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プロローグ

ゴーンゴーン


森の中にひっそりとたたずむ古く、苔におおわれた教会の鐘が今日も鳴り響く。

教会のなかには1人の老人がおり、祈りを終えると目をゆっくりと開け、口を開く。


「アナリスよ、そこにいるのはわかっておる。出ておいで」


そう呼びかけると、老人の後ろの柱から恥ずかしそうにしながら金髪ロングの小さな少女が現れた。


「えへへ、ばれちゃった。」


少女が照れくさそうに笑いながら老人に話かける。


「ねえ、なんでおじいちゃんは毎日こんなところにきてるの?」


老人はゆっくりと振り返り、こたえる。


「さあ、ここに来る理由は忘れてしまったよ。だいぶ前にな。ただ、――」


「アオーン!」


老人が言い終える前に外から大きな咆哮がきこえた。次の瞬間、窓が勢いよく破られ、黒い何かが教会内に入ってきた。よく見るとそれはオオカミのようだが、目が左右の他に真ん中にもあり、合計3つある。毛は黒く逆立っており、普通のオオカミよりも一回り大きい。割れた窓ガラスの破片をパキパキと踏みつけながら、老人に照準を合わせると、すぐに襲いかかってきた。しかし、老人はその見た目に似つかわしくない素早い動きで華麗によけ、逆に杖でオオカミの真ん中の目をつぶした。オオカミは目から血を流し、うなだれながらも殺意を持った目で老人をにらんでいる。


「グルルルゥ、ガウ!」


オオカミは力強く鳴くと今度は少女の方に視線を移し、勢いよく突っ走る。少女は急いでよけようとするが、恐怖からか脚が動かない。


「いやーーー!」


少女が大きな声で泣き叫ぶと同時に、オオカミは大きく飛び上がり、鋭い牙を少女の柔らかい肌に向けた。無意味にも少女は泣きながら手で頭を守り、しゃがみこむ。1人の幼い命が奪われそうになったその時、勢いよく老人がオオカミと少女の間に入り、間一髪抱きかかえ、外に逃げた。


「はぁはぁ」


老人は少女をすぐさま下ろし、状況を整理しようとしているが、先ほどの無理のせいか大量の汗をかき、息を荒くしている。


「おじいちゃん、ありがとう」


少女は涙をぬぐい、感謝を老人に伝えた。老人は少女の方に一切目を向けず、教会の中をじっと見つめている。中から一歩ずつ地を踏みしめ歩いてくる音がする。


「早く逃げるんじゃ!アナリス!」


老人は少女の方を振り向かず、大きな声でそう叫んだ。老人は孫であるアナリスの命だけでも救うために、自分が時間稼ぎをする決断をした。その間もオオカミは少しづつこちらに近づいてきており、時間があまりないことを老人は悟った。しかし、少女の答えは老人の求めているものとは反対だった。


「いやよ!私がおじいちゃんを見捨てられるわけないじゃない!」


少女が恐怖の中、勇気を振り絞りながらそう伝える。これが映画なら感動シーンの一つになるだろう。しかし、今この状況は現実でおきている、こんな森の奥にヒーローが助けに来るわけなんかない。老人が少女に説得しようとした瞬間、無情にも教会内の闇から現れたオオカミは先ほどよりも速度を増し、老人の喉笛に今まさに噛みかかろうとしている。2人は今後こそ終わりだと察し、目をつぶり、残酷な死を受け入れた。


ピシッ。


急に入った亀裂とともに突然大きな音を立てて教会が壊れる音が聞こえる。次に老人と少女が目を開けると、そこには、奇跡的にオオカミのみをつぶし、崩れた教会の姿があった。老朽化のせいだったのだろうか。何はともあれ2人の命は無事救われた。


「はあはぁ...助かった」


老人が安堵ともに崩れ落ち、地面に膝をつく。先ほどまでの老人とはとても思えない動きは、火事場の場火事からだったのだろうか。少女は倒れ掛かった老人の体を慌てて支え、話しかける。


「おじちゃん、大丈夫!?」


少女が話しかけると老人は少女の肩を借り、ふらふらしながら立ち上がった。ぼやける視界の中ではあるが、崩れた教会の方をもう一度見た。


先ほどまで教会だったものは完全に崩れており、当然ながら大量のがれきが散らばっていた


――たった1つの像を除いて


それは2人の男がそれぞれ剣と槍を持ち、勇ましく立っている姿、像からはとても普通のモノとは思えない神聖さを感じることが出来る。老人は少女にもたれかかりながら、その像に近づき、目をつぶり手を合わせた。それを不思議そうに最初少女は見つめていたが、少し経つと少女も同じようにする。2人が目を開けると少女は話しかける。


「ねえ、おじいちゃんさっきのオオカミは...それにこの像はいったい」


少女が先ほどから思っていた疑問を伝えると、老人は首を横に振りながら答えた。


「わからん、じゃが、この像がきっとわしらを救ってくれたのじゃ。」


それを聞くと少女はうなずき、もう一度像の前に手をあわせ、今度は感謝の念を伝えた。

それから2人は少し休憩し、すぐに森から抜けていった。忘れられた2人の英雄を背に。




―――これから始まる物語は、現代では失われてしまった剣と魔法の物語。


そこにはもう忘れられてしまった、2人の英雄とその仲間たちがいたという。


さあ、もう誰も知らざる歴史をみていこう。


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