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「じゃぁこのマスクを着けてみてほしい」
大きなミントによく似た葉っぱを手に乗せてパチンと叩くと、爽やかな植物の匂いが広がった。それをマスクの布に挟んでトシ君とミーナちゃんに差し出した。
「低レベルだが浄化の効果が2時間続く、交換用の葉も渡しておくよ」
マスクとゴーグルを装備したトシ君はツンツン頭をバンダナで巻くことで、ファンタジー物と言うよりスチームパンクの様な姿になって、ちょっとカッコよかった。ミーナちゃんはピンク色の花柄マスクを着けて、何とも女の子って感じだ。これで臭いと汚染された空気の問題も改善できたはずだ。
「よし、じゃぁ行こうぜ」
音頭を取るトシ君の後に続いてミーナちゃんと並んで下水道へと続く工事用搬入路門の様な入口へと入っていった。
トシ君の名前はキャラクター名はアルス、ビルドは近接アタッカーの前衛職。リアル友達のミーナちゃんがトシちゃんとしか呼ばないので諦めたようだ、私も便乗してトシ君と呼んでいる。装備はツンツン頭にバンダナを巻いてハードレザーアーマーを着ている。獲物は両手剣だが、狭い下水道用にショートソードを握っていた。
「可燃性のガスが溜まってる所があってさ、松明を持っていくと爆発して危ないんだよね」
「危ないってレベルじゃない」
「吹き飛ばされて汚水まみれ、ほんと最悪だった」
ウィルオーウィスプを各自の頭の上と5メートル先に一つ先行させて浮かべておく。火気厳禁の地下道で光源を確保できるウィルオーウィスプは意外と優秀だった。
「浄化の魔法が使えるから任せてほしい」
「助かる~」
隣を歩くミーナちゃんは、ビルドは盗賊アタッカーの遊撃職。トシ君と幼馴染だそうだ、装備はソフトレザーアーマーにダガー二本を腰に差し、スリングショットに石を握っていた。実に女の子女の子していて見ていて微笑ましい。
「少し待ってほしい」
そういえば新技を身に着けていたのだ、試してみよう。頭に?マークを浮かべた二人。右腕にトシ君を左手にミーナちゃん、心の中で今日の冒険が無事終わりますように、そう願いを込めて二人を抱きしめた。
「わ!」
「ちょっと!」
いきなり物理距離が近すぎたかもしれないが、孫が居たらこの位の歳だったのかもしれないと思うと、自然に体が動いた。驚いた二人が離れようと身じろぎする前にふわりと二人を柔らかい光が包んだ。
「うん、ちゃんと出来たみたいだ、ステータスウィンドウを確認してみてくれないか」
マスク越しでも分るくらい顔が真っ赤になったトシ君を胡乱な目で見るミーナちゃん、どうしたんだろう? 二人は見つめる虚空を指でツイツイと動かすと、びっくりした顔でこちらを見てきた。
「わ! キャノーラの祝福って付いてるんですけど、何ですこれ?」
「うん、私も正直よくわからないんだけど、たぶん良い事なんだと思うからやってみたんだ」
女将さんの赤ちゃんを抱かせてもらった時、この子に幸せになってほしいという思いが溢れて額にキスをしたら、神聖魔法Lv1を取得したらしい。だが使える魔法が「祝福」しか無くて、説明文にも「願いを込めて相手に触れる事で祝福を授けることが出来る」としか書いていなかった。MPが減るわけでもないし、子供と言うのは無条件に可愛いものだ、別にいいだろう。
「体力と病気抵抗と経験値に+10%ボーナスが付いてる」
「私も~、あ、防御力と回避力にも10%付いてるよ、効果時間は23:59だって」
防御寄りの効果が付くようだ、赤ちゃんに祝福しても効果を聞くわけにもいかなかったから、新たな発見だったな。効果時間は24時間続くようだし、今朝も赤ちゃんを光らせてきてよかった、抱くたびに泣きそうになるのは困ったものだが。
「さあ、これで出来る準備は思いつく限りやったと思う、冒険に行こう」
「おー!」
「うん!」
トシ君の後に続いて、ミーナちゃんと並んで下水道の暗がりの中を、歩き出したのだった。




