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31話 回想

エリュド軍襲撃3時間前。

 セレフィア星光教会大聖堂では避難してきた民達が押し寄せ、それを必死に捌くクリスとベオウルフの姿。


「若い者達、健常者は王宮へ向かって下さい、そちらの方が騎士たちもいて安全でしょうから。

 こちらは数が限られております。高齢者や障害のある人、妊婦を優先させて頂きます。」

 

 パニックになる人達を必死に落ち着かせながら地下へと避難を促す。地下では聖職者達が避難民達の誘導を行っていた。

 そして礼拝堂ではセラフィーナとベルディアが対峙する、


「今ここに向かっているのは魔王軍の差し金?それともその配下が勝手にやっていること?」

「言えないわね。」

「ここ最近毎日顔を出していたのは魔族がここに攻めてくることが分かっていたからかしら?」

「言えないわね。」

「ここを攻めてくる目的は何?国ならほかにもたくさんあるでしょうが。」

「言えないわね。」


 ガシャァン!セラが胸倉を掴みそのまま机に叩きつける。

 無抵抗のまま叩きつけられたベルディアは動くことはなくそのままセラの顔を見ていた。


「分かっていたなら何故言わない!てめぇは面白半分にこの行く末をただ見てるってか!えぇッ!?」

「………。」

「……ッ!」


 ただ何も言わず、だがジッとセラの顔から目線を外さないベルディアに苛立ちを覚え右手を振り上げる。


「セラフィーナさん止めて下さい!」「お姉様止めてッ!」


 その様子を見ていたルナとノエルがすぐさまセラの身体にしがみ付きその振り上げた腕を必死に止めようとする。


「何とか言えッ!てめぇは一体何がしたい⁉」


 怒声を強め顔がくっつくほど近付ける。瞳孔は開き犬歯を剥き出しベルに問う。お前はどちらの味方なのか、今までの言葉は口だけだったのかと…。


「私は人間が好きよ…。今までも…そしてこれからも…。」


 苦しそうな顔で…だがその言葉には苦し紛れではなく曇りの無い言葉に感じたセラはゆっくりと腕の力を緩める。


「「「ベルディア様遅くなりました。」」」


 ぞろぞろと約百人余りの女性達が礼拝堂へ入り命令を待つように頭を下げる。

 中には街中で見かけたことのある顔がちらほらあった。その者達へベルは立ち上がり命令を下す。


「能力を使ってもいいから避難民の誘導並びに皆がパニックに陥らないように精神干渉を…3部隊に分け王宮内と道中にも対応しなさい。」


「「「かしこまりました。」」」


 そういうと女性たちの目が赤く変わり背中から翼を出す。

 そして一斉に礼拝堂から飛び去って行く。

 彼女たちは元々ここに住んでいたのか、それとも招集されていたのか…。

 それは分からないだが今はそんなことはどうでもいい…。


「私達にも守りたいものはあるわ、気に入っているのは特にね…。」

「はぅ…。」

「………。」


 ベルディアはぎゅっと傍にいたノエルを抱きしめる。そして再度セラへと目を向け


「理由は言えないけどここにいる人たちは守るわ。その言葉に嘘偽りはないわよ。」

「………あっそ。」


 そう言って振り返り礼拝堂を出ようとするセラにノエルが駆け寄る。


「お姉さまもしかして…行くつもりですか?」

「……いい子で待っているのよ。」


 涙目になったノエルをあやす様に頭を優しく撫でる。


「ダメですぅ…。そんな危ない所に…お姉様までいなくなったら……。」

「大丈夫よ。お姉ちゃん強いから…。」


 すすり泣くノエルをギュッと抱き締めベルディアに託す。


「ちゃんと帰ってくるのよ、あなたも私の好きな人の1人なんだから。」

「あら初耳ね。」


 ニヤッと笑みを浮かべセラはその場を後にした。


「セラちゃんかなり怒っていたわねぇ、嫌われちゃったかしら…。」

「そんなことありません、お姉様はベルディアさんが来た時は楽しそうですから。」

「そうなの?良く分からないけど…。」

