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《"魔法神・マジリーノ"》

 私は、過去の記憶を探る。数百年前の何かの祭典の帰り、魔法神がどの門に入って行ったか。たしか上の方にあった気がする。私は上へ飛んだ。


 魔法神の門は、木の幹に紫とピンクを中心とした花が飾られていた気がする。私はその特徴を探す。すると、そこそこ上空に発見した。

 右横にベルがあったので鳴らしてみる。

 チリンチリ〜ン、と耳当たりの良い音がすると、


  「はぁい!どうぞ〜!」


 と、中から声がした。

 私は門の中へ入る。中には一人の女がいた。女は毛先が紫色の茶髪、インナーカラーは薄いピンクという奇抜な髪をしている。

 辺りは開きっぱなしの書物や、謎の光った液体が入った試験管や丸底フラスコが転がっている。壁一面をメモ書きが覆っていて、狭苦しい印象を受ける。

 女はフラスコの一つを観察しながら、紙に何かを記録している。少しその場で待っていると、記録をし終えたようで此方に向き直りながら女は喋り始めた。


「はいはーい、今日は誰かな〜?…って、リリリ、リヴ様ぁ!?なんでぇ!?!?あ、ど、どんなご用でございましょうか…?」


 驚いているのか、敬語が苦手なのか、女は異様に堅苦しい言葉遣いだ。


  「"魔法神・マジリーノ"…?」


 私が聞くと女はピシッと背を正して言った。


  「い、いかにもうちが、あ、違う、わ、私が"魔法神・マジリーノ"ですっ!!」


 ものすごく句読点が多い気がする。だが、気にせず話を進める。


「私、"お忍び"がしたくて…。でもアードゥーンに"魔法神・マジリーノ"から勉強してきなさいって言われたんだけど…」


「あ、そうなんですか。で、でもリヴ様がお勉強する事あります?人生、いや、神生の大先輩ですけど。」


 マジリーノはもう反っているのではないかという程姿勢を正している。苦しそう。


「なんか、人間の倫理観がうんたらとか、そんな感じ。」

「なるほど。」

「…そんなにかしこまらなくていいよ。」

「え、で、でも、死神様じゃないですか…。最古の神様じゃないですか…。」


 異様に堅苦しかったのはそういうことか。別に身分や年月差は気にしないし、同じ主神十柱なんだから同僚みたいなものだろう。だが、身分差を気にしているならそれを逆手に取ってやろうではないか。


「じゃあ、死神様命令。堅苦しくしないで。正直めんどくさい。」

「め、めんどくさい…ですか…。…分かりました!んじゃ、いつものうちでいきますね!!」


 マジリーノは瞬時にピシッと正していた姿勢を軽く崩し、顔を傾けニコッと笑っている。手を横向きにして敬礼のポーズをとりながら。

 切り替え早っ、と思ったのは言うまでもない。


「散らかってるんですけど、適当なところに座ってください!今お茶用意しますね!"お忍び"で美味しいもの買い占めてきたんです!」


 マジリーノはそう言って奥に走って行った。マジリーノの動きと元気さは客人に慣れている人のそれだ。

 少しするとマジリーノが二杯のお茶、おそらく紅茶を持ってきた。マジリーノは、私の前と彼女自身の前にそれを置いて座った。


「んじゃ、まずはリヴ様。人間にとって生物の命はとても大切なものです。無闇に奪ったり傷つけてはいけません。」

「分かった。私は植物という命を踏んで傷つけないように常に浮いて移動する。」

「ん、ん〜…。なんか違う、そういうことじゃない…。」


 マジリーノは困ったように笑っている。どうやら何か間違えていたらしい。私は考える。


「あ、なるほど。分かった。」

「お?なんですか?」

「私は、動物と植物の命のため、獣神と花神を封印する。」

「封印しないで!?」

「…?じゃあ、つまりどーゆーこと?」

「え、えーとですねぇ…」


 というやりとりを小一時間程した。とりあえず人間ができることの範囲で命を大切にすればいいらしい。


「あ、でもリヴ様。人間界に行っても神様のお仕事はちゃんとしてくださいね!」

「命を大切にしながら人の命を奪えってこと?」

「ま、まあ、そういう事になりますね。」

「ふーん…」


 死神のお忍びはなんて面倒なのだろう。

 というか忘れかけていたが、私が"お忍び"にいく理由は死神の仕事のため。人の命を奪う仕事のため命を大切にする。皮肉なものだ。


  「というか、もうすぐで祭典があるのに人間界に行くんですね!あ、もしかして人間の祭典に参加したいから行くんですか?」

「…祭典…?」

「え、リヴ様忘れてたんですか…。今年は五百年に一度の"主神の祭典"ですよ!」

「…もうそんな年なの…。…めんど…。」

「『…めんど…。』じゃないです!主神十柱であるリヴ様のお祭りでもあるんですからね!」


 どうやら私が最後に森から出た数百年前のなにかの祭典はこのことだったらしい。"主神の祭典"。実に面倒な祭典だ。主神の一柱である私は城に行って儀式をしないといけない。


「まあ、それは後々なんとかするよ。」


 "後々なんとかする"。後々どうやってサボるか考えよう。最悪、死神様権限を使えば大体どうにでもなる。


 まずは、さっさと"お忍び"して。さっさとあの変な人のことを解決して。さっさとアードゥーンに捕まらないうちに森へ帰るのが最優先だ。




《キャラ紹介》

死神・リヴルーフェ

→金髪オッドアイ無気力女死神で最古の神とかいう設定盛りすぎな神様。愛称はリヴやリヴィ。主神十柱の一柱。女性の体で生活している。


創造神・アードゥーン

→オネエ口調の男好き。男の体ならなんでもタイプ。最古の神。愛称はアーディ。主神十柱の一柱。男性の体で生活している。


魔法神・マジリーノ

→茶髪で毛先に向かって紫のグラデーション、ピンクのインナーカラー。ギャルっぽい。世話焼き。愛称はマリー。主神十柱の一柱。女性の体で生活している。

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