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 冒険者ギルドの扉はスイングドアだった。西部劇でしか見たことのないやつだ。しかし、西部劇の様な寂れた感じではなく、アミューズメントパーク様なこじゃれた感じだ。スイングドアって開けてみたかったんだよなぁと、ちょっとワクワクしながら触ってみると、そのままドアをすり抜けて冒険者ギルドの中にまで上半身が入ってしまった。振り返ると閉まったままのスイングドアから私の頭が生えてる状態だった。


「そっか、ゴーストモードだったわ」


 という事は、壁とか床とかすり抜けられるのかな? 早速壁の中に突撃してみたらしっかりすり抜けることが出来た。床の中に頭を突っ込んでみると、床下に頭が入り込んで真っ暗闇だが確かにすり抜けることが出来た。


『遊んでないで、依頼掲示板まで来てください』


 ナビゲーションAIさんの笑い声で我に返ると、依頼掲示板まで移動した。


『掲示板には、納品依頼、討伐依頼、その両方を含む討伐依頼、派遣依頼があります』


 ふむふむなるほど。


『納品依頼は依頼と依頼物が有るだけ、依頼を達成する事が出来ます』


 ということは、この兎肉×10の納品依頼は、持って居れば今すぐ達成可能と。


『鮮度や品質が関係する場合もありますので注意してくださいね』


 鮮度を保持できる保管方法が有れば在庫を抱えるのも有りだなぁ。


『討伐依頼は近くの村やギルドから、周辺に住みついたゴブリンを討伐してほしいとか、街道に出没した盗賊を倒して欲しいとかですね、討伐が確認されたら完了です』


 討伐依頼か、マジックユーザーの私だとパーティーでも組まないと受けられそうもないな。


『討伐納品依頼は、珍しいモンスターを倒して特殊素材を取って来てねって依頼です。討伐と納品がセットですのでちょっと大変です。例えば特殊個体の狼の毛皮をとってくる場合だと、毛皮に傷をつけないように倒して綺麗に剥ぎ取るとか、そういう気配りが必要になります』


 その分報酬が高いと、なるほどなぁ。


『派遣依頼はそれ意外の依頼全版です。迷子の猫を探して欲しいとか、商隊の護衛募集とかお店の店員募集とかです』


 雑用からアルバイトに護衛と幅広い依頼があるみたいだ。


「納品依頼は早い者勝ち、討伐依頼は受領からの成功報酬、討伐納品依頼は出来高払い、依頼によると」

『それであってます。ランクはあくまで目安ですが討伐依頼の場合ですと、実績と信用の具合で依頼を受けられない場合がございますので、ご了承ください』


 まぁそりゃそうだ。


『というのも、このゲームは生活するのにお金が必要になるので、稼ぐ手段はあったほうがいいですよ。納品や依頼を受ける場合はそちらの受付カウンターでやってます』


 ナビゲーションAIさんが手をかざした先に銀行窓口のように並ぶ受付嬢が座っていた。綺麗所が並んでいるあたり、どこの世の中も変わらないらしい。1人マッチョなおっさんがいるのは用心棒を兼ねているのだろうか?


『ほらほら、これなんかどうです? 冒険者ギルドの受付嬢募集とか、キャノーラさんだったら売れっ子になれますよ』


 そういえば、今の私の姿は女のエルフだったわ。


「うへぇ、そういうのはちょっと。何か技能成長が見込める仕事がいいかなぁ」

『まぁ確かに、受付嬢ですと礼儀作法(受付嬢)とコネ(冒険者ギルド)コネ(冒険者)位ですからねぇ』


 それにキャノーラの姿だと男が寄ってくるんだろう? それは流石にキッツイわ。派遣依頼を眺めていると本当に雑多な仕事がたくさんある。猫探しに受付嬢、商隊護衛に門番や衛兵なんてものもある。ドブさらい、下水道の調査、測量依頼、農場の手伝い、お針子募集、コック、etc etc。


「ハローワークかな?」

『冒険者になって稼ぐと言っても、ある程度戦闘レベルが上がらないとリスクが高いだけ儲かりませんですからねぇ、ハローワークといえば冒険パーティーのマッチングも冒険者ギルドでやってますけど……今はサービス開始第一陣の固定パーティが機能し始めたばかりですので、魔法使い枠の募集は全然有りませんねぇ」

「第二陣が来るまでは、パーティ募集も無さそうですか」

『第二陣が来るのがリアル17日後になります』


 リアル17日後ということは、ゲーム内日数だと62日後ということか、結構あるなぁ。それまでは技能スキルを上げられるアルバイトでもしているかな。

 派遣依頼から気になった依頼票を手に取ろうとして、手が依頼票をすり抜けた。そういえばまだゴーストモードのまんまだったわ。


『あ、そろそろチュートリアルを終わっときます?』

「そうですね、ゲームを本格的に遊ぼうかと思います」

『それでは、チュートリアルを完了します、長い間ありがとうございました。是非楽しんでいってくださいね』


 そういって、チュートリアルAIさんが姿を消すと、現実世界に放り出されたような、全身に重力がかかったような、急に立ち上がったかのような立ちくらみがした。


 周りの人たちが、突然現れた私に驚いていたり、ギルド職員の人は慣れた顔をしていたり、様々な表情をしていた。改めて気になった依頼票を手に取ると、受付カウンターへ私は歩き出したのだった。

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