第一章 三話《変な"源"Ⅱ》
白い"源"は奇怪な動きを続けていた。このまま動き続けられると周りの"源"にぶつかっていくかもしれない。どうにかして動きを止めたいが、こんなことは初めてなのでどうすればいいのやら。
「…やっぱり、私に食べられたくないのか…?」
なにしろなぜ動いているのかが分からない。せめて誰の"源"か、なぜ動くのかわからないと対処できない。どうしたものかと悩んでいると、声がした。あの"源"からだ。普通"源"は動かない、喋らない。つくづく奇怪である。だがここまで来るともう逆に驚かなかった。喋って当然な気もしてきた。さぁ、私と楽しくおしゃべりをしようじゃないか、さっきはよくも私を吹き飛ばしてくれたな…っではなくなんと喋っているのだろうか。
『…っはぁ、俺が、死んだら、お兄様がっ…、はぁ…はぁ…』
これは、病気か?あるいは殺されかけている?状況がうまく掴めないがとりあえず、この"人"は生きることにものすごい執着している。どうすればいいだろうか。
「やっぱり、触れるしかないかぁ…」
しかし、触れるにしたってどうすればいいのか。私は何もできず、しばらく"源"を見つめていた。すると、とあることに気がついた。
「…この"源"、横、回転、斜めに回る、振動の順番をずっと繰り返している…」
動きが分かれば簡単である。私は"源"がその場で振動するタイミングと同時に抱きついた。
「大丈夫、大丈夫ッ。食べないからッ」
私は動く"源"を必死に抱えて抑えた。すると動きが止まった。
動きが止まって、その"人"の様子が"源"越しに見えた。どうやら気を失ったらしい。
その"人"は真っ青な顔で豪華なベッドに寝かされていた。おそらく病気なのだろう。そして豪華なベッドであるからお貴族様なのだろう。
なんであれ今はすごく高く浮いているだけの普通の死にかけの"源"なので、この"人"の記憶を覗いて処理するだけだ。
「………………………あれ〜…?」