《創造神と他の神たち》
「あらら〜、久しぶりねぇ。アタシ、あなたにずっと会いたかったから嬉しいわぁ。
_________"リヴルーフェ"」
「あら、私は会いたくなかったわよ。
_________"アードゥーン"」
私は気持ち悪いねっとりした口調で喋る"男"に返事をした。
この気持ち悪いのが、"創造神・アードゥーン"。私と同じ、最古の神。
神々には"お忍び"というものがある。
よく人間界の貴族や王族が身分を隠して旅行したりするものと同じだ。神が正体を隠し、人間として人間界で生活すること。
大体の神々は、人間界で自分には今どのようなイメージがあるか。また、最近の人間はどんなことをしていたり、好んでいたりするのか。などを定期的に見に行く。
私が今からするのも"お忍び"だ。普通の神とは目的が少し異なるが。
"お忍び"をするには創造神の許しがいる。
どの神もだ。もちろん私も。だから本当に不本意だがこいつに会いにこなくてはならなかった。
「アードゥーン、私、"お忍び"してくるわ」
私はそう言って城を後にしようとした。
だが、背後からの声に引き止められた。
「リヴ、アナタ"お忍び"しちゃダメよぉ。」
「……………は?」
予想外だ。こいつのことだから「リヴもやっと人間界に興味が出たのねぇ!アタシ、嬉しいわよぉ」とか言ってすぐにでも行かせると思っていた。私が驚き、固まっているとあいつが口を開いた。
「だってアナタ、人間界のこと全然知らないじゃなぁい。ただでさえ死神なんだから人間と倫理観も違うじゃない?そのまま行ったら、すぐ人じゃないってバレるわよぉ?」
なるほど。理由はわかったが、始めからもう少し分かりやすく言ってほしかった。それとこの気色悪い口調をやめてほしい。
「…じゃあどうすればいいのよ」
私は顔だけ軽く後ろを向き、アードゥーンを睨みつける。
「あらあらぁ、そんなにコワイ顔しなくていいじゃなぁい。アタシたち"誕生以来"の大親友でしょう?」
「勘違いしないで。私は貴方のこと他人以下と思ったことしかないわ。そしてその気色悪い喋り方をいい加減やめなさい、と"誕生以来"言い続けているのだけれど。」
勝手に私との関係を捏造しないでほしい。まあ、このやりとりは慣れているのだが。
こいつはいつになったら私の言葉を理解するのだろう。疑問である。
「まあ!アナタだってそのきっつい口調、アタシにだけでしょう!!…あっ!もしかしてアタシのことが好きだからツンデレしちゃうのね!!」
「私は、ここまで拒絶しているのに、なんておめでたい頭なのかしら。尊敬するわ」
事実、私がこんな口調なのはこいつにだけだ。私はこの口調が一番、親しみを込めていない口調だと考えているからだ。
普段の私はもう少し、親しみやすいとは思う。多分。
私の嫌味たっぷりな返事にアードゥーンは気持ち悪い微笑みを崩さずに言う。
「話がそれちゃったわね。てことでリヴ、"お忍び"がしたかったら、そうね〜。最近"お忍び"から帰ってきたマリジーノちゃんのところに行って人間界について学んできなさい!」
「…マリジーノって誰だったかしら?」
「うふふぅ〜、主神が分からないって流石にヤバくないかしら。やっぱり"お忍び"はなしにしようかしら。」
「あ?」
「冗談よ、もう〜!"魔法神・マジリーノ"ちゃんよ。」
こいつと会うといつもこう言うやりとりをする羽目になる。このやりとりが面倒臭いのも、私がこいつと会いたくない理由の一つだ。だが、やっぱり一番の理由は…。
「そういえば聞いてよぉ!アタシこの間、とっっっってもいいオトコ見つけたのよぉ!」
こいつが一応男でありながら男を狙っているところだ。
それだけならまだ良かった。ただのこいつの個性なだけだった。だが。
「だから"いつも通り"城に呼んで、"いつも通り"一緒に寝たのよぉ!もうその子ほんとに可愛くてねぇ!頑張ってアタシから逃げようとして暴れたのだけれど無理矢理ベッドに押し付けて…!いい夜だったわぁ…。」
こいつが目につく男の神全てに手を出すことである。
おかげで「創造神様がダメなら同じ最古の神の死神様に!」と、仕事で忙しい私に創造神をなんとかしてほしいと相談に来る奴がいるのだ。いい迷惑だ。
神には明確な性別はなく、体は男の姿にも女の姿にもなれる。が、あいつがあんなことをしているのだ。男にしか興味がない創造神から逃げるため、と神は九割以上女だ。
まあ、他の神のことなんて興味ないから別にどうでもいいが。
アードゥーンの話を無視し、城の門に向かって進む。無駄にでかい城の、無駄に重い門を開く。
そうして私。"死神・リヴルーフェ"は、"魔法神・マジリーノ"のところへ向かう事になった。
【おさらい】
主神十柱は創造神、死神、獣神、花神、魔法神、時神、心想神、色神、音神、霊神です。
【よくわからんところの解説】
リヴ様は最果ての森から出てきてもやろうと思えばお仕事できます。最果ての森と遠隔で視界を繋いで、分身体に食べさせたりできます。
でも、ものぐさ死神リヴ様は遠隔で分身体を使うのと自分で動くのを比べた時、前身の方がめんどくさく感じたっぽいです。
本人曰く「私が忙しそーじゃなかったら、絶対アードゥーンが私のこと森から連れ出して、パーティーとかめちゃくちゃしてくるっしょ。マジ無理めんどい。」だそう。
変な"源"は重点的に様子を見て食べないようにしています。
次回はリヴ様が人間界について魔法神様に聞きに行きます。リヴ様、勉強、頑張ってね。