「はい。それに怒った原因はベルディアさんではないと思うので…。」

「………。」


 ノエルは話す。恐らくであろうセラが起こった原因を。


 ノエルがまだ物心付く前の事、両親はノエルとセラを残してこの聖堂を出て行った。

 2人は聖職者であり治療師として結婚する前から紛争地帯を渡り歩いていたのだった。

 怪我をした民間人を治療し癒し勇気づける。

 それはセラが生まれてからも続いていた。

 祖父がいるとはいえ何ヵ月も帰って来ない事に不安や不満が募るのも無理のない話。

 もしかしたら二度と帰って来ないのでは? そう思いながら毎日泣き続けていたらしい。

 そしてノエルを腹に宿し出産してからは紛争地帯へは出向くことは無かった。

 だが出産して2年ほど経ってからまた出向くこととなる。

 そのことに対しセラは憤慨した。

「私達の事なんてどうでもいいんでしょ。嫌いだからどこかへ行くんだ。」

 と。当然心からの叫びでは無い、少しでも気を引きたかったから、どこにも行って欲しくなかったからその場で出た咄嗟の一言。

 両親が抱き締め愛していると口にしてもそれ以降は口を開かない。

 そしてそれが最後に交わした言葉となってしまった。

 結局両親が紛争地帯へ行ってしまってから1ヵ月後に両親が戦死したことが告げられる。

 大きな爆発に巻き込まれそこにいた大半の救護人と民間人が死に至った。

 それが魔法なのか、それとも兵器による物なのかも分かっていない。骨も残ってはいないらしい。


「ということがあってから戦争の言葉を聞くだけでも嫌なんだと思います。」

「そう……。」


 ベルディアは目を瞑り、以前にインキュバスと戦争をしたことを軽率にペラペラと話してしまったことを反省する。


「強いわね…あなたたちは。」

「私は別に…むがっ。」


 ベルディアはまたぎゅっと抱き締める。


「じゃあ今は出来ることをしましょうか。」

「はい。ってあれ?ルナちゃんは?」


 その場にいたルナの姿は知らず知らずのうちに消えていた。


「セラフィーナさぁん!待ってくださぁい!」

「……?何しに来たの?聖堂にいなさいな。」


 大城門へと歩いているセラをルナが追いかける。


「私も一緒に行きます!」

「………。必要ないわね、多分守ってやること出来ないし。」

「えっ?聖職者なのに?」

「あ"ぁ?」

「ぴぃ!何でもないです。」

「まぁ気持ちだけ受け取っておくわ、ありがとね。」

「でも…、さっきノエルからご両親のことを聞きました。何か私も力になりたいんですッ!」


 さてどうしたものか…とセラは迷う。

 魔法での火力は確かにありがたい、だが基本近接技で動き回るセラからしたら邪魔であり何よりこの子も危険に晒したくはないのは事実。


「使う魔法は制限すること、後魔法名は口に出しなさい、こっちの対応が遅れるから。後指示を出すまでは動かない事。」

「はい。分かりました。」


 本当にわかってんのかこいつ。と思いながら歩いていると大城門前へ到着する。

 既に多くの騎士達が集まっており門は閉められようとしている。

 その騎士たちの横をす~っと通ろうとしたが当然の様に呼び止められる。


「待て。お前達何処へ行くつもりだ。」

「……城の外。」

「聞いていなかったのか?今魔物の大群がここを目がけて進行している。危険だから戻れ。」

「知ってるて、いいから通しなさいよ。」

「ならん。今は冒険者も外には出していないんだ、それに君は恰好から見るに聖職者ではないか。」


 いいから通せよとガンを付けるが一向に通す気配はない。

 そして他の騎士も「どうした?」とわらわらと集まって来た。


「鬱陶しいなぁ、どけっつってんだろ。」

「いや本当に危ないから、そこの魔女の格好したエルフの子も…早く避難所に行きなさい。」

「あなた私を子ども扱いしましたね、顔は覚えましたよぉ。」


 段々と騒ぎが大きくなる。お互いに今それ所じゃないんだけどといった表情をしていた。

「ちょっとルナこいつら吹き飛ばして。」

