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21話 勇者ちゃん登場

 ネフェリナさんの作り出したワープホールによって村の広場へと移動した私達は爆発に巻き込まれることは無かった。

 それでも爆心地から放たれる衝撃波に頬肉や服が激しく揺れ動く。

 そしてその衝撃波はようやく収まりを告げ皆がホッと胸を撫で下ろした。


「あれ?そういえばルナは?」

「「「「あっ。」」」」


 セラの一言に皆気が付いた。

 その場の全員が無言で周囲に目を配らせる、誰か連れてきていないのかと…そして理解をした。

 あの子まだあのベッドで寝てるわ。


「私は何という事を……。」


 セラは肩を落とし動揺するネフェリナさんの肩を叩き、


「あなたは何も悪くないわ、あの場で寝ていたあの子が悪いのよ。」


 そう言ってフォローをする、他の者は十字を切ったり両手で拝んでいた。

 徐々に土煙が晴れていく、家の瓦礫の下で1本の褐色肌の小さい腕が伸びているのが見えた。


「ちょっとあんた、早く行って助けてきてあげなさいよ。」

「それはそうなんだが…腕以外の身体がぺしゃんこになっていたら私は最大級のトラウマを抱えてしまわないか?」


 誰もその腕へと歩みを進めなかった。

 決して誰もルナの事を助けたくないとか思ってはいない。

 ただあれはもう無理だろう、そうきっと、助からん、うん。

 その瓦礫の中から人影が見えた。その人影は瓦礫の山を持ち上げて投げ捨てる。

 その下で埋まっていたルナを抱えてこちらに歩いて来る。


「いや~ごめんね、人がいるとは思ってなくて。」


 そう言いながら現れたのは私よりも年下に見える童顔の茶髪ショートヘアの女の子だった。

 栗色の目にボーイッシュな見た目とは裏腹に出ている所は出ているその子は、ルナを地面に降ろすと一目散にこちらに泣きながら駆け寄って来る。


「うわ~~ん!ひどいじゃないですか、私が神になったからって腹いせにこんなことするなんて!

 死ぬかと思ったんですからッ私の信者が黙ってないですよ~!。」


 そう言ってポカポカと叩きながら顔を擦り付けてきた。

 ううぇ鼻水汚なっ。


「よしよし、良かったわねぇ~生きてて。シリアスな世界だったら死んでたわよ~。」


 良く分からないことを言いながらベルが慰める、そのまま引き離してベルに託そうかと思ったが力を入れているのか全然離れない。

「ま~~くぅ~ん、どういう事かな?ネーちゃんに聞いたけど…?」

「ひっ、ひぃえぇええ~~。」


 そう言って私の背中に隠れてしがみ付く魔王。

 いやあんた…何そのなっさけない声と行動。てか離さんか、この。


「何してるのぉ。こんのッ、離れなさいよ~。」


 そう言って茶髪の女の子が魔王の背後に回り手を腰に回す。

 何だこの意味の分からん状況⁉ ちょっ誰か教えて、教えなくていいから誰か打開して!


