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27話 勝敗

「後簡単に死なないでね、生き返らすのに魔力結構使うから…、それにあんた竜騎士なんでしょ、さっきの奴みたいにドラゴンになれるんならなんなさいよ。」

「舐めた真似をッ…。」


 生き返らせたことを後悔させてやるッ。

 顔を歪ませ光がエリュドの身体全体を包み込む。

 そしてみるみる身体が大きくなり全長10m程を四足で支える白竜へと変貌を遂げた。


「おお、おっきいわね。」

「抜かせッ!」


 胸が白く光る。

 光が胸から頭へと移動し、口が開くと共に熱光線がシスター目がけて轟音を発しながら一直線に放たれた。

 ―ゴォオオオッ!―地が揺れシスターが居た場所は地面が抉られていた。

 シスターの姿は無い―跡形も無く消し去ったか?いやそんなはずが無いと辺りをキョロキョロと見渡し索敵をする。

 バキッ!―何かが折れる音がエリュドの間近で聞こえる。

 その次に訪れるのは衝撃。

 顔が吹き飛ばされるように右を向き、それに釣られて身体が仰け反った。

 そして何が折れたか―折られたのかを理解する。


「することが二番煎じでは?」


 牙が空を飛び回っていた。

 痛みと出血等は気にならない、それより。

 横目で見えたシスターを爪で切り裂こうと左腕を振り上げるも躱される。

 と同時に。―ドゴッ!もう片方の腕に衝撃が走る。

 右腕には身体を支える力が入らず崩れる様に倒れ込む。

 一体何が起きたのか?たとえ攻撃を与えられたとしてもぶ厚く固いドラゴンの肉壁の中にある骨にダメージは入らないはず。

 にも関わらず力を入れることが全く出来なくなっていた。

 動物の体には骨と骨を繋ぐ関節と呼ばれる部分がある。

 そこに可動域を超える向きへの衝撃、又は急激な衝撃を加えることにより骨と骨にずれが生じる。

 その正常にあった位置からずれ戻らなくなってしまった事を脱臼という。

 これは適切な向きに力を加えることで骨をもとの位置に戻すことが出来るが、現在四足歩行の状態かつ生まれて1度も経験したことが無かったドラゴンの脱臼、

 その処置方法はおろか知識も無かったエリュドには何が起きているのか全く分からなかった。


「ぐっ、腕が動かん!一体何をされたのだ!」


 一旦体勢を整える為に左腕を地面に伸ばす。

 だがこれが悪手。

 狙ってくれと言わんばかりに伸ばされた腕は容易に関節を外される。

 再度前方へとドシャッ!と顎から倒れ込んだエリュドにはシスターがどこにいるのかさえ把握できない。

 起き上がろうと翼を羽ばたこうとする。だがそれを既に見越していたのか、翼の付け根部分に激痛が走った。

 バキッボキッ!と両翼がへし折られる。


「グァアアアアッ!」


 その叫びは痛みによる悲鳴か、為す術も無くなってしまったことに対しての無念か…。

 だがシスターの動きは止まらない。

 後ろ足の脱臼、尻尾の接合部への打撃を加え完全に横たわってしまう。

 起き上がることすらもままならない哀れなドラゴンには右、左と身体をくねらすことしか出来ない。

 もうここからの勝つ筋は無い。

 誰が見てもそれは明らかだった。

 エリュドでさえもどうすることも出来なかった。

 シスターによる身体の破壊が止まらない。

 両手足の爪を根元から粉砕し、全ての牙、そして頭部の角さえもへし折る。

 そして脱臼している関節部の破壊。

 エリュドには身体の武器を取り上げる様に破壊されていくのを受け入れ、ただ痛みを我慢するしかなかった。


「ふぅ…。ようやく終わったわね。」


 上顎に立ったシスターが一仕事を終えたかのように気軽に話しかける。


「もう十分だ。我の………⁉」


 負けだ。そう言い放った。完全敗北。

 文字通り手も足も出ず…、一思いに殺してくれとそう願った。

 伝えたつもりだった。だが―言葉が出なかった。

 決して負けを認めたくなかったからではない。

 闘争心も誇りも全てを打ち砕かれ負けを認めた筈だった。

 にも関わらず声が―物理的に出なかった。

 何故か。それは簡単な話。5歳の子供でも分かる程の…。

 喉元が潰されたのだ。―陥没していた。ぺシャンと、ご丁寧に逆鱗部分を除いて。

 エリュドは呼吸困難になりながらも何とか酸素が供給される。

 話すことに割くことすら出来ない酸素を取り込み考える。目の前のシスターが何故このような行動を取ったのか?

 この無意味とも呼べる行動の意図とは?完全に負けた。

 ここからの逆転の一手などない。にも関わらず何故殺さないのか。

 エリュドはニタァと笑みを浮かべる表情に血の気が引いた。そして……。

 グシャァッ!右腕の親指、爪が生えていたであろう箇所がシスターの手によって潰される。


「ッッッァアッッ!」


 声は出せないが痛みが漏れ出る。目と口を大きく開き首を振りながら悶えた。

 その様子を無表情で見つめるシスターその表情からは何を考えているか誰も分からない。だが……。

 グシャァッ!次は人差し指の爪の生え際。そこから一定間隔に指が潰されていく。

 両手の指を潰し終えた時、エリュドはビクンと反射する反応しか見せなかった。

 それを見てシスターはエリュドの上顎に乗り、あろうことか回復魔法を掛ける。

 身体の一部の損傷が治りエリュドの意識も回復する。


「お…、お前一体…何を…。」


 ―考えているのか。

 潰されていた喉が辛うじて話せる程度まで回復していた。

 そして潰された指も…。

 グシャァ!意識を取り戻した事が分かるとシスターは返答等せずまた指を潰し始める。


「グゥァアアアアッ!」


 絶叫する声だけが周囲を響き渡らせた。

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