや、テトラスティンの話が正しければ、それほどアルネリアとの連携が上手くいっているとは思えない。野にこれほどの魔術士がいるということか)」


 このために雇われた魔術士となれば、それを統率する者がいる。それが一番厄介だろうが

確実に上級のセンサーがいる。先ほどから周囲の気配がまるで感知できなくなったからだ。

 ティタニアもセンサーとしての能力を有しているが、ここまで完全に封じ込められるとなると大陸でも有数の能力者だろう。加えてこの霧は魔術的な要素がある。方向感覚を失うことにもなりかねない。


「(私も魔術を使うか――いや、まだ早いな。使うべき対象を絞らなければ、意味がない)」


 ティタニアは霧の中を慎重に進んだ。ゴーレムは既に姿が見えなくなっているが、霧の中には何が潜んでいるのかわかったものではないからだ。それに霧自体にも何かしらの作用があるのだろう。先ほどから体が熱をもって仕方がない。

 ティタニアは苦笑した。


「(ふふ。既にそのような望みは捨てているというのに、強制的に欲を引き摺りだしてどうしようというのか。だがこの程度で私を揺さぶろうとは、笑止)」


 ティタニアがなおも進むと、そこには見覚えのある少年の姿が出現した。ジェイクである。もちろん本物であるはずがない。

 だが幻惑の魔術であれば、かかった者の記憶を反映して姿が映し出される場合もある。事実、ジェイクの傷まで先ほど別れた時と変わらなかった。


「ティニー、怪我は?」

「・・・ああ、大したことはない」

「大したことないわけないだろ! こっちに来て、治療するから!」


 幻のジェイクが手を引いて建物の中に連れ込もうとする。その先で幻がどんな行動をとるか見てみたくもあったが、ティタニアは笑いながらも少し怒りを覚えていた。


「幻ごときがこの純粋で気高い少年を語るというのは、些か不快。消えなさい」

「ティニー、何言って――」


 そこまで幻のジェイクが語った段階で、ティタニアはジェイクの幻を切り裂いていた。切り裂く時にいきなり首を刎ねるのではなく、まず両腕を落としたのが万一を考えての無意識の行動だったことに、ティタニアは気付かない。

 ジェイクの幻が霧散して消えたが、霧は薄いくせに深く、切り裂ける様子がない。ティタニアは既に呪印を四つ解放しているのだが、手強い霧である。


「(振り払うには全力が必要ですね。しかし、その反動もある。いきなり展開されたからには罠のような魔術ではなく、仕掛けた術者がいるということ。であれば、効果は距離で消える可能性もある。もう少し進んでみましょうか。どのような幻が出るか、興味もありますし)」


 そう考えたティタニアが進む。進んでいくたびに、徐々に懐かしい顔が出てくる。昔、少しの間だが恋仲になった者。無償で優しくしてくれた者。そして自分が剣帝と知りながら愛を語ってくれた男。その全てをティタニアは一撃で切り裂き進む。ティタニアの心と決意が揺れることは微塵もなかったが、その足が突如として止まった。



続く

次回投稿は、12/13(木)6:00です。

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