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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その155~会議六日目、夜②~

「動物と会話できるわけ?」

「まぁな。昔は俺に限らず誰でもできたものさ」

「私もある程度はできるけど、結構特殊な知識と経験が必要よ? どのくらい昔のことかしら」

「さぁてね、忘れちまったよ。俺も何年こうしているか、記憶が定かじゃないものでね。歳はとりたくないものさ。記憶が曖昧になっていけねぇ」


 パンドラはこんこん、と自分の蓋を叩いたが、アルフィリースはその仕草を胡散臭そうに眺めていた。どこまでが本当で、どこからがとぼけているのか。箱に口だけは浮かんでいるが、目らしきものが見えないパンドラではその表情を読むことはできない。

 目は口程に物を言うとはよく言われるが、アルフィリースにとっては目は口以上に情報を与えてくれると考えている。おおよその相手は目を見れば嘘か本当かはわかるのだが、目のない相手ではアルフィリースの経験も技術も役に立たなかった。

 そもそも遺物に人と同じ思考回路があるかどうかも謎なのだ。ただ人の人格を模しているだけかもしれない。アルフィリースは対峙するパンドラの様子をつぶさに観察していた。意識の中でも影が緊張しているのがわかる。


「(油断するなよ、アルフィリース。遺物ってのは見た目はなんでもなくても、一つの国を滅ぼす能力を秘めたものがあるんだ。こいつも何を隠しているかわかったものじゃない。

 箱って形状を考えれば中に何か収納しているんだろうが、中に爆弾でも詰め込んでいるかもしれないからな)」

「(ちょっと、怖いこと言わないでよ)」

「(可能性の話をしている)」

「おいおい、爆弾なんか詰めちゃいねぇよ。そんな危なっかしいものを体に中にいれて持ち歩く馬鹿がいるか」


 アルフィリースの意識の中の会話に突如としてパンドラが割り込んできたので、驚いてのけ反ってしまった。その瞬間、頭の中に突如としてアルフィリース、影、パンドラが面と向かって座している場面が想起され、アルフィリースの意識は引っ張られた。

 影もまた驚いたのか、周囲を見渡している。その中でパンドラは自分の蓋を開けて煙草を取り出し、優雅に火をつけていた。


「失礼するぜ。こうでもしないとゆっくり話ができねぇと思ったからな」

「これが――お前の能力か?」

「精神の世界に割り込むのは、現実世界への干渉と大して変わらん。少なくとも俺にとってはな。箱の俺から見れば、人間って生き物の方が不思議なくらいだ。

 何せお前たちは根源や多極で一部の意識を共有したり干渉しあう癖に、どんな個体までもが自我を持ち、死すら選ぶほどの選択性の高い自由意志を持っている。今までどんな強大な個体や種族もなしえていない偉業を、どうして人間なんて非力な種族が達成したのか理解不能だ」

「ちょっと。難しい話はまぁいいとしても、人の頭の中で煙草を吸うのはやめてくれる?」


 アルフィリースがパンドラから煙草を取り上げ、それを手の中で霧散させてみせた。これには影だけでなく、パンドラも驚いた。


「これだよ! お前のこの適応力があまりに凄い。お前、自分が何をしているかわかってるか?」

「あなたが作った場でも、私の意識の中なら、自分の考え方次第でいくらでも自由に動かしたり影響を与えることは可能よ? それこそ魔術の基本じゃない」

「いや、アルフィリース。それは・・・」

「はっ! 恐れ入ったぜ。その言葉を魔術協会のトウヘンボク共に聞かせてやりてぇ。どんな魔術士よりも、この嬢ちゃんの方が魔術を根っこの部分で理解してやがる。

 そうだ。魔術ってのはそうなんだよ。要は意識の持ち方次第でいかようにも化ける。そのことが理解できてねぇ魔術士が多すぎてな。自然とその理、世界の仕組みを学ぶのに人間の作った文字と書物で学べるかっての。そんなことをするよりは、池の中に沈んで水の精霊との睦み合いについて淫靡な妄想する方が建設的ってものだ」


 パンドラの言い方に、アルフィリースが手を横に振った。


「いや、それは極端だって。せめて呼びかける、くらいにしておいてよ」

「そんなんだから向こうが応じないんだよ。水の精霊は基本大人しいからな。着ている衣服を引っぺがすくらいして、興味を引くのがちょうどいいんだよ」

「なんだこの猥褻物は? 遺物とか考えた私が馬鹿だったのか? おい、アルフィリース。私が許すから、この猥褻箱をぶっ壊せ。イメージがむくむくと湧いて来たぞ?」


 影が呆れて声を荒げる。パンドラはそのやりとりすら楽しむように、大笑いしていた。


「はっははは! 俺の外側を壊したって無駄だぜ。中からもう一つ箱が出てくるだけさ」

「ちょ、何その仕掛け箱」

「うかつに壊すと罠が発動するから、槍とか飛んでいくかもしれねぇし、本当に爆発しちまうかもな。まぁその俺を正しく開けるための鍵が、実はお嬢ちゃんが所有しているレメゲートなんだがな」


 突如として出てきた名前に、アルフィリースが身を固くする。話が突然本題に入り、影も俄に真剣な表情に切り替わった。



続く

次回投稿は、4/30(月)21:00です。


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