シーン3
・狩猟のルールを変更。直ぐには獲物に到達できないように。
・あまりにも裏で処理している出目が悪いので、確率を一部調整。
六日目。
霊的な干渉があった翌日、ユキ達は日の出と共に起きると、朝食に干し肉を戻して食べた。
朝一で仕掛けた罠の確認をする。
仕掛けた罠には───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───雪狐がいた。
数は・・・一匹だけだ。
雪狐自体あまり群れる獣ではないが、それでも一匹だけとは珍しい。
はぐれの個体だろうか。
とりあえずユキが自ら仕留めて皮を剥いだ。
皮は財産を管理しているジャグに渡し、肉は食事を担当しているミランダに渡した。
これで夕食が少し豪勢になる。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
罠の確認を終えたユキ達は、続いて獣の痕跡を探った。
痕跡は───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───全部で7つ見つかった。
内訳は大型1、中型1、小型5だ。
ユキは勿論、大型の痕跡を追った。
追跡は───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───上手く行った。
痕跡がかなり新しくなってきている。
目的の獣は目と鼻の先だ。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
朝確認する罠を仕掛け終えたユキ達は夕食を摂り始める。
夕食は、追跡中の獣に気取られないように、焚き火を熾さず、乾いたままの干し肉を口に入れた。
生臭い干し肉が、口の中の水分を持って行く。
決して旨いものでは無いが、躰の芯に力が戻るのをユキは感じた。
添え物として出てきた、昼間に獲った雪狐のスライス生肉も、なんか・・・生きてるって感じがした。
携帯していた革袋から蒸留した水を口に入れて渇きを潤し、ミランダから少量の塩を貰って味を誤魔化した。
食事を終えると、夜番を決めて毛皮に包まって寝た。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
夜間は何も無かった。
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七日目。
ユキ達は朝食を摂ると、早速罠の確認に向かった。
罠には───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───何も掛かっていなかった。
残念。
罠の確認を終えたユキ達は、昨日の続きから痕跡の追跡を始めた。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
残念ながら、ユキ達は上手く痕跡を追跡することが出来ず、獲物に追いつくことが出来なかった。
ユキ:
「仕方ありません。
おい、ギーリ。
少しひとっ走り行って、ゲンタに遅れる旨を伝えてきなさい。」
ギーリ:
「あい、姐さん!」
ギーリはユキの命を受けると、一目散に走っていた。
(これでいい。)とユキは思った。
短い付き合いだが、ゲンタは神経質なところがあり、連絡なしに待ち合わせに遅れるとヘソを曲げるだろう。
そうなると暫く拗ね続けるので、非常に面倒くさい。
それに比べれば、妹分のギーリが汗だくになるくらい安いものだ。
ユキはギーリが視界から消えるのを確認すると、最近半ば従者になりかけているビンドに声を掛けて野営の音頭をとらせた。
今日の夕食は朝食と同じで干し肉そのままだった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
夜間には何も無かった。
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八日目。
朝食に干し肉を齧った。
そしてそのまま罠の確認に向かった。
罠には───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───何も掛かっていなかった。
・・・まぁ、連続で掛からないのが普通といえば普通だ。
例え幾つも仕掛けていたとしても。
ちょっとガックリしながら、昨日の続きで痕跡を追い始める。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
何ということだ。
せっかく二日も追っていた獲物の痕跡を見失ってしまった。
くっ、きっと取り逃がした獲物は狡猾だったに違いない。
ユキ達は獲物の追跡を三日目にして諦めた。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
どうにも狩りの結果が振るわなかったので、ユキは、二日ぶりくらいの戻した干し肉を口に入れると、足元に狩猟神を呪う呪詛を刻んだ。
こうやって、神に頼み込むときは、神に縋るのではなく、まず殴るのがエディ流である。
「私は神を信じませんが、残念ながら存在している以上、負けてはいけません。」とはエディの言である。
ユキはその言葉に非常に感銘を受けたのを覚えている。
なお、飢爺は例の如く微妙な表情をしていた。
駆け出しの魔術師であるレアクは、それを見てギョっとしていた。
レアク:
「アンタ・・・神罰が下っても知らないわよ?」
ユキ:
「いえ、モノを出さない狩猟神が悪いので。
私は悪くないので。」
レアク:
「エディ様の受け売りなのは分かるけど、それって凄く傲慢よね。
神に呪詛を吐いて願いを叶えて貰おうだなんて。」
ユキ:
「それを言ったら魔術だって、呪文の意味を読み解いたら、アレって神に対する命令みたいなものですよね。」
レアク:
「いや、あれは神に対する畏れありきだから。
アンタ達の呪詛とは心構えがまるで違うから。」
ユキ:
「内心 神に対して唾を吐いてても呪文さえ完璧なら魔術は出ますよ・・・。
それを思えば、分かることがあります。」
レアク:
「何よ。」
ユキ:
「神は我々を愛していないということです。
人間で言う玩具に対する好奇や執着はあるかもしれませんが、それだけですよ。
だから命令されても屁にも思わないし、呪詛を吐かれても気にしないし、祈りを捧げても通じないのです。
そんな存在に、媚びへつらうくらいなら、唾を吐こうとは思いませんか?」
レアク:
「アンタ・・・それ私や先生にならいいけど、他の魔術師に言っちゃダメよ?
