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後日(4)

ラスボスを倒した次の日の話。


王都新聞を含む十を超える新聞各社の一面にはこんな記事が掲載された。


『勇者パーティ快挙! ラスボスを撃破』

『勇者パーティがついに! 平和戻る』

『ラスボス散る! 最後に見せた謎の微笑み』


こんな感じで、新聞社はこぞって俺たちのことを綴った。ラスボスを倒すという体験を終えて、緊張の糸が解けたようにぐうすか眠ったーーー僧侶とは違い、一晩中俺たちと飲み明かした魔法使いが、早朝の爽やかな陽気とともに目を覚ました。

馴染みの酒屋のマスターも、飲みのはじめは『お代なんて結構ですから飲んで飲みまくってください』と意気込んで俺たちとビールを三杯ほど流し込んだ......ところで、眠りこけてしまった。それに続くように戦士たちも木で作られた床に寝転がり、いびきをかきはじめてしまった。

魔法使いは、大の酒飲みである。なので、言わずもがな俺も彼女との飲みに朝まで付き合うこととなったわけだが......


「み、見て。勇者〜......私たちの活躍が記事になってるわ〜」

「本当か? どれどれ、僧侶の情けない姿も記事になってるかな」


魔法使いはすでにべろんべろんになっていた。そりゃそうか。累計十五杯くらいは飲んでる。


ぐお〜という大きないびきを響かせる戦士たちの横で、俺たちは新聞に目を通すことにした......その時だった。

突然、貸切にしているはずの酒屋の扉が大きな音を立てて開け放たれたのだ。扉には最高クラスに匹敵する鍵魔法をかけてあるので、これを無理やりこじ開けられるのは......


「大変です勇者ッ!」

「出た!」

「出たとはなんですかッ!」


国内随一の魔法の実力を持つ僧侶だ。今日はしっかり下半身のアーマーを身につけている。一時はポリゴン単位での衣服消失というバグが発生した僧侶。ラスボスの城から撤退する際には苦労したものだ。

何せ、メディアのカメラが迫ってきて俺たちの姿をここぞとばかりに写そうとするので、ほぼ裸の状態になってしまった僧侶は残ったわずかな魔力を消費して《ドラッグ・スター》という魔法を発動。ものすごいスピードで動き、カメラのフレーム数では捉えきれない速度で家まで直帰してしまったのだ。


「それより大変なんです!」


僧侶は寝癖のついたままの姿で俺に『これを......』と一枚の紙を差し出してきた。俺は寝ぼけた目を擦りながら受け取る。


「何だこれは......」


それは、小さな手紙のようなもので、律儀に宛先が書いてある。何だよ僧侶。まさかお前......


「ラヴ・レツゥーでも貰ったってのか? 良かったじゃないか。彼女いない歴すなわち年齢のお前にこんな日が来るなんて」

「キモいな発音! いやそうじゃなくて......」


騒ぎを聞きつけた魔法使いが、俺の肩に両腕をもたれさせて僧侶の持ってきた手紙を見つめる。


「ねえ何それもしかしてラヴ・レツゥ〜? 私にも見せなさいよ〜」

「うわまた沢山飲みましたね魔法使い......焼酎ですか今回は」


その手紙に書かれていた内容とは......


《ラスボス撃破、おめでとう》という文字が、まず一行目に書かれている。そして......


「何だこれ。いたずらか? っていうか誰が......」

「見てください勇者。にわかには信じられませんが、この手紙を書いた人物はラスボスのようです。ほら、ここに『from あなたの......あなただけのラスボス』って書いてあるでしょう」

「本当だ......なんか気持ち悪い」

「勇者は私のよ〜......」

「たちの悪いいたずらだと思うけどな......ん? 今なんて言った? 魔法使い」

「何も言ってないわ」

「そうか」


おそらく、勇者パーティがラスボスを撃破したことを聞きつけたその辺のちびっ子がこんなものを僧侶の家へ寄越したのだろう。まあ一応読んでおくか。


「どれどれ」


《勇者よ。私は知っている》


「ちょっと俺だけで読んでもいいか?」

「いいわよ〜」

「どうしたんですか?」


いやちょっと、嫌な予感がね。なんか嫌な予感がね。

俺は、酒場のお手洗いへと直行し、鍵を閉めた。

あらためて、手紙を読む。


「どれどれ」


《お前が昨日、お手洗いの後にお尻を拭かなかったことを》


これラスボスだ。これラスボスだよこれ。間違いないじゃんか。

あっぶね。皆に見られてたらーーー多分戯言としてとってくれるだろうけどーーーあらぬ誤解を産んでしまう。


《これからはきちんとお尻を拭いてほしいので、世界中のトイレットペーパーを二倍巻きから一倍巻きに変更しておいた》


「何だそれ」


ふと横を見ると、酒場のトイレに備えられているペーパーも一倍巻きになっていた。


《お前にもっと嫌がらせをしたかったのだが、死の間際だったのでこれが精一杯だった》


そんなことが書いてある手紙を読み終え、俺はトイレを後にした。二人が俺を見つめてくる。


「変ないたずられぇ〜......僧侶の家に届いたのも謎だしぃ〜」

「そうですよ勇者。これ大丈夫なんですか? 放っておいて」


ふと、僧侶が開け放った扉から風が入ってきた。

ラスボスを倒したあとの人生......さまざまなことが待ち受けているだろう。でも、俺はーーー


「一倍巻きでも、愛すよ」

「ふぁ......」

「はい?」

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