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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
80/110

帰還シーン1

<あらすじ>

 ユキとその部下達の獅子奮迅の活躍により、敵全滅。

帰路につく。


────────────────────


一日目。


徹夜した形になったユキ達だったが、初陣ということもあり少し興奮しており、あまり疲れは感じなかった。


日が出てくるとようやく腹が減っていることを思い出したくらいだ。


干し肉を戻して食べる。


ダン:

「何だか実感が湧かないな。」


ミランダ:

「ホントにね~。」


部下達が干し肉を囓りながら話し出した。


ユキ:

「何がですか?」


ダン:

「昨日あれだけ戦ったというのに、まだ戦功を上げたという実感が湧かないんだ。」


実感が湧かないと言うが、実際には五人隊で500は殺しており、大戦果と言って差し支え無かった。


ユキ:

「まぁ、水を差すようですが、実際には戦功なんて無かったことにされると思いますよ?」


ジャグ:

「えぇ・・・あんなに死にそうな目に遭ったのに・・・。」


ジャグが露骨に嫌そうな顔をする。


ユキ:

「そもそも今回の戦闘自体、無かったことなんです。

敵は運悪く強力な魔物にでも遭遇してしまい、勝手に自滅した。

・・・それが公的な記録になると思います。」


ダン:

「相手も勝手に侵攻した手前表沙汰にすることも出来ず、こちらも厄介ごとは御免だから見なかったことにする・・・。

そういうことか?」


ユキ:

「まぁ、相手は言い掛かりをつけてくると思いますけどね。」


ダン:

「・・・なんだ、ということは今回の戦いは無駄だったということか?

鏃を幾つか無くしたのだが・・・。」


ユキ:

「鏃くらい幾らでも手に入るようになりますよ。

というか、これからが本番です。」


ダン:

「・・・というと?」


ユキ:

「帰ったら、私はデナグド百人長に掛け合って十人長の椅子に座らせて貰います。」


ダン:

「・・・確かに決闘で負けた上に曲がりなりにも今回の戦果・・・。

デナグドさんも飲まざるを得ないだろうな。

そうなるとお遊びみたいな五人隊長から、本当の隊長とも言える十人隊長になるワケか・・・。

・・・もうユキと呼び捨てにすることは出来んな。」


ユキ:

「私は別に構いませんけどね。」


ダン:

「風紀に関わる。

蔑ろには出来ない。」


ユキ:

「相変わらずバカ真面目ですね。

まぁ、好きにすればいいです。

私が十人隊長になれば、貴方が副官です。

そこら辺は任せますよ。」


ダン:

「俺が?」


ユキ:

「貴方は他3人を指揮し、確かに死地から生還しました。

その価値はあるでしょう?」


ジャグ:

「俺はいいと思うな。」


ミランダ:

「私も~。」


ビンド:

「残りの干し肉食べていい?」


ユキ:

「えぇ、構いませんよ。

・・・他にも色々考えていることはありますが、そこら辺は帰ってからにしましょう。

今言っても取らぬ狸の皮算用ですからね。」


ユキはそう言って話を切り上げると、取り分の干し肉を平らげた。


ユキ:

「・・・ところでダン、昨日聞き損ねた気がするので聞いておきますが、好きな遊びは何ですか?」


ダン:

「・・・特に。」


ユキ:

「ダ、ダン・・・。」


ダン:

「・・・。」


衝撃の事実が発覚したところでユキ達は狼に乗って移動し始めた。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


移動中、ユキ達に樹木が倒れてきた。


巻き込まれたのは・・・ユキだ。


ユキは身体強化の技法で筋力を強化して、倒木を受け止める。


結構な太さの倒木なので、下を支えていたゲンタにも尋常ではない負担が掛かり、一瞬体勢を崩しかける。


【倒木よ、軽くなれ】


その時、ゲンタの口から呪文が紡がれた。


すると尋常ではない重さだった倒木が突然軽くなり、ユキは難なく押し返すことが出来た。


倒木が、その本来の質量からおよそ考えられる着地音とは程遠いソフトな音を出す。


具体的に言うと、雪がサクッといった。


ユキ:

「・・・貴方、魔法が使えたんですか?」


ゲンタ:

「・・・。」


ゲンタは答えない。


獣なのだから、当然である。


ちなみに、魔法の呪文を構成する魔法語はプログラム言語のようなもので、会話には絶望的に向かない。


魔物は先天的に魔法が使え、またゲンタも魔物なのだから魔法を使えて当然なのだが、最初に殺し合ったときにもゲンタは魔法を使わなかったので、ユキはてっきり使えないものだと勘違いしていた。


ユキ:

「ふむ・・・重量を弄る魔法ですか・・・。

暗黒神由来のものですかね。」


暗黒神とは正体不明の外なる神の一柱であり、重力を中心とした宇宙由来の力を司る。


見ればゲンタの体毛は美しいほどの純黒であり、体毛や見た目が先天的に使える魔法の影響を受けることを考えると、その可能性は十分にあると言えた。


ユキ:

「それにしてもせっかく魔法が使えるのに、どうして私と殺し合ったときには使わなかったんです?

