第十一章〜急襲
遅くなりました。書きました。宜しく!
秀次郎は、音もなく飛翔していった。黒光りする小さな塊が、一瞬にして天井に到達し、白い石膏ボードの天井に貼りつくのが見えた。
━━そうか、そういえばゴキブリって飛べるのだったな。
ヤスオは改めてそう実感して背中をゾワゾワさせた。秀次郎の設定した目標は、平木零であった。教室の中ほどの席に座る男子生徒だ。
他の生徒と同じく、紺色の詰め襟に身を包んでいるが、好みなのか、心持ちだぶっとしたサイズを選んで着ているようだった。
七三に分けた黒髪だけ観るとまるでどこかのサラリーマンだ。
零は、教科書に見入っているようなポーズはしているが、密かに机の下の見られないスペースでスマホを使ってゲームをしているのをヤスオも知っていた。誰もがそれをしっていたが、何か言おうものなら仕返しをされるのが決まっているので、誰もが見て見ぬふりをしているのであった。
できるだけ目立たないように、ということだろう、そろりそろりとゆっくり秀次郎が天井を逆さな形で這っているのをヤスオだけが見ているのがバレないようにしなごら見ていた。
━━頼む、誰にも見つからないで。見つかったら潰されちゃう。
ヤスオは祈るような気持ちで見守っていた。
授業は何事もないように続いている。
やがて、秀次郎は零の上空、真上の位置に到達したようだった。
黒光りする物体が天井でピタリととまった。
━━照準を合わせているのか?
ヤスオにほそう感じられた。
先生がホワイトボードに板書しながら熱弁を振るっていた。
『ひとよひとよにひとみごろ。これはルート・・・』
秀次郎の言っちゃいけないがグロテスクな脚が構えを取るようにうにょうにょと動いているように見えた。
━━そこからどうするつもりなの?
ヤスオが思った次の瞬間。
ぱっと秀次郎の脚が逆さに天井を蹴ったように見えた。
「あ」
ヤスオは思わず声を出しそうになった。
真っ逆さまに、秀次郎が落ちていくのが見えた。
急降下爆撃機だ。
ヤスオは思った。テレビかなんかで見た爆撃機の映像を思い出したのだ。
教室のヤスオより前の方で秀次郎が、直線を描きながら零の丸まった背中に向かっていくのが見えた。
御読みになって頂きまして、誠に有り難う御座いました。




