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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その265~悲願㉕~

「よーう、ガルチルデ。正直アタシたち、暇だなぁ?」

「文句を言わないで頂戴、ヴァルガンダ。私達の連携コンボでもっともティタニアに有効なのはこれだと結論を出したでしょう?」


 さっきから、いや何刻も前から不満げな表情で定期的に文句を垂れるヴァルガンダを、同じようになだめるガルチルデ。この二人で組めばいつもこうだから慣れてはいるが、戦いが始まってもこれだとは、少々呆れてきたところである。

 それでもヴァルガンダの愚痴は止まらない。


「それは理解しているんだけどよぅ、納得はしてねぇんだよな。やっぱり戦いってのは拳を交えてナンボじゃねぇか」

「なんて魔術士らしくない発言なのかしら。シェバ老が聞いたら泣くわよ?」

「ばあさんに聞かせるつもりはねぇよ。だけどよぅ、相手は伝説の剣帝だぜ? こんな機会そうそうあるものじゃねぇよ。ああ~殴りてぇ」


 妙齢の女性の発言とは程遠いものだったが、これがヴァルガンダの性格なのだからしょうがない。ガルチルデはため息をつきながら返した。


「私がゴーレムを作る、あなたが金属性の魔術で強化する。これが今回は最上の一手。それに協力者もいるし、クランツェもいるんだから遠距離攻撃でじわじわ削ればいい。これが一番確実で安全なのよ。

 それとも今ティタニアに突っ込んで、後で騎士ジェイクに会えなくてもいいの?」

「ば、馬鹿! なんでここでその名前が出るんだよ!?」


 明らかにヴァルガンダが動揺した。顔まで赤面させて可愛いものだ。普段は露出の高い服装を好む癖に、今日は少し控えめにして髪型まで少々手を加えたのをガルチルデは知っている。ちなみに下着の選別まで気合を入れたことも。

 何をしに来たんだと言いたくなったガルチルデだが、ヴァルガンダは気分次第で何倍もの戦闘力を発揮するため、これでいいのだと無理に自分を納得させていた。

 しかし偶然のキス一つでここまで浮かれるようになるとは、足りないのは精神修養か、それとも経験か。初々しいヴァルガンダを、ほんの少しガルチルデは羨ましく思っていた。


「それにしても、今回の協力者は優秀ね。これだけ魔術が張り巡らされている土地で、今回の作戦に合わせてさらに認識阻害やらなにやらの魔術が展開されているのに、何の苦も無くティタニアの位置を割り出したわ」

「ああ、すげぇセンサーだ。おまけのあれだけの数のゴーレムの気配まで消しやがった。これなら戦争でも、中隊程度なら丸ごと隠蔽して奇襲がかけれるんじゃねぇか?」

「魔術で気配を消しても限界がありますからね。滅多にいないけど、優秀なセンサーがいれば同じことをやってもらった方が効率が良いですものね。

 さて、クランツェとの連携で指示が次々飛んでくるでしょう。ここからが見物ですよ」


 そして眼下では、ティタニアが百を超えるゴーレムの軍団と戦いを繰り広げていた。ティタニアが一太刀振るうたびにゴーレムが3、4体なぎ倒されていくが、押し寄せるゴーレムの群れにはキリがない。抜け出そうにも、ゴーレムの巨体は通路を塞ぐように歩いてくるため、なぎ倒さざるを得ない。倒したゴーレムは土塊となるが、足場を悪くするのに一役買っている。

 そして極めつけは、そのゴーレムの隙間を縫うように突撃してくる小動物の使い魔である。それぞれが爆弾を搭載していたり、毒物を抱えて突っ込んでくるのだ。


「(なんと厄介な戦い方ですね。自分たちは姿を見せず、じわじわとこちらをなぶり殺しにするつもりだと。これでは回復する暇もない)」


 ティタニアに焦燥感が募り始めた頃、今度は剣を突き刺したゴーレムが爆発を起こした。破裂した際に中に釘などの金属片を仕込んでいたのか、ティタニアもダメージを回避できない。

 そして傷を受けると、ティタニアがくらりと眩暈がした。どうやら丁寧に毒物まで仕込んだ破片だったようだ。ティタニアの苛立ちが頂点に達した。


「ええい、鬱陶しい!」


 ティタニアが両腕の呪印を解放して大剣二本を振るった。一瞬で周囲のゴーレムが輪切りにされ、さらに周囲の壁も破壊して見通しをよくしていた。


「これで多少やりやすく――?」


 だが壁が壊れてそこから一歩を踏みだした直後、目の前に出現したのはさらなるゴーレムの軍団。そして自分に向けた投げつけられた無数の塊と、飛んでくる雨のような矢。

 予想もしない猛攻に、ティタニアが夢中で剣を振るう。


「ぬぅう!」


 ティタニアの剣戟が無数の飛来物を打ち落とす。だがティタニアが今まで遭遇したどんな猛攻よりも、この攻撃は激しかった。


「なんですか、この矢は? 本当に雨のように――」


 隙間なく飛来する矢。少々の人間が射たのではこうはなるまいとティタニアは推測する。百人からの弓部隊でもいなければ、こうはならないはずだと考えた。

 そして投擲物も斬っても爆発し、中の物体が飛来する。そして矢に当りでもすると軌道が変化したりで、さしもティタニアもこれは捌き切れなかった。

 矢の何本かがティタニアに刺さったところで、ティタニアが両足の呪印も解放した。


「舐めるな! いかに数が多かろうが弓矢程度でこのティタニアがやれるものか!」


 ティタニアが線ではなく、剣圧を面にして押し出した。幸いにして壁を倒壊させた一方向からの攻撃である。叩き落とすのではなく、薙ぎ払えばなんとかなるはずだった。

 そして一撃踏み出し半数近くを薙ぎ払ったティタニアだが、もう一歩踏み出したティタニアの足元が崩れていた。


「何?」


 そして足元には、土竜の使い魔が無数にいた。どうやら地中を掘っていたらしい。そしてそれぞれが発破を抱えているのがティタニアに見えた。


「~~~!」


 ティタニアとて空中では姿勢制御のしようがない。ティタニアの体が穴に消えると、直後穴で大爆発が起きた。

 その爆発を見てヴァルガンダとガルチルデも呆然とする。その後ろで拍手をしたのは、クランツェだった。


「キレイですねぇ。ここまで見事にハマるとは」

「ああ~。こんな戦い方、正義ではない」


 白藤が蒼ざめ、クランツェがはしゃぐその後ろからさらに歩いてくる人物がいた。


「はしゃぐのは剣帝の死体を確認してからですよ、みなさん。あの程度で死ぬのなら、今まで誰も苦労もしていないでしょう」

「そうは言っても、大した手並みよぉ。ええと、リサちゃんだったかしら?」


 クランツェに名前を呼ばれたリサは、静かで冷酷な視線を送った。もちろん盲目のリサには見えてはいないのだが、それだけに余計に視線が冷たく感じられる。思わずクランツェでさえぞくりとするほど冷酷な視線に、賢者シェバの弟子である四人が身を固くした。



続く

次回投稿は、12/9(日)6:00です。

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