「えっ?あっはい。」

「ちょっと何しようとしてるの?」


 パァッとルナの周りに魔力が溜まり騎士たちは慌て出す。


「待てッ!一体何をしようとしているか⁉」


 そこへ現れたのはセレス=グレイヴァル王紀。

 一体どこから?いつの間にこのような近くまで?騎士たちはそのような疑問を疑問を抱く前に敬礼を行う。


「はっ!この者達が城の外へと出ようとしていた為…」

「黙れッ!」


 ピシャッと騎士の言葉を遮りセラに目を向ける。


「もう一度問うが…貴様何をしようとしている?」

「何って…ただの魔物退治でしょ。」


 セレスの冷ややかな目に負けず劣らない切れ長の目を細め睨みつけるセラ。

 一触即発の空気に騎士たちは近付くことも声を出すことも出来なかった。

「………。はぁ…意固地の所がターニアそっくりね。」


 ため息を付き、負けたわとセレスが手を上げる。


「相手の戦力を知っているのか?お前の作戦は?まさか目に入った相手をとりあえずってな訳では無いだろうな?」

「そ、それはその…。」


 その通りなのですが…。とセラは目を伏せる。

 そしてセラがノープランであることに呆れセレスは額に手を当てる。考えが脳筋、一体誰に似たんだか…そう思い悩むのは今ではない。

 セレスが水晶を取り出しセラに見せる。中には敵の軍勢と重要人物が映った。


「敵の数は約5000。そして後方に約45000の軍勢が押し寄せてきている。

 先に来る先方隊は上位種の魔物だらけだ。

 その中には竜騎士エリュドの姿があった。恐らくこの戦を仕掛けた張本人だろう。」

「竜騎士エリュド……。」


 以前にネファリナと通信をしていた時に聞いた名前。

 ベルディアと同じ5将星の1人。

 過激派で反発ばかりするクソ野郎だとかなんとか…。


「後方の多軍勢は下位種の魔物がほとんどだ。つまり先遣隊が城門を突破し後から雪崩れ込む作戦なのだろう。

 要は最初の5000を潰さなければ我々の負けということだ。」

「………。」

「後方からの遠距離攻撃を行いお前には取りつかれないように騎士達と共に「必要ないわ。」……何?」

「必要ないって言ったのよ。邪魔だから。」

「貴様自惚れるなよ!これは戦争だ!戦い方も知らない小娘がしゃしゃり出るな!」


 騎士団副隊長のバスカン=ローデンが眉間に皺を寄せドスドスと大きく足音を出しながら近寄る。

 当然だろう。5000の敵兵に対し仲間が邪魔だと言っているのだから…。

 だがバスカンに目も暮れず2人は話を続ける。


「敵が散らばらないようにしてくれればそれでいいわ。」

「……ふむ、……分かった。ただ下位の魔物駆除には兵を出させてもらう、無事帰って来い。」


 セラをギュッと抱き締めセレスが耳元に囁く。


「やりのけた際は…………してやる。」


 セレスが何かを言い終えるとセラの瞳孔が開いた。そして城門へと歩き出す。

 通せとセレスが身振りを行い騎士たちは道を開けた。


「あなた!セラをよろしく頼むわね。無事帰って来れたら城に顔を出しなさい。」

「は、はい。頑張ります!」


 ルナにそう一言告げセレスはその場から消えた。恐らくテレポートしたのだろう。


「セラフィーナさんさっきは一体何を……ひっ。」


 セラの後ろを歩くルナが尋ねようとしたがセラの表情を見ると言葉が詰まった。

 覚悟に満ちた表情とでもいうのだろうか、まるで邪魔するものは仲間でも殺すと言わんばかりの恐怖すら感じる光の無い目。

 狂戦士に成り変わったセラに安易に言葉を掛けられなかった。


「ルナ、私の言う通りに動きなさい。でないと……。」


 殺すわよ。言葉にこそしなかったが殺意が伝わってくる。

 身体がビクビクと震え出す。この人だけには逆らってはいけない、そう本能が訴えかけてきた。

 敵さん、早く来てください、ルナにドッと緊張が芽生える。だがそれは戦いに対してでは決して無かった。


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