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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その103~会議四日目③~

「シェーンセレノ殿、一つよろしいでしょうか? 軍を興すと言いだした者が、まさかお金だけを出してはいさようなら、なんてことは言わないでしょうね?」

「その言い方はどうかと思いますが、微力ながら軍略に関しての知識もございます。私どもの手勢を含めて、軍師としてでも参加できればとは考えていますわ」

「それは結構。ですがもう一つ。此度の合従軍、最終的な目標はどのようにお考えか」


 アルフィリースの問いかけに、澱みなく笑顔でシェーンセレノは答えた。


「オークを始めとする、我々の脅威の排除ですわ」

「・・・なるほど。失礼いたしました」

「いえいえ。貴女の傭兵団はかなりご活躍ともっぱらの噂。合従軍でも頼りにさせていただきますよ?」

「報酬さえしっかりといただければ」


 シェーンセレノの問いかけにアルフィリースは笑顔で応えたが、それが本心ではないことをレイファンは見抜いていた。

 そしてその日の会議は午後を待たず、早々に解散となった。議題の大きさに、他のことは話にならなくなったのである。各国が中座を申し出自国の調整に入る中、レイファンもアルフィリースを伴い控室に戻っていた。


「アルフィリース、どうするつもりですか?」

「どうする、とは?」

「とぼけないでください。合従軍に参加するつもりかどうかと聞いているのです。いえ、まずは合従軍そのものに賛成するかどうかですね」


 アルフィリースはその質問をにべもなく返した。


「それを決めるのはレイファンや各国の使節でしょう? だけど残された選択肢はそれほど多くないように思えるわ」

「ええ、そうです。そうなってしまいました。合従軍は起こさざるをえないでしょう。それもシェーンセレノの主導によって。主導権はドライアン王に移譲されたかに見えますが、実質の指導者はシェーンセレノとなるでしょう。人間をまとめるのには、誰か補佐が必要ですからね。私かミューゼ殿下がやると考えていましたが、向こうの根回しの方が早かった。残念です」

「・・・あの根回し、会議前からじゃないかしら」


 アルフィリースがぽつりともらした言葉に、レイファンも頷いていた。


「ええ、おそらくは。私もミューゼ殿下もそれなりに裏では動き、手ごたえを感じていました。仮に会議開催から寝ずに工作したとしても、現状以上の成果は得られなかったはず。それを会議の期間だけで、あれほどの賛同者を作ることは不可能です。魔術を使った様子もありませんでした。

 そうなると、会議が始まる前からこの展開を読んでいて、最初から合従軍を興すつもりで動いていたとしか思えません」

「平和的な解決手段を探るための平和会議のはずだけど、大人しそうな見た目と裏腹に好戦的ってことね。あとは図ったようなタイミングのよさ。一つの可能性として、シェーンセレノとスウェンドルは密通しているかもしれないわ」

「まさか? そんなことをして何の得が?」

「得はないかもしれないわね。ただし、二人とも黒の魔術士の関係者である可能性がある」


 アルフィリースの言葉に、レイファンは息を飲んだ。大陸でもっとも勢力のある元首たちが征伐すべき敵――そんな馬鹿なことが起こっていれば、そもそもが黒の魔術士を打倒することは無理ではないか。そんな絶望的な考えがレイファンの脳裏によぎったが、アルフィリースはレイファンの肩に優しく手を置いた。

 

「心配しないで。良くはない状況だけど、想定した範囲内の出来事よ。レイファン、これからの作戦をあなたにだけ話しておくわ。あなたは合従軍の中枢に食い込むことだけを考えて頂戴。これ以上シェーンセレノに好き勝手をさせてはいけないわ」

「それはそうですが、アルフィはどうするつもりなの?」

「奴らと同じことをするのよ。私がローマンズランドに乗り込むわ」

「!? アルフィ、あなたまさか・・・」


 アルフィリースは笑顔でレイファンに微笑むと、これからの作戦を伝えたのである。



続く

次回投稿は、1/16(火)11:00です。

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