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「ん~どうしたものかなぁ」
正直に言って困っている。初めての冒険なので肩慣らしのつもりで納品依頼用の兎肉を狩りに行ってみたのだが、第二陣が参入したタイミングで兎の狩場はとても混雑していた。まぁ私もその一人なわけだが。
仕留めた兎は一匹、今日の稼ぎである。これじゃあ貯蓄どころか宿代だけで完全に赤字だ。
「冒険者って厳しい職業だなぁ」
かといって、ウェイトレスに戻るのも何か違う。女将さんにもカミリアちゃんにも冒険者になると言った手前、もうすこし工夫するところを探してみようと思う。
冒険者ギルドで解体所の隅を貸してもらい一匹だけの兎を捌く。
「筋は悪くねぇな」
「まぁ構造は分かるんでね」
解体スキルを取るための作業なわけだけど、解剖学のスキルである程度は分かる、手つきは拙いけれど。解体所のおじさんも暇なのか付きっきりで指導してくれる。まぁオッサンばっかりの職場に女の子が来たら、おじさんたちが寄ってくるのはどんな職場でも同じだな、おじさんも女の子の前で良いカッコがしたいのだ、分からいでもない。まぁその女の子が私だってのがなんとも面映ゆいものである。
捌き終わった兎から500gの肉と骨と内臓と皮が手に入った。
「要らないもんはこっちで引き取るがどうする?」
「じゃぁ肉以外をお願いします、骨と内臓は用途があるんですか?」
「まぁ骨と内臓は堆肥場で肥料になるかな、皮は塩漬けにしてから纏めて鞣し場に降ろすよ」
「そうなんですか~」
皮の代金で100Gをもらった。スキルを確認してみると解体Lv1が生えていた。流石知力特化エルフ、スキル上昇率が高いぜ。
「おかげで解体が出来るようになりました、ありがとうございます」
「そうか、冒険者なら解体所の利用は無料だ、また来いよ」
お礼を言っておじさんと別れてから、冒険者ギルドの依頼掲示板とにらめっこをする。宿代が朝ごはん込みで8000G、納品依頼の兎肉×10で5000G、今日の稼ぎは肉の現物500Gと皮の100G、ため息が出そうだ。まぁ貯金で1ヶ月は凌げるとして、収支がマイナスになるのは精神衛生にもよろしくない。
出来そうな依頼も特になさそうだし、パーティー募集にも魔法使い枠はあまりない。あるにはあるのだが、こう、ね。このゲームは本来の性別とキャラクターの性別に差異があると、大変な事になってしまう可能性がある。実際私がとんでもないことになっている。そしてVRMMOのプレイヤー性別比は男性8・女性2なのだそうな。
エルフ・女・魔法職、ファンタジー物語の主人公のパートナーに最適じゃないですか? 魔法使いを募集しているパーティーの内容を受付嬢さんに教えていただいたのだが、見事に男ばっかりだった。導き出される答えは、オタサーの姫、もしくはリーダーの彼女枠。
今日一日で魔法使いソロ狩りの限界を感じたからパーティーに参加したいが、パーティーに参加したら参加したで、自分が地雷化してしまう未来が見えてしまう。やっぱりウェイトレスをしながら魔法スキルを上げていく町人プレイが最適なのかもしれない。
そんな事を考えながら冒険者掲示板を眺めていると、二人の冒険者が何か言い合いをしているのが目についた。
「トシちゃん、やっぱり諦めようよ」
「何か方法があるはずなんだ、それに」
若い15歳くらいの二人だった、トシちゃんと呼ばれた一人はつんつん頭の男の子、背中に大きな剣を背負っている。もう一人は女の子、軽装で腰にナイフを二本差している。
言い合っている内容を盗み聞きしていると、どうも下水道調査の依頼を受けたものの環境の厳しさから依頼を破棄しようとしているのだが、初めて受けた依頼を黒星で飾ることに難色を示している様である。
ほほう、下水道調査とな。暗い汚い臭い危険の4K職場とな。ふむふむ、暗いのはウィルオーウィスプを多重召喚すれば何とかなるな、汚いは家政スキルの相乗効果が乗った浄化の魔法で何とかなる、臭いはエルフ知識と草木知識でハーブマスクが作れるか? 危険はまぁ初心者ダンジョンらしい下水道なら戦士・盗賊・魔法使いのパーティーなら、初心者でも何とかなるだろう。
「その依頼、私も一つ噛ませてもらえないだろうか」
私は思い切って、その二人に声をかけてみる事にした。




