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12話 ダークエルフがパーティに加入しました

グレイシア王国の中に【セレフィア星光教会】という施設がある。

 規模としてはそこまで大きい物ではないが人間・エルフ・ドワーフ・獣人・亜人など、知性ある存在すべてが平等に救われるべきであるという教義を持ち、種族の壁を越えて信仰されている。

 信仰の対象は、「天光の母神セレフィア」という女神であり、祝福と愛をもたらす神殿の主である。

 

 セラとノエルは生まれながらセレフィア星光教会が家であり祖父が大司教をしていた。

 祖父の名はクリス=ヴァルティア。教会主の苦労人である。


 エルノアから帰還して約10日が経った。

 ルナが教会に住むことになり、その3日後にベオウルフがセラの紹介により移住した。

 ベオウルフは集落に帰った際の事を簡単に私達へと説明した。

 死ぬ覚悟を決めて族長に村であったことを全て話すと


「何それずるい、儂も行く!」


 とエルノアに先立ち他のオークたちも次々とエルノアへ向かって行ったとのことだった。

 そのままポツンと残された男エルフと雌オーク。

 ベオウルフは雌オークから逆恨みによる殴る蹴る等の暴力を受け、弁解もさせて貰えず逃げる様にグレイシア王国に足を運んだらしい。


「で、2人はどんな感じなの?馴染めてるの?」

「それがねぇ…。」


 セラが険しい表情を見せていると大司教の顔が見えた、かと思うとこちらに気付きずかずかと歩み寄ってくる。


「セラフィーナッ!ちょっとこっちに来なさいッ!」

「あぁ…また来たよクソジジイがよぉ。」

「お前の連れてきたルナを今すぐ止めてきなさい、あの子はもう無理です、ここでの仕事は任せられません。」

「何か問題でもあったのか?」

「おおアネット様、久しいですなぁ、いや何あの子は働こうとするとするだけ空回りしていると申しますか、こちらに被害が応じるといいますか…。」


 話している途中でパリーン、ガシャーンと何かを割る音がする、セラが急いでその場に赴く、私達も続いて音の方に向かうとセラがルナの両頬を片手で掴むように押し潰していた。


「痛だだだだ、スミマセン許して下さい、わざとじゃないんですぅ。」

「分かってる、だからなおさら悪いのよ、もしノエルがお前の割った皿や花瓶で怪我をしたらお前の首をエルノアの村長に産地直送で送り届けてやるからな。」

「ひぃいいいッ!ズビバゼン。」

「とりあえずあんたはもう解雇よ、住まわせてあげるけどもうここで働くことは許さないし、ちゃんと宿代と食事代は払いなさい、後今までの弁償代と。いいわね?」

「そんな殺生なッ…、知らない人がいる所で働ける訳ないじゃないですかッ、うわぁあああん。」


 一体何をしたらそんなことになるのか…。

 大司教に聞くと掃除をする度に花瓶を割り、花壇に水やりをしようとすると何故か魔法を使い水圧で土ごと吹き飛ばしてしまう、炊き出しを手伝うと周りを火の海にしてしまい何をやらせても被害が起きる厄災のような存在らしい。

 何だか連れてきたことの罪悪感が生まれるから被害については聞き流した。


「それに比べてベオウルフ殿は…素晴らしい人材ですぞ。永久就職して欲しい位ですッ。」


 泣きながら片腕を振り上げていた。

 そんなに?確かに手際の良さはあったがそんなにか?


「朝起きれば朝食の香りが漂い一級品の味でもてなしてくれる、掃除もいつの間にか終えておりグラスには曇り一つなく、足りない物や必要な物を察してすぐ様用意してくれる、特に彼が用意して淹れるお茶と御菓子は格別ですぞ。

 他の聖職者達からの信頼もこの短期間で勝ち取っておりますなぁ。ハッハッハッ。」


 そう語る司教の姿は満面の笑みを浮かべ私も微笑みくすっと笑い声が零れる。

 ルナとは雲泥の差ではないか…まあ上手くやれてそうで良かった。

 そう思うと笑い声が次第に大きくなり司教と共に大声で笑う。

 泣き叫ぶ少女の前で笑う二人の姿は傍から見たらDVで訴えられてもおかしくない狂気の絵図だった。

  

 セラの部屋にルナも加わり3人が集まる。ただその場の空気は冷え切っておりとても(かしま)しい様子は無かった。


「うぅ…私が悪いんじゃないんです…こんな社会を築いてしまった世界が悪いんです。」

「けどどうするんだ?働き口を探すにしてもまずその不器用さをだなぁ…。」


 不器用で言い表していいのかは分からないがとりあえず心配をする。

 心配する風を装う、正直面倒というかどうでもいいというか……、連れてきたのは私たちかも知れないが正直これからの事を心配する程の仲でもないしなぁ……、そうこう考えているとセラが口を開く。


「まぁ働き口が無いなら体で払えばいいじゃない。」

「「なっ⁉」」


 体で支払う…それはつまり金銭や物が無い為支払うものが無く自身の身体を使って代価を支払うという事、薄汚い豚のように肥え太った貴族相手に(ひざまず)いて要求に従う……、それがいかなる用件であっても拒否する権限は無く顔を歪ませてでも応じるのだ。

 こいつ…こんなか弱い女の子(自分の150歳以上年上)になんてひどいことを…。

 私の想像を遥か上を行くこの女には時々感服する。

 私はこう見えても王国の姫であるので体を支払うという発想が無かった。

 私の場合どうすれば体で支払うことが出来るのだろうか……。

 この国が一度滅ぶか革命が起きればいいのか?だがそうなれば首を切り落とされてしまうか……うぅむ。


「無理ですぅ、そんなの出来ましぇん、うぇえええん。」

「いいぞルナその意気だ、やはり嫌々奉公する方が興奮するからな…、だがいきなり泣くより最初はムスッと抵抗する様を見せていた方がいいんじゃないか?

 こう線が切れた時にブワっと…いやでも待てよ、最初から従順の方がウケがいいかも知れん、ほう良く調教が行き届いているな…的な。

 そうと決まれば首輪を買いに行くか、何奢ってやる就職祝いの前払いだ。」


 それでは行くか!そう言おうとした私の体がセラに蹴り飛ばされた事により真横に吹き飛び、ガラガラガラと壁が唸りをあげたがその事に2人は一切触れない。


「一体何言ってんのよあんたは、そうじゃなくて冒険者として稼げばいいでしょってことよ。」

「それなら私自信あります、エルノアでも一番の魔法使いでしたし、やっちゃいますよ!どんな敵でもワンパンですっ!」


 壁にめり込んだ私の後ろでビシッビシッっとシャドーボクシングをするルナだった。

 自分の事になると周り一切見えなくなるね君、まあ別にいいけど…。


「ということでよろしくお願いしますアネットさん!」

「…まぁいいか。」


 実際問題パーティが増えることに関してはありがたかった、単純に人数が増えることで戦略も取れる、それに魔法という遠距離から援護してくれるのは心強いしな。

 とはいえこの子に背中を預けて大丈夫なのだろうか、実力もよく分かっていないし…不安だ。

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