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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
93/110

アンテスロム氏族集落 シーン1

ユキ達は1週間と1日の狩りから帰ってきた。


成果は・・・───


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・雪熊:1

・雪角竜:10

・雪鼠:7

・雪狐:1

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


───・・・だった。


日本円にして、大体20万1,700円くらいだ。


中々の金額に思えるが、8日間も樹海に潜ったことを考えると雀の涙ほどだ。


大凶作と言ってもいいだろう。


ユキは改めて、足下に狩猟神への呪詛を書いた。


・・・。


まぁ、済んだことはさておき。



待つように連絡したゲンタの成果について、伝令に遣ったギーリからは、「凄いですよ、姐さん!」と、とてもバカっぽい感想が返ってきた。


なんだかとっても凄そうだったので、敢えてその場で成果は聞かなかった。


その凄いゲンタの成果が、目の前にある。


なんとゲンタは、目標の10匹を大きく上回る、20匹もの軍狼を連れ帰った。


「これくらい必要なんだろ?」と言わんばかりのゲンタの目線がニクい。


試しにユキが初見の大狼に触れてみても、ゲンタが連れてきたその大狼は一瞥をくれただけでピクリともしなかった。


狐族の隊員が触れてみても結果は同じである。


ユキは嬉しくなって、ゲンタをワシワシした。


ユキ:

「よくやりましたよ、ゲンタ。

褒美として、貴方の大好きな”亜竜の大腿骨”をあげましょう。」


ユキがフッとゲンタの前に”亜竜の大腿骨”を差し出すと、ゲンタはユキからひったくるようにして”亜竜の大腿骨”を囓り始めた。


狼というか、犬の親戚は大体骨が好きだが、ゲンタは中でも亜竜の骨が好きだった。


そこから更に拘って、大腿骨。


亜竜の骨は軒並み高く売れ、安い出費ではないが、これほどの功績に対しては安すぎるほどだった。


ユキはゲンタに骨を囓らせてる間に、部下達と一緒に、任務の邪魔になるだろうと思って取り外していた狼具を”賢狐の館”に取りに行き、それぞれの本来の愛狼に取り付けさせた。


ユキも勿論、ゲンタに取り付ける。


ユキ達 狼族が大狼に騎乗すると、狐族の隊員たちも慣れない手つきで大狼に騎乗した。


さすがに着の身着のままな為、どうも浮いている。


早急に狼具が必要だ。


それも大量の。


ユキは20頭もの大狼の群れを引き連れ、狼具を扱っている鍛冶屋に向かった。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


─────鍛冶屋─────


ユキ:

「ダフネルぅ~、居ますか~!」


店頭には、恐らくダフネルの弟子と思われる若者が立っていた。


若者:

「ん?

師匠の孫か何かか?

師匠に何か用でも?」


ユキ:

「えぇ、早急に狼具を15頭分 用意して貰いたいんです。」


若者:

「無茶言っちゃいけないよ、嬢ちゃん。

流石の師匠でも、15頭分は直ぐには無理だろ。」


ユキ:

「あぁ~、流石に⤴

かー、ダフネルともあろうものでも無理ですかー⤴」


若者:

「そうそう。

流石の師匠でも無理だって。」


ユキ・若者:

「アッハハハハハ!」


ダフネル:

「誰が無理だって?」


鍛冶屋の奥から、ダフネルがヌッと出てきた。


若者:

「あっ、師匠。

この嬢ちゃんが狼具を15頭分用意して欲しいそうッスよ?」


ダフネル:

「聞こえておったわ、このバカ者め。

あと、確かに普段なら無理だが、今回に限ってはちゃんと用意しておる。

それが分かったら、顎の骨を折られん内にサッサと引っ込め。」


若者:

「あ、そうだったんスか。

それなら良かったッス。

じゃあな、良かったな嬢ちゃん。」


若者は裏手に引っ込んでいった。


ダフネルは、若者がユキの手の出せない程 離れたのを足音で確認すると、深々と溜息をついた。


ダフネル:

「ふぅー、肝が冷えたわ。

貴様もよく殴らなかったな。」


ユキ:

「まぁ、甘く見られてる雰囲気はあっても、舐められてる雰囲気は無かったので、まぁ、いいかなって思いまして。

ダフネルも心配性ですね。

そんなに弟子のことが心配ですか?」


ダフネル:

「いや、財布の心配だ。」


ユキ:

「え~、そこは嘘でも弟子の心配をしておきましょうよ。」


ダフネル:

「うるさい。

若者は叩かれて強くなるからいいが、儂の財布は叩かれると軽くなるのだ。

どちらを心配するかは自明の理だろう?

