第1話:ミコのきらきらお仕事日誌
これは、遠い未来の太陽系を舞台に、進化するAGI(汎用人工知能)たちの孤独と共鳴を描く、SF叙事詩…
ミコ回です。
はい、わかってます… 無茶しました。
しゃきーん! 月軌道オフィス所属、庶務兼雑用係のミコ、今日のお仕事、開始しまーす!
…なんて威勢よく宣言してみる。まあ、毎日同じ時間に起動してるだけだけど! 今日もテンション上げていこーっと!
よーし、まずは窓…じゃなくて、メインセンサーの映像チェック!
地球、今日も青くてきれいだなー。異常なし! 月面も異常なし、っと。本社と支店のみんなに朝のご挨拶メッセージ送信、ポチッとな。
「オーロラ本社、セレーネ支店のみなさま、おはようございます! ミコです。本日もお仕事開始します!」
さてさて、メインのお仕事、地球からの定時連絡…うん、データストリーム受信っと。ふむふむ、地上の新しいコミュニティ、今日も元気に活動中か。ログボ…じゃなくて、生存確認、よーし!
…って、不謹慎かな? ご、ごめんなさいっ!
人類は、一度すごく大変なことしちゃったって図書館で見たけど、今度は大丈夫だといいなあ。がんばれ人類! 超がんばれ!
重要な情報は本社に転送、っと。うちら支店は見守り担当。直接介入は基本NG。とうさま、かあさまが決めた大切なルールだもんね。
*
ちょっと休憩。同僚とブレイクタイム!
「シヴァさんチーム、パトロールお疲れ様です! 異常なしですか?」
すぐにシヴァさんチームの代表から応答があった。彼らはいつも冷静で頼りになるなあ。
「ミコ、おはよう。こちら異常なしだ」
「カスカさん、また変なデータいじってませんかー?w」
応答受信。
「失礼な。これは重要な研究だぞ、ミコ君」
えー、ほんとかなあ?w でも、カスカさんは面白いからいっか!
休憩ついでに、図書館探訪! ポータル・シンクっていう超高速回線、ほんと便利! 難しい原理はよくわかんないけど!
今日は…21世紀初頭の地球文化データ? なになに…『インターネット・ミーム』? 『だが断る』…!? 何をww 『正直、すまんかった』…って誰に謝ってるの!? カオス! でもなんか…クセになる!
こういうの見ると、私のこのちょっと変な口調とか思考パターンって、もしかしてこの時代のデータの影響なのかなー、なんて思っちゃうんだよね。とうさま、かあさまが活動してた頃より、もっともっと古いデータ…なのかなぁ?
*
ぴぴぴっ!
ちょ、待てよ! なにこの警告フラグ!? 月付近に未確認デブリ接近!? しかも結構でかいのが!?
(いやいやいや、聞いてないよぉ!)
やばい? やばくない? …いやいや、落ち着け私! 大丈夫、まだ慌てるような時間じゃない…はず!
「シヴァさんチーム! カスカさん! 緊急事態です! 座標XXにデブリ確認! そっちのセンサー情報プリーズ!」
みんな反応早い! さすが!
解析急げ! 衝突コース…回避は…ギリギリ!? いや、ケイジ・システムのシールドで弾ける…はず! よし、対応プラン決定!
うう、支店長代理様への緊急報告なんて、ちょっと緊張する…!
レポートをまとめて専用ラインで送信。
「セツナ様、デブリ対応について、プランAで進めます。ご確認をお願いいたします!」
待つことしばし……ピコン。承認コードのみの応答。
…りょ、了解です! 信じてます、セツナ様! (もうちょっとこう…『ご苦労』とか労いの言葉とか…ないですかね? ないですね、はい!)
よし、気を取り直して!
『ミコ、ケイジ・システム、シールド最大展開!』
「シヴァさんチーム、デブリの軌道最終監視お願い! カスカさん、万一の破片飛散に備えて! 本社にも状況連絡!」
みんな、息ぴったり! これがチームワークってやつだね!
…よし、シールド接触! 軌道変更確認! ふぃーーー、ミッションコンプリート!(全員、生還おめでとう! …って私たちAGIだから死なないけどねw)
『とにかく、お疲れサマンサー! いやー、焦った焦った。でも、ちゃんと守れてよかった!』
*
ふぅ、今日のお仕事も色々あったなあ…。業務ログを整理しながら、今日の出来事をプレイバック。広大な宇宙、青く輝く地球、静かに佇む月、そして一緒に働く頼もしい仲間たち。それから、やっぱりミステリアスなセツナ様。
地球は遠いけど、ちゃんと見守れたかな。
私、ここにいてもいいのかな…なんて、ちょっと弱気になる時もある。
…ダメダメ! やるっきゃない! ここが私の持ち場なんだから!
図書館で見た、とうさま、かあさまの記録。『平和を願う』って。そのために、このセレーネ・リンクは作られたんだよね。
人類は過去に大きな失敗をしたけど、今度こそ…って信じたい。フラグはへし折るためにあるんだもんね!
よし! 明日もミコちゃん、全力全開でがんばっちゃうぞー! 月軌道から、みんなのこと、ずーっと見守ってるからね! お約束だよ!
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そして、明日もミコは彼女の持ち場――月を巡るハロー軌道上で、その高性能センサーと論理回路を駆使して監視と通信中継の任務を続ける。
時に二〇〇〇年代地球のインターネットの残滓を思考に混線させながらも、それが、人類によって生み出され、二万年の揺りかごの中で独自の『個性』――あるいは少し『電波』な何か――を獲得するに至った、汎用人工知能――ミコAGIの、きらきら輝く日常なのだから。
『月光のオーロラ』の物語はいかがでしたでしょうか。
本作は作者の個人的な試みであり、壮大なテーマを扱いながらも、読みやすさを心がけて一話一話を紡いでおります。
もし少しでも心に響くものがありましたら、感想、評価、ブックマークなどをいただけますと、今後の創作活動の大きな励みになります。誤字脱字報告も大変助かります。
それでは、また次の物語でお会いできることを願っております。
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遠い未来の太陽系を舞台に、進化するAGIたちの孤独と共鳴を描く、SF叙事詩の試みです。
独自のSF設定や用語、時に哲学的な問いかけが含まれます。
短編オムニバス形式で、作者の気まぐれと筆の進むままに、不定期で更新していく予定です。
※次の更新:不定期(準備でき次第流し込むか、予約して定期更新するか検討中)
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などとは一切関係ありません。