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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その247~悲願⑦~

「お前――右手を切断したのかぁ?」

「地面に縫い留められたのは右手だけ。ならば切り捨てればいいだけのこと。私を止めるのなら左手も縫い留めるべきでした。それとも、ペルパーギスが恐ろしかった? その様子では、人柱は用意できていないようですが――それとも、予想外の事態でもありましたか? 人柱が見つからない、とか」


 ここまでのやりとりでそこまで想像できるティタニアに、グリッドは戦慄した。そしていつの間にか、ティタニアが小太刀を左手に握っているのを見た。グリッドがはっとする。

 ティタニアは小太刀を2、3度軽く振ると、ぴたりとその動きを止めた。


「さて、あまり時間がありません。即座に死んでいただきますが、覚悟はよろしいか?」

「舐めるなよぉ、剣帝ぃ!」

「私のことを剣帝と呼ぶのは勉強不足ですね。私のことをよく知る当時の戦士たちは、決して剣帝などとは呼びませんでしたが・・・まぁよいでしょう。どのみちあなたが死ぬことに変わりはありませんから」


 ティタニアに突撃するグリッド。周囲にはまだ傭兵崩れの男たちが何人もどうするべきかとその場に立ち尽くしていたが、彼らにはそのことを後悔する暇すら与えられなかった。


***


「はぁ、はぁ・・・しつこい!」


 シャイアは屋根の上を逃げ続けていたが、騎士たちは振り切ったかと思えば次々と姿を現した。先ほどからティタニアの元に戻ろうとしているのに、どうしても戻れない。強引に打ち倒して突破することも考えたが、自分の一番の目標が武術大会でのバスケス打倒だと考えると、ここでアルネリアの騎士に手を上げるわけにはいかなかった。最悪、大会を強制的に失格させられる可能性もある。

 逃げ続ける中、シャイアはふと一画の防御網が空いていることに気付いた。一か八か、シャイアは気配を消して建物の中に潜んだ後、その区画に飛びこんだ。先ほどはこれでも見つかったのだが、今度こそ追手は振り切ったようだった。


「やった、ついに裏をかきましたよ」


 シャイアはそのままティタニアの方へと向かおうとしたが、急に血の匂いが漂ったことに気付いた。まだ自分は建物の中にいるし、ここは貴族の別邸というべき豪華な建物だ。この時期は統一武術大会があるため、多くの貴族がアルネリアに訪れているはず。その中から血の匂いがするとはどういうことか。

 シャイアが踏み込んだ場所では、屋敷の執事とメイドたちが血を流して死んでいた。その首は一様に捻じ曲げられ、その館の主人は憤怒の形相で絶命していた。致命傷は、心臓への一撃。おそらくは、拳で心臓を打ち抜いている。そして同じ場所に、妙齢の女性と年若い女性が乱暴をされた格好で死んでいた。何があったかを想像するにやすい。

 シャイアは黙祷を短く捧げ、女性たちに布をかけるとそれぞれの死体の目を閉じてやった。死体にはまだ体温が残っており、死後それほど時間が経過していないことを示している。誰がやったか。シャイアには一つの心当たりがあった。


「まさか・・・」


 シャイアは嫌な予感と共に走り出した。向かう先は、ティタニアのいる方向だ。もしこれをやったのが奴なら、決してティタニアと合わせてはいけない。奴の恐ろしさは強さよりも、もっとおぞましいところにあると、シャイアはそう考えていた。


「だからこそ、競技会で・・・卑怯な策を使用できないところで、完膚なきまでに叩きのめしたかったのに」


 シャイアが嫌な予感と走っていると、果たしてそこには嫌な予感が現実の人間となって形を成していたのだった。


***


 タウルスは、4名の仲間と共にティタニアを襲撃する準備をしていた。周囲はアルネリアが封鎖することで、自分たちが戦いやすい舞台を用意したとのことだが、体の良い使い捨てであることは明白だった。それでもティタニアを討つ機会があるならと、甘んじて受け入れた。

 時刻は夕刻、もうすぐ日が沈む。完全な夜間を選ばなかったのは、夜に多くの人間が動けば逆に目立つし、暗闇で誰が誰かわからなくなる可能性を排除したかったからである。アルネリアによれば、この作戦で採用したのは自分たちだけではないとのことだった。

 しかし、ここにきて計画が大幅に変更になったことにタウルスは不安を禁じえなかった。他の者の手前何事もないように振る舞ってはいるが、タウルスは無骨な拳士に過ぎず、あまり感情を殺すのは得意ではない。ここにきてウルスが使えない可能性があるという不安と、実の娘を犠牲にしなくて済むかもしれないという安堵がない混ぜとなり、逆にタウルスを支えていた。そうでなければ、タウルスの態度から不安が伝播していてもおかしくないほどの状況だったのだ。

 ウルスの捜索には、息子のマイルスを含む5人を向かわせている。おそらくはアルネリアの治療施設にいるのだろうが、それがどこかはわからない。こういう時のためにセンサー能力に秀でた仲間もいる。またセンサー能力に頼らない、野生の獣よりも鼻がきく仲間もいる。戦闘はそれほど得意でもないが、彼らを向かわせればなんとか居場所くらいは突き止めることができると考えていたのだが。



続く

次回投稿は、11/3(土)9:00です。

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