アンテスロム氏族集落 拠点シーン1
<あらすじ>
ユキ、帰還。
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ユキは拠点の集落に帰還すると、いの一番に直属の上司である百人長のデナグドに会いに行った。
─────調練場─────
デナグド:
「やぁ、早かったね。」
ユキ:
「おや、驚かないんですね。」
デナグド:
「まぁ、エディ様が目を付けてる子だしね。
死ぬことは無いと思ってたよ。
・・・まぁ、五人隊が一人も欠けていないことには ちょっと驚いたけどね。」
ユキ:
「まぁ、それは私も驚きました。
どうも彼らは悪運が強いようです。
ダフネル(ユキが世話になっている鍛冶屋の主)も見る目がありますね。」
デナグド:
「巡り合わせだと思うよ。
それより報告を聞こうか?」
ユキは荷物から革の袋を取り出した。
開くと、中には一人の男の首が入っていた。
ユキ:
「今回の首魁の首です。
納めて下さい。」
デナグドは首を検分する。
デナグド:
「・・・驚いた。
これはアーギバルト族(余所の部族)の中でも名の知れた五百人隊長だよ。
部族長の命令でしか動かないはずなんだけど・・・。」
ユキ:
「つまり、今回の侵攻は部族を挙げた本格的なものというワケですね。」
デナグド:
「・・・上に報告しておくよ。」
ユキ:
「私の予想を言いますね。
動かないと思いますよ?」
デナグド:
「それでも義務だからね。
・・・ここからは百人長としてじゃなくて私個人の意見だけど、動けないっていうのが本音だと思う。
後手に回るようだけど、こういう場合ここみたいな末端じゃなくて要所要所に戦力を固めて守りに入った方が賢明だからね。」
ユキ:
「考え方は分かりますが、今回の場合は攻めた方が私としては面白いです。
というわけでデナグド百人長、私が より楽しめるように十人長の席を下さい。」
デナグド:
「・・・これでも私は大人だからね。
子供の一人や二人から お菓子をねだられたことくらいはあるよ?
でも、隊長の位を無心されるのは初めてかな。」
ユキ:
「えぇ~、デナグド百人長~。
十人隊長の位が欲しいです~。」
デナグド:
「ホントに子供みたいにねだらなくても・・・。
・・・いいよ、十人隊長の位くらいくれてあげるよ。」
ユキ:
「お、相変わらず話が分かりますね。」
デナグド:
「・・・まぁ、この前一枠空いたところだったから丁度良かったかな。」
デナグドはボソッと呟いた。
デナグド:
「でも、悪いけど隊員を割くことは出来ないかな。
戦功は戦功でも、独断専行による戦功だからね。
あげるのは位だけ。
実が無いことをもって、今回の賞与と懲罰とするよ。」
ダン:
「デナグドさん、流石にそれでは・・・!」
今まで後ろで黙って話を聞いていたダンが思わず声を上げた。
ユキ:
「いいんですよ、ダン。
隊員には宛てがあります。
・・・一応聞いておきますけど、デナグド百人長?
隊員は勝手に増やしても構わないんですよね?」
デナグド:
「う~ん、正式には無理なんだけど、裏技があってね。
十人隊長は、戦士の任命こそ出来ないんだけど、部隊の維持に必要な人手を雇う権限はあるんだ。
だから、”建前上では非戦闘員という形なら”隊員を増やすことが出来るよ。」
ユキ:
「おぉ!
それは良いことを聞きました!
クソ真面目その2の割には使えますね!」
デナグド:
「・・・うん、決闘で負けた以上、文句も言えないや。
ホント、ユキちゃんってエディ様そっくりだよね。」
ユキ:
「いやぁ・・・それほどでもありますよ。」
デナグド:
「褒めてないんだけどね・・・。」
ユキ:
「お!
言うようになったじゃないですか。
お~い、エディ~!
デナグド百人長が悪口言ってますよぉ~!」
デナグド:
「止めて!
私が悪かったから!
本気で止めて!
殺されるって!」
ユキ:
「誉ってやつですよ。
甘んじて受け入れて下さい。」
デナグド:
「ユキちゃん・・・実際に起こるのは蹂躙であって、そこに誉は無いんだよ・・・。」
デナグドの目から光が消えた。
デナグドの過去に何があったのかユキは知らないが、きっとエディに殺されかけたのだろうと何となく察した。
そうしてデナグドから十人隊長の位を毟り取ったユキは、直属の上司にあたるデナグドへの別れの挨拶もそこそこに、その足で部下達を引き連れて装備の補給に向かった。
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薬屋、鍛冶屋、市場、皮剥屋などを回って、補給を任せたミランダと物資の管理を任せたジャグ、そしてそれらを知っておく必要のあるダンと認識の擦り合わせを行った。
結果、今後はユキ自らがわざわざ補給を考えなくてよさそうになった。
ユキは楽になったと躰を伸ばした。
一通り擦り合わせを終えると、ユキ達はデナグドの百人隊の営地を間借りする形で一夜を過ごした。




