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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
89/110

シーン7

<あらすじ>

 狐族の新隊員の紹介をした。


────────────────────


ユキ:

「それではまず、装備面の確認をしましょう。

我々は騎獣の大狼に薬品や調味料、食料に矢など、遠征にも耐えうる装備を揃えてあります。

それに対して新入り共は手持ちの武具と食料に日用品と、近場を散歩するのも危ないくらいの装備しかありません。

このあたりを、個人の負担では無く、隊全体の負担で揃えなければ・・・。」


ジャグ:

「足りない装備を揃えるってなると、手持ちの物資じゃ足りないんだけど。

これって指詰める?」


ジャグが怖ず怖ずと声を上げた。


ユキ:

「あぁ、前もって足りない旨を連絡して貰えば大丈夫ですよ。

私がキレるのは、当日その場で無いとか足りないとか言われることですから。」


ジャグはあからさまに胸を撫で下ろした。


ダン:

「装備を揃えるとなると、騎獣の大狼もあてがう必要があるが、流石にこの部分は建前を弄して狐族に回すのは無理があると思うぞ。

狼族の俺が言うのも何だが、永らく狼族の更に上位層である戦士階級にだけに許された特権だったのだ。

幾らデナグドさん(ユキの直属の上司にあたる百人隊長)が協力的とはいえ、この部分は難しいだろう。」


ユキ:

「本当に面倒ですよね。

ですがまぁ、その辺りについては考えてあります。

ゲンタ、来なさい。」


座り込んで欠伸をしていたゲンタが、ノソノソと近づいてくる。


やがて触れられる距離までになると、ユキはゲンタの首に腕を回した。


ユキ:

「ゲンタ、貴方、この集落の大狼の群れのトップなんですよね?

群れのアルファなんですよね?」


ゲンタ:

「?」


ゲンタは、「それがどうした」と言わんばかりの目をしている。


ユキ:

「なら、群れの全員を、行軍中は背に何者を乗せるか厭わない軍狼(軍馬の狼版)に出来ますよね?」


ゲンタ:

「!?」


ゲンタは、「何言ってんだ、お前」と言わんばかりの目をした。


ダン:

「ユキ・・・それは・・・。」


ユキ:

「別に誰にでも尻尾振れってワケじゃありません。

一時的に大きな群れの仲間として、仕事で背に乗せろと言っているんです。

・・・前々から思ってたんですよね。

大狼を自由に数字として扱えたらどんなに素敵だろうなって。」


ダン:

「・・・それは・・・大狼を道具として扱うということか?」


ユキ:

「えぇ、その通りです。

正確には、超重要な軍需物ですが。

道具として扱えれば、行軍中に替えの大狼を用意出来たり、訓練を施して騎乗戦闘を専門とする人間を養成できたり、戦略の幅が格段に広がると思いませんか?」


ダン:

「・・・お前が広い視野で物事を見ているということは分かる・・・。

だが・・・俺はそれを受け入れられそうに無い・・・。」


ユキ:

「今すぐ受け入れろと言うつもりはありません。

どうせ直ぐに実現したとしても、まずは隊員5人分の軍狼ですからね。

ですが、私の隊に居ようと思うなら必ず受け入れて下さい。

自分の大狼が見知らぬ誰かを乗せることを、そして見知らぬ誰かが自身の背に乗ることを。

それが出来ないのなら どうぞ私の隊から去って下さい。

止めはしません。」


ミランダ:

「え~!?

ユキちゃんの下に居るとミーヤちゃんとお別れになるの~!?

私の家族なのに~!」


ミランダは自身の騎獣たる大狼に縋り付いた。


ミランダに似てマイペースな その大狼はミーヤと名付けられたらしい。


ユキ:

「別に家族を引き裂くつもりはありませんよ・・・。

人間と同じです。

仕事が終わったら家族で集まれば良いじゃないですか。

どうせ軍狼なんて数字で管理出来れば良いので、その数字の内の1が家族で団欒しようと分かりませんよ。

人間だって、非番なら自由行動でしょう?

まぁ、仕事が仕事なので、仕事先で帰らぬ狼になってしまう可能性は否定できませんが。」


ミランダ:

「う~ん、まぁそれならいいか。

ミーヤも私も、戦士だもんね~。」


ジャン:

「ミランダはそれで納得するんだ・・・。

俺はどうも受け入れ難いよ・・・。」


ビンド:

「そうかい?

合理的で良い考えだと思うけど?」


ダン:

「ビンドとミランダの、そういう割り切りが良い部分が羨ましい。

俺は・・・ジャグと同じように、どうも古い価値観とも言えるものに縛られてしまっている。

ユキの考えに一理あることは分かるが・・・それでも大狼と戦士の在り方は一対一であるべきと思ってしまう。

・・・少し、考えさせてくれ。

わがままを言うようだが、実際に大狼を軍狼として扱ってみて、自分がどう感じるのか確かめさせて欲しい。

・・・いいだろうか?」


ユキ:

「構いませんよ。

”万文は一触にしかず”とも言いますしね。

私の思う軍狼の形に触れてみて、どうしてもダメだと思うのなら、去って貰って結構です。

そのときはデナグド百人長に口を利いてあげますよ。」


ダン:

「・・・感謝する。

・・・ちなみに、大狼を軍狼として扱うことと、狐族の騎獣が用意できない問題がどう関係あるんだ?」


ユキ:

「?

我々の替えの軍狼が5匹用意してあったとして、その5匹の上に狐族が騎乗する分には問題無いと思いませんか?」


ダン:

「・・・結局、屁理屈なのではないか?」


ユキ:

「屁理屈上等ですよ。

結局のところ、狼族の戦士が連れて良い大狼の数も一人一匹と明文化されているワケでも無し、我々が一人二匹連れていても、まぁ奇異の目では見られるかもしれませんが、それだけですからね。

その替えの軍狼に、偶々、我々の好意で狐族が乗っているだけです。

まぁ⤴?

その替えの軍狼には狐族の装備が乗っているかもしれませんが⤴?

偶然じゃあしょうがありませんからねぇ⤴?」


ダン:

「お前の考えは分かった。

厚意に少しでも感謝した俺がバカだった。」


ユキは取り敢えずムカついたので、ダンをはたいた。


ダン:

「痛ぁ!?」


ユキ:

「そういうワケなので、ゲンタ。

今から貴方は軍狼を最低でも5匹は確保する必要があります。

隊の他の大狼を連れて行っても大丈夫なので、縁もゆかりもない他人を乗せても大丈夫な奴を用意してきて下さい。

あ、勿論、隊の大狼が、そんな軍狼になれるように躾けても下さいね。

えー、つまり軍狼を実質10匹用意する必要があるワケです。

1週間はあげますから、頑張ってみて下さい。

足りなかったら・・・そうですね、足りなかった数だけ抜歯でもしましょうか?」


ゲンタは心底面倒臭そうに溜息をついた。

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