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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その129~統一武術大会、弓技部門②~

 そして一通り会話が終わった後で、決勝戦の説明が始まった。


「決勝戦では、今までの6人の成績を元に内容を決めさせていただいた。予選では最長の長さだった、100歩の場所に的を設置した。同時にこれは弓の性能限界でもある。これに向けて順に矢を射てもらい、外した者から失格とする」


 その説明を聞いて、シーカーたちが顔を見合わせた。これはシーカーがよくやる遊びに似ているが、これだけの面子が揃うと日が暮れても決着がつかないだろう。まして的は遊びで使うものよりも大きい。時間の無駄になることは請け合いである。

 三人が困った顔をしていると、騎士であるバルドレがすっと手を挙げた。


「審判、その方法には異議があります」

「異議だと?」

「まず、簡単すぎます。ここに残った面子がその的を外すまでに何刻かかるやら気が遠くなるでしょう。それに何より、雅に欠けます。これだけの面子を揃えるのなら、もっと難しい方法にすべきだ」

「ほう? 例えば?」

「たとえば、障害物を設けるべきでしょう」


 バルドレの提案に、審判はアノルンの方を見た。アノルンは興味深そうに、頷いて許可を出した。

 そして競技者達を集め、バルドレが提案をした。


「それぞれが難しいと思う、的までの障害物を設置。あるいは的の大きさの工夫でもいい。その課題をどのくらい攻略できるかで、優劣を競うというのはいかがか。持ち点はそれぞれ100点。どのように配分するかはお任せします」

「ほほぅ、面白そうだな」

「ええ、異論はありません」


 シャーギンとフェンナが真っ先に賛成し、他の三名も頷いた。そしてそれぞれが舞台の作成に取り掛かる。シャーギンは的を五つ設置し、オーリは的をククスの果実とした。フェンナは的を直接見えない場所に設置し、バルドレは的を縄で吊り下げた。エアリアルは障害物を置いて直接的を狙えない位置に。そしてトウタは審判と何事か話しあい、的は設置していなかった。

 それぞれが課題を設置した後、課題を説明する。シャーギンが真っ先に説明をした。


「私のものは簡単だな。的を五つ、『同時に』射ってもらう。その合計で得点を出そう。全てど真ん中を穿てば100点となる。だが我々シーカーといえど、五つの的の真ん中を五本打ちで狙うのは至難の技だ。そう簡単に満点は取れないだろう」

「私の場合はただ的が小さくなっただけですが、一発勝負。性能限界よりもあえてさらに遠くに置いています。的は一つなので、100か0かだと考えれば、これも緊張感があるかと」


 オーリが引き続いて説明した。確かにシャーギンの課題で70点をとっても、オーリの課題で随分と優劣が分かれるだろう。そしてフェンナが続く。


「私は的を見えない位置に設置しました。直接は狙えないですし、的の位置を事前に見るのは許可しますが、射の姿勢に入ったら見てはいけません。距離も高さもばらばらな的を四つ、射てもらいます。その合計得点を競っていただきます」

「私の課題はまず、縄を矢で射てもらう。何、的は近くだからこの面子ならば縄自体を狙うことはそれほど難しくはあるまい。縄を矢で切ると的が落ちるので、それを射てもらう。風もあることだし、3射挑戦できることとしよう。ただし二射、三射目で落とせばそれぞれ10点の減点としようか」


 バルドレは余程自信があるのか、自分は一発で落とすと言いたげだった。だが連射で二射目となれば難易度が高くなるのは明らかで、しかも的が落下するともなればこれも高難度の課題である。的そのものは大きいが、素直に落下するとも限らない。シャーギンなどは興味深そうにその課題を聞いていた。

 だがエアリアルの課題を聞いた時、これだけの面子でも難色を示したのである。エアリアルが準備したのは、一つの的、距離もさほど離れていないが、目の前に等間隔に壁が置いてあった。正面からは的が見えるが、他の壁の間からは的が見えず直接狙うことはできない。フェンナの課題とも違い、上に向けて撃てないように頭上も覆ってあった。


「私の課題はこうだ。知っての通り、弓矢は天候に左右される。今日は風が強い日だからな。風を読めば矢の起動を曲げることもできるだろう。自信がなければ中央から射てもいい。ただし立ち位置で中央を選択すれば20点しか与えられない。壁の間をずらすごとに20点ずつ上がる。一番大外から射て的に当てれば100点、外せば0点。ただし一発勝負。いかがかな?」

「これは・・・面白いな」


 風が吹くかどうかは運任せなこともある。そもそも大外から狙えるのか、一発勝負では判断力も含めてかなりの難度となりそうだった。

 そして最後のトウタもまた面白い提案をしてきた。トウタが作った場所には、何もなかったのだ。首をかしげる全員を前にトウタが説明を始めた。


「オラの課題はある意味では簡単だなぁ。的は審判に投げてもらう。全部で5つ的が出てくるけど、的のどこを射抜くかで点数が違なるようにしてもらった。高得点の場所がずれているから、要注意だ。それを一瞬で判断して、射抜く。

 あと、的以外のものも投げてもらうから、それを打つごとに減点。的がどの間合いで、いくつ同時に投げるかは全て審判任せだ」

「確かに戦場では味方への誤射は厳禁ですね。これも面白い課題です。では課題が出そろったところで、始めるとしましょうか」


 バルドレの提案の元、異例の弓技決戦が始まった。アノルンも予想しない展開に、関係者も固唾をのんで見守っていた。順番はくじで決め、バルドレ、フェンナ、シャーギン、オーリ、エアリアル、トウタの順となった。



続く

次回投稿は3/9(金)8:00です。

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