もしかして自信が無いとか?」


ゲンタ:

「・・・。」


ゲンタはフイッと視線を逸らした。


短い付き合いだが、それがユキにはゲンタが図星のときの反応だと分かった。


この狼は賢いので、こちらの言葉を理解している節がある。


そのことを考えると、確かに魔法に自信が無いのだろう。


ユキ:

「フンッ、当ててあげますよ。

あれですよね、今まで魔法を使わなくても自前のフィジカルでどうにかなっていたので魔法を使って戦闘した経験がないんでしょう?」


ゲンタ:

「・・・。」


ゲンタは「分かるのか?」とでも言いたげな目を向けてきた。


ユキ:

「フフン、何を隠そう私も戦闘で魔法を使ったことは無いんですよね。

エディや飢爺に戦士になるまでは・・・って初級魔法以上を覚えるのを禁止されていたんですよ。

フフッ、これから一緒に魔法を使っていきましょうね~。」


魔法を解禁されたユキは、仲間を見つけたと言わんばかりに馴れ馴れしくゲンタを撫でた。


何だかバツの悪い気分だったゲンタは、ユキのされるがままにされている。


一頻り撫でると、ユキは部下達の無事を確認し、移動を続けた。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


日が暮れてくると、ユキ達は焚き火を囲んだ。


一番近いところにはユキとゲンタが陣取り、次いで部下達とその狼といった感じだ。


ユキは焚き火の熱で暖まりながら鼻をピスピスさせて寝ているゲンタをソファにしながら、部下達と話をした。


話題は・・・狩りについて。


ユキ:

「貴方達は今まで狩りをしたことがありますか?」


ダン:

「あまり無いな。

皆も似たようなものじゃないか?」


ジャグ:

「え、やるけど。」


ミランダ:

「私も~。」


ビンド:

「僕はダンと同じ感覚かな。」


綺麗に2対2に別れた。


ダンは少し驚いている。


ダン:

「そうなのか?

戦士見習いをしていて食べるに困ることは無いと思うが・・・。」


ジャグ:

「それはダン達の実家が太いからだよ。

僕らみたいな孤児は配給の食糧だけじゃカツカツなんだよ。」


ミランダ:

「その通り~。」


ビンド:

「ユキの下についてから初めて亜竜を相手に狩りをしたけど、大変だね、アレ。

僕、解体のとき体液まみれになっちゃった。」


ダン:

「うん・・・話が変わったな。

だが確かに大変だった。

調練で雪鹿や雪蛞蝓を解体したときの比では無かったな。」


ジャグ:

「流石にアレは俺らも初めてやったかな。

亜竜なんて普通は最低でも十人隊で相手するもんじゃないの?

俺ら死にかけたんだけど?」


ユキ:

「アレは傑作でしたね。」


ジャグ:

「オイ。」


ユキ:

「まぁ、冗談は程々にして・・・。

ですがウチでは狩りといえば亜竜みたいなとこありますからね。

普通じゃないですか。」


ジャグ:

「ウチってどこだよ。」


ユキ:

「エディがそう言ってましたけど?」


ジャグ:

「うげっ、あの婆さん出典かよ。

ダン、これは大変そうだぞ?」


ダン:

「そうなのか?」


ミランダ:

「私はあの人好きだけどぉ~?

・・・小さい頃、良く肉を食べさせてくれたっけ・・・。」


ユキ:

「ミランダ・・・それはきっと、残飯処理を押しつけられただけですよ。」


ジャグ:

「うん・・・俺もそう思う・・・。」


ミランダ:

「肉は肉だよぉ~。」


ユキ:

「まぁ・・・そうですね。」


ジャグ:

「それで納得するんかい。」


話が逸れに逸れたが、そんな話題で盛り上がった。


やがて夜も更け、夜番の順番を決めて寝る。


夜間には・・・ユキ達は悪夢を見るハメになった。


悪夢にも色々あり、自然に見る悪夢と魔法による悪夢、神格の干渉によって引き起こされる悪夢などがある。


今回の場合は災害に近い神格の干渉によって引き起こされる悪夢であり、この悪夢は夢を見る人間の正気を失わせる効果がある。


正に災害だった。


今回正気を失ったのは・・・ミランダの狼とジャグとビンドの狼以外の全員だ。


皆泣いたり笑ったり、恐怖したり激高したり、明らかに正気では無い様子だ。


ゲンタに至っては何か涎をダラダラ垂らして目を血走らせ、明らかに殺す気で寝ぼけている。


ユキは仕方が無いので、ゲンタに容赦の無い数メートル吹き飛ばすレベルの拳を食らわせて正気に戻しつつ、他の2匹と1人に皆を正気に戻すよう指示を出した。


こうして朝日が昇るまで、ユキを含めた正気組は、他のメンバーをボコボコにし続けた。


幸い死者は出なかったが、死者を出さないために少なくない治癒の水薬を消費するハメになった。

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