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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その148~統一武術大会二回戦、レイヤーvsゼホ②~

「ごまかしはきかない相手だわ。負けるのならあっという間だと思うけど」

「勝つつもりだと思う」

「どうしてだ?」

「次の対戦相手、レーベンスタインに興味を示していた」


 ルナティカの言葉がいやに違和感を残して響く。レイヤーが他人に興味を示すとは、ラインもアルフィリースも想像していなかった。

 その時、ゼホが会場に入ってきた。審判の紹介が会場に響く。


「さあ、先に会場入りしたのはミュラーの鉄鋼兵、4番隊隊長ゼホ! 小柄なのは血筋だが、この少年のような体躯からは想像できない膂力を誇る! 身の丈を超える武器でもなんのその! 今日も相手を吹き飛ばしての勝利なるか!?」


 ゼホが会場入りする。肩には自分の身長よりも明らかに大きい斧を携え、大きな足音と共に入場してきた。おまけに予備の棍棒や大剣も同じような大きさであり、三つまとめて運び込むパフォーマンスを見せたのだ。足跡が土の部分に残ることから、重量も相当なものであることがわかる。初めてゼホを見る観客たちがざわついた。


「レイヤー、あんなのとやるのか」

「冗談、何か魔術使っているんじゃないの?」

「木製の武器でもあれだけ重量あれば関係ないだろ。殺されるぞ」


 イェーガーの面々も心配する中、ゼホが会場に立った。彼らを応援するミュラーの鉄鋼兵もそれなりの数が参加しているのか、会場の一画からは声援が飛んでいる。

 対してレイヤーは中々入場してこない。会場がざわつくころ、レイヤーが会場に入って来た。審判もレイヤーの所在を確認しようと係り員を呼んだところだったため、虚を突かれたようだ。


「あ、レイヤー選手の入場です・・・?」


 審判が戸惑う声を出したのも無理がない。その場にいた誰もが、動揺せずにはいられなかった。

 レイヤーは一人ではなく、隣にダロンを伴っていた。それだけではない、ダロンが担ぐ武器が異様だった。巨人のダロンの身の丈を上回る巨大な武器。斧槍ハルバードと呼ばれる武器だが、あれほど巨大であれば振るのはおろか、握ることさえできないであろう。自分で担げないからこそダロンが運んでいるのだろうが、当のレイヤーは頭から黒いフードをかぶり、魔術士のような風体だった。

 会場がざわめくなたレイヤーは競技場に登ると、ダロンに頼んで巨大な斧槍を固定してもらった。妙に細かく位置を決めていたが、自らは背中にかついだ袋を予備の武器の場所に設置していた。

 審判が確認をする。


「あー、レイヤー選手でよろしいのですね?」

「ええ、もちろん」

「その巨大な武器は、お使いになるので?」


 怪訝そうな審判の声に、レイヤーは冷静に答えた。


「事前に審査委員に確認して、問題ないことが了承されています。別に自分で振り回せる大きさである必要はなく、また木製であることに違いはありません」

「であればいいのですが、フードは取っていただけますか? 風船の位置を露出しなければ、判定が難しくなりますので」

「もちろんです」


 そう言ってフードをとったレイヤーは、体に大小様々な水風船をくくりつけていた。普通は割れたのがわかる程度の小さなもので統一するのだが、わざわざ大きな風船をくくりつけているのだ。その妙な格好に会場がさらにざわつく。珍妙な格好を笑う観客もいたが、その意図をなんとなく察したのはアルフィリースである。


「まさか・・・とんでもないことを考えるわね。あなたの仕込みかしら、ルナティカ?」

「いいえ。手伝いはしたけど、レイヤーの発想。レイヤーは戦いに関しては天才。きっと、アルフィと同じくらいに」

「おい、どういうことだ?」


 アルフィリースは意味がわからないラインに対して、曖昧な表情で返した。


「さて、どうかしらね。私の想像通りの戦い方なら、相当面白いことになるわね」

「勝つのはレイヤー、それは間違いない」

「んだよ、俺だけのけものか」


 ラインがふてくされるようにして、再度視線を会場に戻す。



続く

次回投稿は、4/16(月)22:00です。

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