表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

金色の猫

作者: 愛宕順
掲載日:2026/05/25

こんにちは、初めまして。

宜しくお願い致します。

大きな石組の城の中は天井が高くどこかいつも冷んやりとした空気が流れていました。王様は騎士団が守り沢山の警備の兵士がそれぞれの持ち場を守っていました。

城には、中庭があり大きな噴水の水が陽の光にてらされ虹を作りながら流れていました。周りには季節の花々が咲き小鳥たちは様々な歌を囀っていました。

中庭を通り過ぎると、左右に背の高い大きな石組の壁がそびえる薄暗い通路があり、その壁の一郭が隠し扉になっていました。その先には長い階段が続き、上の塔へと繋がっているのでした。

塔の上には部屋があり扉を開けると、城で使わなくなった、家具や絵画、鎧、糸車等いらない物が沢山置いてあり、白い布が被せられ一見物置の様なありさまでした。天井は高く上に着いている幾つものアーチ型の窓からは、光の帯が白い布を金色に染め上げるのでした。

物置の様な部屋の奥に、歳の頃は4〜5歳の小さな女の子と猫が住んでいました。

少女の名はマリー、前王の娘でした。

マリーの両親は断頭台に立ち、弟、妹は病にて天に召され、マリーが塔から出る事は許されず、マリーの世話は、貴族の夫婦に一任され毎日、婦人がマリーの元にやってくるのでした。

「マリー、今日はチョコレートのケーキを焼いて来たのよ。それに、髪に付けるリボンを買って来たの。付けてあげるから早くいらっしゃい」婦人はそう言うとマリーを抱き上げ膝に乗せ、長い巻き毛をブラシで優しく丁寧に撫でるのでした。鏡にうつる自分の髪が綺麗に整えられていきます。婦人の腕の中に抱かれ、頭を撫でられている間、マリーはお母様を思い出すのでした。

「婦人、婦人はとってもいい匂い、あたたかくて、柔らかくて…」「あらあら、お話が途切れたと思ったら、もう眠ってしまったのね」婦人は優しく微笑みました。そんな、小さなマリーの事を婦人も、自分の娘の様に思っているのでした。

又、この幼い少女の行く末を考えると深い苦しみさえ感じるのでした。

婦人は、マリーを寝かせ付けると隠し扉を通り帰って行きました。

それぞれの窓からは、星が見え月の光の帯が、マリーの寝顔を優しく照らしていました。その横には大型犬程もある、金色の長い毛を持つ猫が、寄り添う様に一緒に眠っていたのでした。

金色の猫はマリーの側を片時も離れる事はありませんでした。食事の時も、遊ぶ時も、寝る時も、入浴の時でさえも一緒です。そして、ルビーの様に透き通ったピジョンブラッドの瞳にいつもマリーの姿を映し穏やかに優しく見守っているのでした。婦人や時々やって来る婦人の夫も、この大きな金色の猫に信頼を置いており、帰宅の際には必ずマリーの安否を頼んで行くのでした。

ある時、騎士団の1人がマリーの様子を伺いに視察として塔に登って来たのでした。マリーが塔にいる事は、騎士団の中でも一部の者しか知らない為、数ヶ月に一度安否確認としょうし事情を知る者が、見回りにくるのです。

騎士団員は、無表情で淡々と婦人夫妻やマリーに聞き取りをし、帰って行くのですが、今回の団員は、感情を露わにしマリーに対し暴言を吐いたのでした。その時、金色の猫が顔を歪ませ唸り声をあげた瞬間空気は振動し、ビキビキと音をたて壁が軋み、幾つもの窓ガラスが吹き飛びました。団員は、目に見えない恐ろしい力に青ざめ、恐怖で膝を突きました。そして、目の前にいる金色の猫にはまるで気づかない様子で、マリーと夫妻に向かい「お前達、何をしたんだ!」と大きな声で何度も叫び、怯えながら意識を失ってしまいました。しかし、目を覚ますと何事もなかったかのように、また無表情になって、いつものように帰って行ったのでした。

ある時、婦人がいつもの様にマリーの所に行くと隠し扉が少し開いていました。

婦人は呼吸が止まったかの様に苦しく、身体全身が冷たくなり、がくがくと身体が震えるのを感じました。「マリーが、部屋から出てしまっている!」部屋を確認するとマリーと金色の猫はいませんでした。婦人は、「マリー!マリー!」心の中で叫びながら、城の中を駆け回りました。どれだけの時間探したでしょう。マリーはみつかりませんでした。苦しさの中、頬をつたう涙は、暗く長い隠し部屋に繋がる階段を登る婦人の足取りを重くするのでした。

塔に戻ると、マリーと金色の猫はいつの間にか戻っていたのでした。婦人は、マリーを抱きしめ大きな声で泣きました。マリーの体温の温かさを感じながら、生きている事に「ありがとう。ありがとうございます。神様、マリーを生きて無事に返して下さり。本当に感謝いたします。」と祈りました。

「婦人?ごめんなさい。猫が扉の外に出てしまったの…でもすぐに見つかって戻って来たんだよ。」マリーは子供の様に泣いてる婦人の顔を小さな両手で包み込み、覗き込んで微笑みました。婦人はもう一度強くマリーを抱きしめ、心から「どうか、この愛しい子も私と同じ思いであるならば私をこの子の母にして下さい。」と強く願いました。

しかし、その数日後夫妻は、マリーの世話係から解任される事となり、その後マリーの安否は

不明となったのでした…。


長い長い年月が流れ、舞台は今の日本へと移ります。

東京には、高層ビルが立ち並び、私は31歳の主婦です。6歳の息子と4歳の娘がいます。ある時娘が朝起きて来て「いつも赤いお目の金色の猫さんが、あたちを助けてくれるの、夢の中では、お顔が違うママに…でもママなの、マリーって呼ばれているの…」と話して来たのです。私は、涙が溢れ鳥肌が立ちました。私は、マリーと金色の猫を知っているからです。

あぁ、貴女も私の元に産まれたいと願ってくれたのね。ママの元に産まれて来てくれて。ありがとう。本当にありがとう。

金色の猫さんマリーと娘のそばにずっと一緒にいて守ってくれて、ありがとう。その時、柔らかく温かい風が私と娘の肌に触れて消えて行きました。


読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