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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
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シーン4

ユキは引き抜いたティアの首を高々と掲げた。


千切れた断面の下からは、血と体液で粘つく脊髄が一本釣りされている。


酒場は凍り付き、アビエドとジルアだけが(アチャ~)と言わんばかりに天を仰いでいる。


ユキ:

「綺麗に脊髄が抜けました!」


ティア:

「・・・そろそろ降ろしてくれないかね。」


明らかに胴と首が離れているにも関わらず、ティアは平気そうに声を出した。


ユキ:

「うわ、気持ち悪。」


ユキは心底気持ち悪そうに、ティアの首を床に叩き付けた。


ティア:

「痛いねぇ・・・。」


ティアはそのまま、脊椎を尺取虫のように動かして移動する。


ティア:

「・・・あ、悪いんだけど首の断面を床に持ってきてくれないかね。

このままだと、首と胴をくっつけるのが難しそうでね。」


ユキ:

「面倒ですね・・・。」


ユキはティアの胴体の横に移動すると、その躰を椅子から蹴り落とした。


ティアの躰は屍体のように倒れる。


ユキ:

「これでいいですか?」


ティア:

「おぉ、助かるよ。」


ティアは脊椎を器用に動かして、首の断面に滑り込ませ、まるでコタツに入るかのように元に戻っていった。


首の損傷は、血泡を弾かせて治っていく。


首の断面が接触してから、数秒後にはティアは何事も無かったかのように立ち上がった。


ただ、その装いが明らかに血塗れていることだけが、先程までの出来事が現実であることを伝えてくる。


常人なら正気度判定が起きても可笑しくない状況。


実際、酒場の客は皆、大小問わず気分が悪そうにしている。


しかし当事者であるはずのティアとユキだけが、日常の空気の中にいた。


ティア:

「全く、首使いが粗いね、ユキ。

首っていうのは人間の急所なんだから、もっと優しく扱わなきゃダメさね。」


ユキ:

「やかましいです。

反省してないようなら、今度はその頭を潰しますよ?」


ティア:

「あー、悪かった。

アタシが悪かったから。

そうカッカッなさんな。」


ティアはユキを適当に宥める言葉を吐きながら、何かの呪文を唱え始めた。


ティア:

【我が身の汚れを落とせ】


ティアが呪文を唱えると、真っ赤に染まったティアの全身が綺麗になっていった。


ユキは返り血をアビエドから借して貰った掃除用具の一つである雑巾で拭き取る。


ユキ:

「便利ですね、その魔術。

私にも教えて下さい。」


ティア:

「そりぁアンタなら簡単に覚えられるだろうけどね。

そう簡単に教えちゃ面白くないねぇ・・・。」


ユキ:

「あ、分かりました。

貴方をもう一回殺した上で、魔術の先生に聞きます。」


ティア:

「イヤ、そこはもっと踏み込むべきじゃないかね?

こう・・・”どうすれば教えて貰えるんですか”とか。」


ユキ:

「?

貴方を殺した方が早くないですか?」


ティア:

「クッ・・・暴力に訴えるのが早いねぇ・・・。

分かったよ、教えてあげるから条件だけ聞きな。」


ユキ:

「聞くだけ聞いてあげますよ。

あ、ジルア。

血飛沫の後始末をお願いします。」


ティア:

「綺麗にするんだよ。」


ジルア:

「え、あ、はい。」


ユキとティアは先程までジルアとユキが呑んでいた、綺麗な卓に座り直す。


ジルアは先程までティアが座っていた、血塗れの卓を一生懸命モップや雑巾で拭いていた。


ユキ:

「全く・・・私が言うなら分かりますが、貴方がジルアに綺麗にしろといいますか。」


ティア:

「へぇ、アレはアンタのとこではジルアって名乗ってんのかい。

別にいいだろう、本当は私の部下なんだから。」


ユキ:

「本当はそうでも、今は私の下僕でもあります。」


ティアは吹いた。


ティア:

「下僕・・・!

そうかい、下僕かい。

あの野郎にはお似合いの称号じゃないか。」


ユキ:

「?

まぁ、確かに顔合わせ段階で内通者バレする暗殺者には下僕がお似合いかもしれませんね。」


ティアはむせた。


ティア:

「ゲホッ・・・ゲホッ・・・ガハッ・・・!

止めてくれ・・・!

笑いすぎで死んじまうよ・・・!」


ユキ:

「いや~貴方にも見せたかったですね。

顔見せのときに裏に連れ込まれ、”貴方・・・どこ所属?稼業は?殺し屋?”って聞かれたときの焦り方といったら。

”・・・っ、何で・・・!何で俺っちの正体が・・・!”って。」


ユキは悪意タップリの悪意モノマネを披露した。


ティア:

「ヒ~~~、ヒ~~~!

死ぬ・・・死んじまう・・・!」


ティアはまな板の上に載せられた鯛のように全身をバタバタさせた。


ユキ:

「それで襲ってきたのでボコボコにしてやったら、逃げようとしたので足の骨を折ってやったんです。

そしたら”じにだくない・・・。ぼれっじにはまだやることが・・・。”って往生際悪く命乞いをするので、仕方なく、慈悲深い私が、”何でも言うことを聞く下僕になるっていうなら、使ってあげてもいいですよ。”って言ってやったんです。

全くその時の必死さったら・・・。

いや~、本当に貴方に聞かせてあげられないのが残念ですよ~。」


ティア:

「うぇ・・・ゴホォ・・・!

顎が・・・笑いすぎて顎と肺が死んだ・・・!」


ユキの追加の悪意モノマネの前に、ティアは為す術無く遂に机に突っ伏した。


未だに笑いがこみ上げるのか、ピクピクと痙攣を繰り返している。


微妙な表情を浮かべながら掃除を続けるジルアを尻目に、ユキはティアを笑いで半殺しにしたことにガッツポーズをした。

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