第二十章〜休み時間
宜しく御願い致します。
チャイムがスピーカーから流れた。ヤスオのせいで波乱のあった数学の授業は終わった。
終わった瞬間、教室内を不穏な喧騒が支配した。
その喧騒の原因が自分にあるのをヤスオは知っていた。
教室に飛び込んできたゴキブリを食べた人間として、自身がクラスでのある種の有名人になっなってしまったのを、ヤスオは自覚するしかなさそうであった。
これ以降、クラス内でどのような扱いを受けるのか、ヤスオのクラス内での順列、階層がどのように推移していくのかは、わかったものではなかった。もちろん良い方向には向かうまいが。
汚名を被ってしまったのだ。取り返しはつかないのかもしれなかった。
これでほ、せてかくの復讐劇も、逆効果になってしまうのかもしれなかった。
困ったものだった。
ヤスオは、トイレに立った。尿意もあったし、口の中も濯ぎたかった。
恐怖はあった。なるべくなら、独りきりになる時間など作りたくはなかった。
案の定、生徒用の共用男子トイレの前には、平木零を筆頭にして、普段からヤスオにちょっかいを出してくるいじめっ子グループが屯していた。
奴らの待つターゲットが、自分であるのは間違いなさそうであった。
「よお!ゴキブリ小僧」
聞き慣れた零の声から始まった。
「美味かったか?食ったんだろう?そんなに腹減ってたのか?あ?」
と蓮。
「お前いつもお母さんから飯、作ってもらってねえのかよ。あれを食べるほど腹減ってたんだろ?」
今回は三人だった。いじめは三人組で行われることもあれば、ひとりのこともあるし、もっと多いことだっていっぱいある。三人ならいつもよひは少しはマシか━━、ヤスオは思った。
「やめてよ」
それはいつものヤスオの台詞。
ヤスオは本能的に、秀次郎の姿を探した。眼をきょろきょろさせた。
「何を探してるんだ?あ?」
零が凄んだ。
有り難う御座いました。




