第十六章〜展開
御早う御座います!
「やめて」
と、ヤスオがほうきを持った男子、石清水蓮の動きを止めにかかろうとした瞬間、であった。
それとまったく同時に、
「やめろ」
という別の声が教室に響いたのだ。
果たしてその声の主は、零なのであった。彼は両手を振り上げられたほうきに向けて両手を翳しながら、
「やめろ!お前正気か?お前、俺の服の中でゴキブリ潰そうってのかよ!?マジかよー、そんのんされたらたまらんぜ。そんのんされたら悲惨なことになるぜ」
と講義するのである。しかし、蓮は、
「いーや。そんな虫、出てきて教室ん中で暴れられても皆が困るのだぜ。叩き潰す」
と譲らない。
「頼む、やめてくれ」
「いーや、だめだ」
そこで漸く、意を決したヤスオが割って入った。
「ぼ・・・、ぼくが取ってあげるよ。取り出してあげる。だ・・・だから、少し大人しくしてて。動かないで」
普段ほとんど教室でものを言わないヤスオの突然の提案に一同、驚いた様子だったが、零は、渡りに船とばかりに懇願顔となった。
「ほんとだな。テメー、ならしでかりこいつを追い出してくれよ」
死に物狂いにヤスオに詰め寄ってきた。
「う、うん。わかったから」
ヤスオは言って、彼に近づいた。ほうきはまだ、振り上げられたままなのであった。
有り難う御座いました。




