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翼の末裔  作者: 宗像竜子
第三話 壊れゆく夜のために
28/35

壊れゆく夜のために(1)

『翼』『翼の末裔』と異なり、こちらの作品は少々暴力的・差別的表現や残酷な描写が入ります。苦手な方はお気をつけ下さい。

挿絵(By みてみん)


 もう、なにもない。

 もう、なにもいらない。


 全ては── 終わってしまったのだから。


 今さら欲しがった所で、何かが変わるはずもないのだ。彼は小さく自嘲するように微笑み、閉じていた目を開いた。

 それでもこの手に、たった一つ残されたものがある。

 もはや持ち上げる事すら出来ない掌に、一枚の羽根。そっと、まるで壊れ物のようにそれを握り締めて。

 これでいいと、彼は思った。

 これだけで、自分がこの場所で生きた意味があったと思えたから。


 だから、今は。

 空に祈り、大地に祈る。そんな資格がない事は重々承知の上で、ただ、祈る。

 見上げた空に浮かぶ白銀の円盤は、今日も清浄な光を静かに降り注ぐ。

 せめてそこだけは、これからも変わらず美しくあればと。

 そこにいる人が、幸せであればいいと。

 それだけが贖う事の出来ない罪を背負った彼に出来る、ただ一つの事だったから。


 狂気を呼び、血を招き── それでもただ、ひたすらにささやかな幸せを求め続け。

 涙を流し、終いには自分自身すらも壊してしまった。



 …彼が唯一愛した、小さな『鳥』の為に。

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