「はぁ、魔王様ともあろうお方が何やってんですか。」

「わっ、ちょっお前何して…ごへぁッ!」


 ピッっとネフェリアさんが指を光らせると魔王の手が離れる。

 そして茶髪の女の子が魔王の腰を離すことは無く、そのままジャーマンスープレックスを叩き込んだ。

 頭がぶつかった衝撃で地面が割れたがそんなことお構いなしなのか茶髪の女の子は魔王に馬乗りになる。


「私という者がいるのにひどいじゃないかぁま~くん。」

「ぐふっひどいのは……がはっ、お前……ごぶっ……死ぬ…。」


 ゴスッガスッっと鈍い音が聞こえる。

 馬乗りになった女の子がそのまま魔王に往復ビンタをしていた、……よく見ると手がパーではなくグーになっている。

 往復パンチ?フック?をされている魔王は血を顔のあらゆる穴から吹き出していた……。

 しゅ、しゅごい。

 その姿をセラは血がかかるかかからないかのギリギリまでしゃがんだまま顔を近付け、両手に顎を乗せうっとりとした表情で見ている。


「びぃい~~ん、べるしゃ~んごわがっだぁ~~。」

「よしよし、よく頑張ったわねぇ~、あ、だめよ離れちゃ。そのまま抱き付くのはアネットちゃんにしてね。」


 この混沌カオスな空間に助けを求めるべく周囲を見渡す。

 ネフェリアさんはセラと一緒に殴られる魔王の顔をにやけながら見ていた。

 あなたもそっち側ですか…。

 こうなったら最後の1人ヴァルナードに託すしか…そう目を配らせ頼むと合図を送る。

 それを察したのかヴァルナードの両手が光りに包まれる。


「うぉおおおッ!スピリチュアルワールドッ!」


 うわダっサッ。

 だがその言葉と共に周囲に光が包まれ落ち着きを取り戻したように茶髪の女の子は手が止まった。


「まさかこの必殺技を出す時が来るとは…、スピリチュアルワールド。

 それは瞬時に血行を良くし血圧を下げ心拍数と脈拍を下げる我々老人には欠かせない魔法展開領域。

 この技を習得するのには長年の修行と毎日体の衰えを防ぐための健康体操をする事によって――」


 聞きたくもない説明を勝手にし始めた老人は置いておいて魔王の元に近づく。

 顔はパンパンに腫れあがり元の整った顔の面影はなかった。

 意識を失っているのか分からないが目の焦点が合っていない…死んでいる可能性すらあるこの顔を見てドSの2人は爆笑している。


「セラッ…ぶふっこの顔を記録しました。額縁に入れて城に飾りましょう。」

「くぁあっ、いいわねそれッ、銅像を建てるっていうのはどう?城の入り口前に左右に2つ置くっていうのは?」

「フフッ、そのアイデア頂きました。出来たら一番に見せますね。」


 恐ろしいわこの二人。

 死にかけの魔王の横で会話する内容じゃあない、そして魔王にこんな無様な死に方をして欲しくはない。(魔族を統べる者的な意味で)

 顔面を殴打したら死にました、なんてそんなの許されないだろう。


「わぁひどい顔ねぇ、さながらクロ〇と戦った後のヒソ〇みたい。」


 言っている意味が分からないが侮辱していることは分かった。

 もう止めたげて…、これ以上は死んでしまう…心が…。


「この人は一体何をしたのでしょうか?

 とんでもない悪行をしてもここまでの制裁は無いですよね?」


 もう分からへんねん。

 ピカーンて光ったおもたらドカーンでボコボコボコや。分かる人おったら説明してや、そらキャラもブレるてホンマ。


「それで君たちは何なのかな?もしかしてまーくんの…その、彼女……候補だったり?」


 彼女が魔王に治療魔法を施しながらむっとした表情をして握り拳を作る。

 君こそ何者?と聞きたいが先に彼女の疑問に否定する。


「いやいやとんでもない、私達はたまたまさっき会ったばかりでその人が魔王であること以外は全く知らないんだ。」

「でもさっきあたしとこの子は魔王から宝石貰ったわ、腕輪か指輪どっちがいいかって選択肢まで与えて。」

「そんなヒドイ!私だって貰ったこと無いのに。」


 そう言いながら魔王の首を両手で掴むように握り絞め宙に浮かせる。

 セラッ!何故にいらない事を言ったんだ。

 あ~それ以上は止めた方が…、ほら魔王さんの顔が真っ青になってるし、首が今にも千切れるのでは……。

 一番ヒドイのは君だぞ?自分の行動を考えて?とりあえず落ち着いて。

 そういった言葉が喉奥まで出かけているが下手なことを言わない方がいいかと飲み込む、――落ち着く……?


「ヴァルナード!今の技をもう一度お願い!」

「うぉおおお!持ってくれよ俺の体!スピリチュアルワールド・エターナル!」


 ヴァルナードが両手の指を禿げた額の前にかざすと再度周囲に光が包まれる…と同時に茶髪の女の子の手が緩みバタッと魔王がその場に倒れ込んだ。


「お前にあの男の不幸が癒せるのか?…お前に魔王を救えるか!?」

「うるさいッ!」


 茶髪の女の子がヴァルナードの鳩尾辺りに蹴りを入れる。

 ドゴォっと鈍い音がした。

 ヴァルナードの悲鳴が聞こえることなく、離れた場所にある民家まで吹き飛び家が崩れる。

 その老体への容赦の無さに愕然としていると


「もういい!帰るッ!」


 そう言って泣きながら最後にこちらをキッと睨み女の子は飛び去ってしまった。

 うわ絶対変な勘違いしてるよあの子…。


「あの子は一体何者なんだ?」 


 嵐の様に過ぎ去った女の子について魔王は重体の為ネファリナさんに尋ねる。


「あの子はえ~…勇者ちゃんです、本来魔王討伐の為に駆り出された人類の最終兵器とでも言いましょうか。」


 ぶっ倒れている不甲斐ない姿を晒している魔王を(さげす)みながらネフェリナさんが勇者と魔王が相対した際に軽く触れる。


「あの子…勇者ちゃんが単身で魔王城に攻め込んできた時のことですが、魔王様は勝てないと思いきや色仕掛けを行い籠絡させてしまったのです。

 にも関わらずその後好意を寄せて来る勇者ちゃんを用済みの女の如く無下にあしらい続けているのです。」

「「「「………。」」」」


 ゴミクズのような男だ。

 その場にいた全員が魔王を(さげす)んだ目で見下す。


「ちょっと待ってくれぇ、全然違うから…本当に。」


 必死に否定している所がまた怪しい…。

 ネファリナさんがそれに続く


「最近は外交を名目に城に滞在する頻度が減っております。勿論それに伴い勇者ちゃんに会う頻度も。」

「あのこれお返しします。」

「あ、私も。」


 魔王に貰った腕輪を取り外す。

 危うく感謝しろだの恩を売り付けられる所だった。


「あの本当に違うから、話だけでも聞いてくれる?」

「ネファリナさんの発言は全部嘘だったという事か?」

「イヤ、それは本当なんだけど…。」


 セラと同時に腕輪を魔王の顔面に投げつけた。

 その後何故かルナまで加わり倒れている魔王を踏みつけ、動かなくなるまで蹴り飛ばす。このッ、このゴミめッ!

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