シーン2
四日目。
日の出と共に起きたユキ達は、気を取り直して朝食を摂り、早速罠の確認に向かった。
罠には───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───雪角竜が掛かっていた。
数は・・・10匹だ。
中々の数だ。
どうやら群れごと掛かったらしい。
ユキ達は一人一匹とどめを刺して解体した。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
日が暮れ、夕食の時間になる。
ユキ達は一人一人が自分でトドメから解体までした雪角竜の肉を、思い思いの方法で食べていた。
多くは手持ちの鉄串に刺したり、熱した石で焼いたり、鍋で煮たりしていたが、ユキの親友であるユアクだけは違った。
ユキ:
「ふむ、レアク。
これは何をしているのですか?」
レアク:
「ん?
炒めてるだけだけど?」
レアクは手持ちの野菜と一緒に、比較的平らな手持ちの鉄鍋で、雪角竜の肉を薄くスライスして炒めていた。
肉の脂を吸った野菜の良い臭いがする。
ユキ:
「なるほど・・・。
聞いたことはありましたが、実際に炒めるという調理法を見たのは初めてですね。」
レアク:
「まぁ、基本的に煮るか焼くだけだもんね。
コレも先生からの受け売りでさ。
せっかく経費で油が使えるんだから、やってみようかってね。
・・・ていうか、アンタ”炒める”って知ってたんだ。」
ユキ:
「ウチでも野菜は食べますからね。
エディが嫌がるので、あまり並びませんが。」
レアク:
「こんなに美味しいのにねぇ・・・。
嫌いなら仕方ないけど、エディ様も大概かわいそうよね。」
ユキ:
「そのことに全く異論は無いのですが、実は私にも苦手なものがありましてね。
そういう意味では私も可哀想かもしれませんよ?」
レアク:
「へぇ、アンタに苦手なものなんてあったんだ。
で、それ何?」
ユキ:
「虫です。」
レアクは口に入れていた野菜やら肉やらを吹き出しかけた。
レアク:
「アンタそれ・・・好きな奴の方が少ないんじゃない?」
ユキ:
「不思議ですよね。
別に毒があるワケでも無い上、飢爺が言うにはモノによっては滋養に良いらしいのですが、それでも食べる気がしません。」
レアク:
「まぁ・・・造形がね。
見た目が完全に外なる神々系列だもん。
きっと創造主たる神様が、そう私達をお創りになられたんじゃない?」
ユキ:
「もはや呪詛ですね。
それはさておきレアク、炒めたものを分けて貰えませんか?
ホラ、私が焼いた肉あげますから。」
レアク:
「2ー1ね。」
ユキ:
「・・・いいでしょう。」
ユキは結構な大きさの肉をレアクに渡して、その半分くらいの量の炒め物を貰った。
レアクから貰った炒め物は、野菜の甘味と肉の旨味が絶妙に調和して実に美味だった。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
夜間、自然現象と夜襲に同時に襲われた。
かなり運が悪い。
襲われた自然現象は・・・白夜だ。
季節はずれだが、まぁ変な神格の干渉で起こらないこともない。
一晩中、日中のような明るさに包まれる。
かなり眩しい。
ユキも含め、眠っていたユキ達は起きてしまった。
夜襲をしてきたのは・・・雪鼠だ。
白夜で、気でも狂ったのだろうか?
数は・・・7匹だ。
数は少ない。
白夜で眠れず、起きていたユキ達は、特に夜襲に慌てることなく雪鼠たちを夜食にした。
雪鼠は序列関係なく、仕留めた人間が夜食にした。
仕留め損なった人間は、ユキが特別に干し肉を戻すして食べることを許した。
物理的に明るい夜が更けていく・・・。
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五日目。
結局一晩徹夜した形になったユキ達は、朝食を摂ると罠の確認に向かった。
罠には───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───何も掛かっていなかった。
まぁ、そういうこともある。
罠が不発に終わったので、ユキ達は獣の痕跡を探る。
痕跡は───
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
───何も無かった。
今日もツイてない。
夕食は干し肉を戻して食べた。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
夜間、幻聴とポルターガイストに襲われた。
恐らく霊的な干渉である。
本来、霊に対するには専門的な備えが必要だが、ユキはどういう訳かこの手の現象に強い。
ユキが怒ったように咆哮を上げると、霊的な干渉が弾き飛ばされたかのように、幻聴やポルターガイストがピタリと止んだ。
ダン:
「どういう原理なんだ?それ。」
レアク:
「ダンさん、この手のユキの行動については深く考えない方が身の為よ?
なに、専門職の人でも一喝で霊を飛ばす人とか居るし、同じ原理よ。」
ダン:
「なるほどな。
俺も飛ばせるかな・・・。」
レアク:
「えっと・・・そうね。
やってみる価値はあるかもしれないけど、よっぽどの場合じゃなければ専門職の呪術師とか祈祷師とかに お祓いを頼んだ方がいいと思うわ。
もしやるにしても、呪われる可能性を考慮して専門職の人の付き添いを頼んだ方が・・・───」
ダンとレアクが霊的な干渉に対する対処について話し始めた。
まだ距離感は感じるが、お互いに歩み寄ろうとする姿勢は見えるので、狼族にとっても狐族にとっても良い兆候だとユキは思った。