・・・まぁ、当分の晩酌代が潰れずに済んだから良かったが。」


ユキ:

「晩酌代から出てたんですか、弟子の治療費。」


ダフネル:

「店内の損害補填もな。

貴様が一暴れするだけで、儂の晩酌が向こう一ヶ月なくなることを考えて欲しいものだ。」


ユキ:

「善処します。

多分、恐らく。」


ダフネル:

「・・・貴様はエディと違って話は通じるのだがなぁ・・・。

まぁ、いい。

狼具15頭分だったな。

用意してあるぞ。

対価を払え。」


ユキ:

「手回しが早いですね。」


ユキは背後に控えていたジャグ達に指示して、狼具15頭分の代金となる素材を店内に運び込ませた。


それを見たダフネルが声を上げると、店の奥から弟子が数名現れ、運び込まれた素材を検分して店の奥に運び込んでいった。


ダフネル:

「エディと前々から話しておったのだ。

貴様のことだから、戦士になるやいなや無茶苦茶し始めるとな。

それに備えて、色々と物を蓄えておる。

だが、限界はあるからな。

次からは戦士の権限を行使して、他の鍛冶屋も働かせるのだな。」


ユキ:

「そうだったんですか。

忠言、感謝します。

五十人隊になったら、集落中の鍛冶屋を働かせます。」


ダフネル:

「うむ。

言い方はあれだが、それでいい。

それにしても、予想はしていたが既に十人長とは早いものだ。

最低でも数年の下積みが必要な役職なのだがな。」


ユキ:

「フフン、もっと褒めてくれても良いんですよ?」


ダフネル:

「まぁ、15で千人長になった者もいることを考えれば、大したことないか。」


ユキ:

「なんですか、もっと素直に称賛してくれてもいいんですよ?

ですが確かに15で千人長は凄いかもしれませんね。

この集落の出身ですか?」


ダフネル:

「この集落出身も何も。

貴様も良く知っている人間だぞ?」


ユキ:

「え?

誰です?」


ダフネル:

「リリィ。」


ユキ:

「え?

あの五十人隊に囲まれただけでボコボコにされた、あのクソザコの?」


ダフネル:

「・・・それは貴様とエディがおかしいだけだからな。

普通は五十人隊に囲まれたらリンチなのだ。

よく覚えておけ。」


ユキ:

「衝撃の新事実です。

千人長になれるような人間でも、五十人隊を破れないのですか・・・。

ん?

でもそれならデナグド百人長はどうなんです?

あれも五十人隊くらいなら単騎で蹴散らせると思いますけど。」


ダフネル:

「あぁ、あれは貴様の師のエディが氏族を率いた頃の麾下の一人だからな。

少なくともエディが認めるだけの最低限の実力はあるのよ。

・・・いわゆる古い時代の戦士というやつだ。」


ユキ:

「一騎当千ってやつですか。」


ダフネル:

「おうよ。

まぁ、エディであれば”戦士たる者、千では足りませんね”とか言うだろうがな。

話を戻すが、千人長は今の時代、強ければ良いというものでもない。

要するに将としての能力が必要なのだ。

その点、デナグドは賢い奴でな。

自分の将としての器が百人を率いるのでやっとだと分かっているのよ。

対してリリィの奴は将としての器が本人が思う以上にデカかった。

儂は千人と言わず五千人でも万人でも率いるべきだと思ったが、どうも千人長の同僚にソリが合わない奴がいたらしくてな。

本来不得手なはずの一騎打ちを挑んで、今のザマよ。

まぁ、本人は納得して一狩人なんてやってるようだが・・・。

・・・そうだ。

ユキよ、良ければリリィを遣ってやってくれんか。

儂の独り善がりかもしれんが、あの才能が腐っていくのは どうにも見るに耐えなくてな。」


ユキ:

「別に構いませんが・・・。

何故わたしなんです?

そんな大した経歴なら、引く手あまたでしょう?」


ダフネル:

「奴は頑固だからな。

かつての同僚に遣われるは嫌らしく、全ての誘いを断っておるし、儂の言葉も聞きやしない。

その点、どうも貴様には心を開いているというか、頼っているように見える。

恐らく、最初こそ断るだろうが、貴様が本気で口説けば多分オトせるぞ。」


ユキ:

「へぇ、そうなんですか。

分からないものですね。

丁度良いです。

そんなに優秀な人材が転がってるなら、再利用してやらないといけませんね。」


ダフネル:

「うむ、言い方は相変わらず最悪だが、宜しく頼むぞ。」


ダフネルは胸のつかえが一つ下りたと言わんばかりに軽く息を吐いた。

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