神に対する信仰を少なからず受け継いだ、古いタイプの魔術師は少なくないんだから。
きっとそういう人達が聞いたら、顔を真っ赤にして起こるわね。
崇拝全開の祈祷師なんかが聞いたら、多分殺しにくるでしょうね。」
ユキ:
「全く怖くありませんね。
それに、呪文から崇拝や呪詛といった感情の部分を排して効率的にしたのが魔術っていう体系なのに、信仰を持ってるって何ですか?
祈祷師になればいいじゃないですか。」
レアク:
「色々あるのよ・・・。
まぁ、具体的に言うと多分大体は”魔術師の方が就職に便利”が主な理由でしょうけど。」
ユキ:
「信仰もクソもないじゃないですか。」
レアク:
「しょうがないでしょ。
肝心の雇用主の権力者が篤い信仰心を持ってるなんてレアケースなんだから。
大体は信仰と技術は別として仕事をしてくれる魔術師の方が欲しいに決まってるわよ。
信仰上の理由で仕事を拒否してくる祈祷師なんて、権力者からしたら面倒ったら。
呪術師は呪術師で仮に権力者が雇いたくても大っぴらに雇えるタイプじゃないし。
まぁ、そこら辺は呪術師の方から折り合いを付けて、占いやお祓いなんかの穏健な業に手を出すだけ、呪術師の方が雇い易いかもだけど。
そこら辺ばっかりは魔術とはスキルツリーが違うしね。
だけど、やっぱり魔術師が圧倒的に有利なのは変わらないかな。」
ユキ:
「はぇー、そういうものなのですね。
私は権力者を殴れば、大体解決するので そこまで考えませんね。」
レアク:
「エディ様 同様、強者側の意見ね・・・。」
ユキ:
「ちなみにレアクはどうなんです、そこら辺。
信仰は篤いタイプなのですか?」
レアク:
「私?
私は・・・そうね、あんまり考えたこと無かったかも。
先生からの受け売りで、神に対する畏れとか、魔術に対する畏れとかは持ってるけど・・・。
・・・。
強いて言えば、私にとって神は隣人なのかも。
とっても怖くて、強くて、理解の及ばない存在。
だけど私たちは間違いなくその恩恵に与ってて、だからこそその恩恵に溺れないように自分を律してる・・・そんな感じかしら。」
ユキ:
「先生の言っていた魔術師の理想像そのままですね。
私よりよっぽどデイラ先生の弟子をやれてるじゃないですか。」
レアク:
「そうかしら。
それなら嬉しいわ。
私の夢は先生みたいな立派な魔術師になることだもの。
・・・質問を返すようだけど、アンタはどうなの?
呪詛を神に送り付けるくらいだから分かり切ったようなもんだけど、一応聞いてあげるわ。」
ユキ:
「私ですか?
貴方と同じですよ。
隣人だと思っています。
ただ、私は怖いとは思いません。
人間と同じで、使えるものだと思ってます。」
レアク:
「やっぱりアンタは傲慢ね。
エディ様の後継なだけはあるわ。」
ユキ:
「いやですね、ホメても何も出ませんよ?」
レアク:
「ホメてないわよ。」
夜が更けていった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
夜間は特に何も無かった。




