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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その248~悲願⑧~

「遅いな・・・」


 思わずタウルスが呟いた言葉に、その場にいた者の注意が集まる。時間稼ぎとして差し向けたグリッドは、最も防御に優れた拳士だ。崖から突き落としてもろくな怪我すらしない男なら、単独でもティタニア相手に持ちこたえると考えての選抜だった。

 加えて、グリッドには様々な魔術付与を施した道具を持たせている。それがあれば半刻程度の時間稼ぎは可能だろうと、ベルゲイやタウルスは予想していた。いや、希望込みの予想であることは否めないが、それ以外の良策が思いつかなかった。

 最悪、撤退も考慮する必要があるだろうと長ベルゲイは作戦前に述べていた。だがここまで準備した作戦を撤退するなら、相応の代償を支払う必要があることは想像に易い。拳を奉じる一族の者たちとて、今日に備えて全ての準備をしてきているのだ。一日ずれるだけでも、高めた気功に影響が出る。今日ほどの戦いは誰もできまい。

 嫌な流れだ、とタウルスが考えていると、仲間がそれぞれ発言を始めた。


「タウルス様。無理に今日戦わなくても、必要に応じて出直せばよいのでは? アルネリアの力など借りずとも、我々だけでも戦えましょう」

「そうそう、元々そのために鍛えていたんだし。むしろアルネリアなんて邪魔なだけですって」

「ティタニアの足取りがわかっただけでも僥倖でしょう。大会終了後、尾行して戦えばよいのです」

「・・・だから、余計な心配をしなくてもいいんじゃないの?」


 それぞれがタウルスを気遣った発言をしてくれる。この言葉を聞いてタウルスは思わず胸が熱くなるのを止められなかったが、その感情を台無しにする声が突如として響いた。


「ヒャッハー!」


 奇声と共に、突然投げ入れられたものがある。一番外側にいたガインが叩き落としたが、それが人間の頭部だと気付くとさしもの彼らもぎょっとして一瞬動きが止まった。その隙を逃さず急襲してきた男が、鋭い打ち込みをガインに繰り出す。


「オラオラオラァ!」

「ぬぅ?」


 ガインもいち早く対応したが、一瞬身を固めた分、初動が遅れた。複数の拳の内の一つを腹に受けると、その勢いで後退した。そして油断なく構えた彼らが見たのは、『格闘家』バスケスだった。


「いよぅ! 邪魔するぜ」

「何用だ!?」

「何用だとは挨拶だな? 俺もアルネリアから依頼されて、ここに集められた戦士の一人だぜ? こんなことしなくても、明日にはティタニアと当たるんだがなぁ」

「だが、仲間というわけではなさそうだな?」


 タウルスがずいと前に出ると、バスケスはニタリと気味の悪い笑みを浮かべていた。


「もう要件は言ったぜ? 邪魔するってなぁ!」

「ち、この悪鬼が。昼の一件を根に持ったか!」

「俺は執念深いんだよ!」


 タウルスの声と共に全員が動きバスケスを取り囲もうとしたが、ガインだけが動かなかった。そしてがたがたと震えると、突然血を大量に吐いてその場に倒れた。


「ガイン!?」

「クハハッ! まず一人だぁ!」


 哄笑を上げるバスケス。タウルスは倒れたガインに駆け寄るが、残された三人はバスケスに同時に襲い掛かっていた。彼らは対ティタニアに備えて、集団戦での動きも徹底的に合わせてきていた。一糸乱れぬ統率の取れた動きに、バスケスが猿のごとくとびずさって距離をとった。


「お前ら真面目だなぁ。ますますぶっ壊したくなって来たぜ」

「ほざけ!」

「タウルス様、ガインは?」


 その言葉に、タウルスは首を振った。ガインはすでに事切れていたのだ。一撃で打倒されたのは妙だが、今はそれを追求する時間はない。

 その事実に激昂する仲間たちを、タウルスは一喝して押さえる。



続く

次回投稿は、11/5(月)9:00です。


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