17話 道中
城門前に着くと2人の衛兵が重なるように十字の形をして血を流して倒れていた。
何事かと近づくと鼻以外の箇所から出血は見えない。
「もう何も怖くない……。」
そう訳の分からない言葉を言い残しビクビクしていたが命に別状は無さそうだったので声を掛けずそのまま素通りした。
既に3人が城門前に来ていた。
少し待たせたか…、小走りで3人の元へ近づく。
「すまん待たせたな。ルナ、お前は何だか可愛らしいな魔女っ子のコスプレか?ベルは何その恰好?」
「コスプレじゃないです、ちゃんとした魔導士の服なんですよ?
魔法を伝導させる為にエルフ代々受け継がれる糸を使ってですねぇ……。」
「これは東方に伝わるチャイナ服っていうのよ、動きやすくて愛用しているわぁ。」
ふぅん…でもなぁ…何だかなぁ。
騎士にシスター、魔女っ子にチャイナ服かぁ、何かコスプレ集団みたいだなぁ気にし過ぎかもしれないが…。
「ベル、もしかしてあいつらに何かした?」
2人の倒れている衛兵を指差し質問する。両の掌を上に向け肩をすくめ
「何もしてないわよ?ルナちゃんにスピニング〇ードキックを見せていたら倒れてたわ。」
「ベルヴィアさん凄いんですよ、どうやって滞空しているのか全然分からないんです。翼も出してないのに…。」
そのキックがどんなものかは知らないが目を輝かせながらルナが力説していた。
まぁ機会があれば見せてもらうわ。
さっきからずっと下を見て会話に加わろうとしないセラを見るが表情が見えず、うめき声のようなものが微かに聞こえてくる。
「今日無理かなぁ、今日無理かも…、すっごい気持ち悪い…。ちょっと肩貸して。」
二日酔いに悩まされていた。
ようやく重い表情を上げたかと思うといつもの鋭い眼光は無く、真っ青な顔をして目も垂れている。
自身のスタッフにもたれ掛かるように立ち上がるが足取りは不安定であり、よく見ると城壁に吐瀉物に見えなくもない物が…。
ルナとベルはセラに一切目を向けず、ルナは蹴り技をベルから教わっていた。
さて気を取り直していきますか。そう思いながら歩みを進め始めた。
道中。報告のあった廃村までの道筋を歩く中、魔物というのはやはり出てくる訳で…目の前にも1体の魔物が現れた。
膝丈位で透明感のあるゼラチン質の身体をしておりプリンのような見た目のフォルム、目と口があり敵意とは無縁のようなあどけなさすら感じさせる魔物。
「アネットさんは魔物だったらどういった種族が好きなんですか?」
「私も魔物だったらどれでもいいわけではないぞ、やっぱそうだな…、拘束されて身動きが取れなくなるのがいいんだがそれでもやっぱり……。」
小脇を通り抜けるようにスルーする。脅威にならない魔物に構っていたらキリがないからだ。
「私はやっぱり反応がいい子がいいわねぇ、それこそ何考えているのか分からない魔物とかはちょっと無理かも知れないわ。」
「ではこういった魔物はどうですか?愛玩動物っぽくて可愛らしいとも思えますが……。」
そっと足元にいるプリン状の魔物を拾い上げる。
大体人の顔ぐらいある魔物は怯えているのか攻撃はしてこずプルプルと震える様に揺れていた。
「全身を取り込める位大きければいいんだがなぁ…、あっでもこれはこれで可愛いかも知れん、柔らかくて気持ちいいな。」
「あらほんと、ド〇クエに出てきてもおかしくないわねぇ、ぷにぷにしててよく見ると可愛いかも…。」
「このまま連れていきます?害もないですし…、名前とか考えませんか?」
キャッキャッと可愛がる3人の間にずいっと顔面蒼白シスターが入ってくる。
「うぇッ、ごめんちょっと待って……。」
セラが頬を膨らまし、ルナが持ち上げていたプリン状の魔物に目をやりガシッと掴む、そして、
「うッ、オロロ―(ルナの消音魔法)―……。はぁはぁ。」
魔物が吐瀉物を取り込みゆっくりと消化する、消化が終えたのを確認するとセラは掴んでいた手を離しその魔物を思いっきり蹴り飛ばす。
キラーンと宙を舞った魔物は粒子のようになっていった。
そのひどい絵面に初めて魔物に同情をしたかも知れない。
他の2人も言葉を失っていた。
「何ボーっと突っ立ってんのよ、さっさと行くわよ。」
少し回復したセラが何事も無かったかのように歩き出す。
セラの魔物に対して容赦の無さは異常なのだった。
彼女曰く、
「魔物?苦しむ表情とか見せないからつまんないでしょあいつら。キーキー金切り声をあげてうっさいのよねぇ。」
との事でした。
しょんぼりするルナを私とベルでよしよしと撫でてあやす。
「ルナ、もし虐待されたらちゃんと言うんだぞ。」
「そ、そうよ、お姉ちゃんたちが守ってあげる…守れるかしらねぇ…。」
「だ、大丈夫です、まだ何もされていませんので…。」
今後はあるかも知れないという可能性を残した発言については触れなかった。




