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 ヘリポートへ降りるとそこは高級ホテルの様な場所だった。


 セールノーアーコロジーの入町管理局でその日は一泊すると、翌日から精密検査と健康診断と防疫検査のフルコースを受けた。年一の人間ドックで着慣れた病衣をこの姿で着る事になるとはなぁ。

 なんでもこのアーコロジーは宇宙コロニーや移民船のための実験施設の側面もあると、入管の人が誇らしげに教えてくれた。まぁ限られたスペースに限られた資源に家族ではない限られた人間関係で固定化されるとなると、色々大変なんだろうなぁと思いながら精神鑑定なんかも受けていた。


 言われたことを言われた通りにこなしていたら、二日目は夜になっていた。すべてが終わってやっと夕食にありついた時には、丸二日ぶりの食事だった。まぁ点滴で栄養補給はしてたけど、それは流石に味気なさすぎただろう。


「美味しいよう」

「それはよかった」


 そう言ってセルノー社の担当の人と二人で夕食を食べていた。そういえば担当の人ずっといるな、アテンドも兼任してたのだろうか?


「ずっと付き添いしていただいて、大変だったでしょう?」

「いえいえ、待っていただけです、こういう役得もあるので」


 そう言ってワイングラスを掲げて見せる担当さんの姿は妙に様になっていた。仕事でお酒が飲めるなんて確かに役得だよな。でも仕事相手とこれだけ長い事一緒に居たら息が詰まらないだろうか?


「こんな美しい女性とディナーを頂けるのですから」

「ブォッフォ」


 驚きにむせそうになるのをぐっと抑え込んだ。


「そのドレス、とても似合っていますよ。選んだ甲斐があった」


 そう言って私の手を取ろうとする担当さんの手を避け、さりげなく手に取ったグラスは空っぽになっていた。


「美味しいカクテルが有るんですよ」


 気を利かせた風で、ウェイターさんが持ってきたお洒落な、アイスティーの様な(ロングアイランド・アイスティー)グラス。心の中でため息を一つついて席を立つ。クルリと一回転ターンを決めると、ふわりとドレスの裾が舞い上がった。


「ドレスをありがとうございます、今日は疲れたので、もう休ませていただきますね」

「あ、っちょっと」

「見た目通りの歳ではないんですよ」


 そう言って私は、自分の長い耳をピンピンとはじいて見せた。


「レディキラーを知り合い程度の相手に振る舞われたら、心のシャッターを落としますよ」

「モテる自信はあったんですけど」


 そう言って自嘲気味に笑う担当さん、そんな表情でさえ様になっている。こりゃ確かにモテるわ。こんな年の功みたいな事を言っているが、こういった知識はVRMMO内のウェイトレス生活で手に入れた知識やあしらい方なんだよな、人生何が役に立つか分からないものだ。このスケスケレースのドレスだって女将さんが肌色面積多めのお仕着せを着せてくれた経験が無ければ、恥ずかしくて人前に出られなかっただろう、なれって怖いな。


「まじめな話をしますと」


 そう言って姿勢を正した担当さんのは、ナンパ男からやり手の若手社長的雰囲気へ一変させていた。


「貴方と言う存在は、弊社にとって理想的存在過ぎるのです。エルフ因子のここまでの適合例は類例を見ない、しかも性転換までしておきながら、生殖能力を維持していらっしゃる」


 ここまでアレな事を真顔で言い切った担当さんは、一息ためを作ると言った。


「是非、あなたが欲しい」

「解釈違いです、ムリです御免なさいサヨナラ」


 その流れでそういうこと言うと、そういう事だよね? 無理無理無理絶対無理。第一この姿は君の姿なんだから、その格好でほかの男となんか絶対ダメ、嫌だ、絶対に許せない。あれでも姿が似ているだけで私だから問題なのか? いや大問題だよ問題しか無いよ。だってそれってそういう事するって事でしょう?


 ヤダー!


 勢いでレストランから駆け出した私は、息切れするまで走り(すぐ息切れした)、後ろについてきていたガードマン的な女性に連れられて、本日の宿へと帰ったのであった。衝撃的過ぎたのと人間ドックで疲れたのでシャワーだけ浴びてすぐに寝た。


 翌朝、ガードマン的な女性が身の回りの世話をしてくれるのを良いことに、相談したいから対応窓口を紹介してほしいとお願いしたら、担当さんが出てきたのは何かの罠だろうか?

 ああ、早くVRMMOの中に帰りたい。


 私は心の底からそう思った。 

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