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呪印の女剣士【書籍化&コミカライズ】  作者: はーみっと
第五章~運命に翻弄される者達~
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戦争と平和、その78~会議二日目、剣帝と少年③~

***


 昨日、ジェイクは散々な目にあった。おかげで夜警の仕事が手につかず、生返事を三度もする羽目になり、早々に夜警の仕事を切り上げさせられた。周囲には疲労のせいだと考えられてたが、明らかにティニーのせいだった。


「くっそ、昨日の光景が・・・」


 脳裏をちらちらとよぎって止まらない。湯気で肝心な部分は見えなかったような、目を逸らしたような気がした。それでもリサ以外の女性との色恋沙汰とは無縁なジェイク(と、本人は考えているが)にとっては、十分に刺激の強すぎる出来事だった。

 だがジェイクも任務を早く切り上げた分、時間に余裕ができていた。本来なら夕方の特訓と任務のために一度仮眠をとるところだが、さっそく気功を練習しておこうと考えたのだ。

 ジェイクは人気のない場所に移動すると、精神を統一した。周囲の様子がよくわかるが、これではセンサーと変わらないのではないかと思い直す。感覚を体内に巡らせ、自分の中を冒険するように体の中を意識が巡っていった。


「(狭い・・・穴の中を這って進むかのようだな。正直閉塞感が凄いけど・・・待てよ、広い部分に出るのか?)」


 ジェイクが何かを掴みかけた途端、ジェイクは殺気を感じて我に返り、転げ回りながら剣を構えていた。


「何者!?」

「私です、ジェイク」


 すると目の前にはティニーが立っていた。ジェイクは相手がティニーだとわかって安堵したが、同時に昨晩の出来事を思い出して顔を赤らめた。


「気配を消してた?」

「いえ、消してはいません。気功を鍛える時の精神統一は深い。できれば周囲の安全を確保してから行った方がよいでしょう」

「うん、そうか」

「で、どこまで感覚を掴みました?」


 ティニーの質問にジェイクが答える。


「まだ最初の数回だけど、トンネルみたいな狭い穴を通る感覚を得たよ」

「ほう。他には?」

「なんだか広いところに出そうになった。そしたらティニーが来たよ」


 ジェイクの発言にティタニアがぴくりと反応した。懐疑的な表情に変わっている。


「どのくらいの広さだったか覚えていますか?」

「んー、よくは見えなかったけど、天井は見えなかった。草原みたいなところに出たのかと思ったから、相当広いんじゃないか?」

「草原ですか・・・」

「それがどうかした?」

「いえ」


 ティタニアはすまし顔で応えたが、ジェイクの感じ方はティタニアもまた聞いたことがなかった。広さを感じるということは、気功の流れの中、核となる場所に感覚がたどり着いたということ。普通は自分の部屋程度の広さを感じることが一般的なはずだ。ティタニアですらせいぜい舞踏会の大広間程度だが、それでも知りうる範囲の気功の使い手の中では一番広かった。

 広さは気功の強さ、持続力を暗示している。もし草原程度の広さがあるとなれば、ジェイクの気功の素質には実質上限がないことの比喩になる。ただそれほどの気功ともなれば、常人に扱うことは不可能ではないかとも考えられる。使い過ぎれば消耗して倒れてしまうのが気功であり、魔術などでは回復できず、下手をすれば衰弱で死に至る。何でも素質があればよいというわけではないのだ。

 どうしてただの人間がそれほど強い気功の素質を持ちえるのか。またそれだけの素質を開花させたとして、人間の体が耐えられるのか。ティタニアの興味はますます深まっていった。


「(ふむ、特性持ちゆえなのかでしょうか、それともジェイクという人間の資質なのでしょうか。どこまで強くなるのか見てみたい。ドゥームの見立てでは聖騎士の再来ではないかということでしたが、もしかすると未知の特性持ちなのかもしれない。

 もし彼の資質が予想通りだとすると、我が悲願がようやく叶う時が訪れるのかもしれませんね)」

「ティニー、ティニーってば」


 ジェイクに肩を揺さぶられて、ティタニアは思わず我に返った。


「済みません、考え事をしていたようです。さて、今日朝の特訓を開始しましょう」

「おう、よろしく頼む――お願いします」


 ジェイクが一礼をしてティニーとの稽古に入ったが、この時ティタニアはジェイクの指導に没頭するあまり、彼らを監視する者がいることに気付かなかったのである。



続く

次回投稿は、11/27(月)15:00です。

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