薬神の洞窟(タイプγ) シーン1
<あらすじ>
遥々三日かけて歩いた先で、夜襲という手厚い歓迎を受ける。
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夜襲を受けたユキの行動は早く、敵の首を晒すと休むことなく目的地に向かった。
目的地である薬神の洞窟は夜襲を受けた場所から程近く、ユキ達は直ぐにその全容を見ることが出来た。
占拠された薬神の洞窟は岩山の中に張り巡らされた形で存在しており、天然の要塞になっている。
実際、焚火が設置され、松明を持った敵の戦士達が巡回する薬神の洞窟は、正に要塞だった。
戦士達の数は多く、百人どころかそれ以上居るように見える。
ユキ:
「チッ、最悪の想定が当たりましたね。
あのアマ、次あったら背骨引っこ抜いてやります。」
ダン:
「どうする、ユキ。」
ユキは誤情報を掴ませたティアを一回殺すと決めると、ダンの質問に答えた。
ユキ:
「幸いにして、あちらが我々に気づいた様子はありません。
・・・そのふりをしている可能性もありますが、ま、そこまで考えても仕方ないでしょう。」
ユキは岩山の上を指さした。
ユキ:
「掃除と同じです。
上から順に殺していきます。」
続いて真正面の大きな洞穴を指さした。
ユキ:
「侵入経路はあそこです。」
ジャグ:
「正面突撃ってこと?
それは危ないんじゃない?
それよりホラ、あの見えにくい位置にある洞穴からの方が良いと思う。」
ユキ:
「・・・一理ありますが、今回は危ないと思います。」
ユキは部下達の前で地図を広げた。
ユキ:
「・・・ここを見て下さい。
ジャグの言う洞穴は、見えにくい位置にある上に道が細く、確かに奇襲するには絶好の横穴です。
ですが逆に言えば、ここは罠を張るには絶好のポイントということでもあります。」
ダン:
「・・・罠があると?
だが前情報では───」
ユキ:
「仕入れた私が言うのも何ですが、百人隊と聞いてきた部隊規模が数百人規模だった時点で、前情報などゴミ同然です。
だからこそ、仮に罠があっても対応出来るド真ん中を突っ切るのが今回の最適解です。」
ダン:
「まぁ・・・相手もまさか五人隊が正面から攻めてくるとは思うまい・・・。
意表は突けるかもな。」
ユキ:
「そんな意図はありませんが・・・まぁ仕掛ければ後はスピード勝負です。
賽を投げましょうか。」
騎獣のオオカミ達に、ゲンタも含め待機を指示した。
ユキは弓を取り出した。
部下にも弓を出させ、全員で引き絞る。
巡回の戦士が通り過ぎたタイミングを狙って、ユキ達は見張りに斉射した。
数人居た見張りが矢を受けて倒れる。
息があり、声を出そうとした見張りも居たが、ユキが電光石火の早業で口を封じた。
ユキ:
「・・・いきますよ。」
ユキは見張りの屍体を、部下達に茂みに隠させると、そう声を掛けた。
そこからは流れ作業で、巡回の戦士に出会う度に矢を射かけたり、ユキが手持ちの投げ槍を投げ込んだりして先制をとり、混乱している間に部下をけしかけて全滅させた。
夜闇ということで奇襲がよく効き、岩山の上から襲撃を警戒していた見張り達を難なく血祭りにあげることが出来た。
既にユキ達は百人以上殺していた。
上が片付いたことを確認すると、ユキ達は得物を整備しつつ外回りの敵を上から確認した。
外回りの見張りをしていた敵の戦士達は、本営に居るはずの見張りが見えないことに困惑している様子で、このままでは雑に隠した屍体が見つかることは一目瞭然だった。
ユキ:
「・・・ダン、他の3人を指揮して薬神の洞窟内の残党を始末して下さい。」
ダン:
「!
・・・それは───」
ユキ:
「二度は言いません。
まかせましたよ。」
ユキはそう言うと、岩山の天然の見張り台から飛び降り、外回りの見張りの戦士達の前に降り立った。
結構な高さから、尋常ではない速度で落下したので、衝撃で地面が割れ、近くにいた大の大人の戦士達が吹き飛ぶ。
ユキ:
「こんばんわ。
そして、死ね!」
ユキは茫然としていた近くの戦士の顔を殴って潰し、そのままの勢いで更に近くに居た戦士の腹を蹴って貫いた。
そこでようやく敵襲を悟ったらしい敵戦士が、各々の得物を取り出しユキに襲い掛かってきた。
中には声を出して敵襲を本営に知らせる者もいたが、洞穴から敵が湧き出してくる様子は今のところ無い。
部下達は上手くやっているようだ。
ユキはうるさい奴らの内臓を引き摺り出し、剣を向けてくる奴らの頭蓋を砕いた。
1対300前後という、リンチにしてもやりすぎな様相だが、ユキは縦横無尽に動き回り、段々とその破壊力が増して一挙一動で十数の屍体が出来上がるようになっていった。
その頃になってユキの様子がおかしくなり始める。
まるで獣のように成り果てたユキは、歓喜の声を上げながら敵を殲滅した。
ユキ:
「アハッ!
アハハッ!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハッハハ!!!
もっと!
もっと!!
もっと!!!
モッッット!!!!」
気が付けばユキの足元には無数の屍体が折り重なって山が出来ていた。
血の味がユキの口の中に広がった。
内臓の温かさがユキの身体の芯に伝わってきた。
骨を砕く感覚が、甘美だった。
気分が良い。
ユキは笑うように、屍体の山の頂上で咆哮を上げた。
サイコーな気分だった。
???:
「・・・驚いた。
こんなところにかような魔物がいようとは。」
ユキは飛んできた矢を直感的に掴み取った。
矢を二つに折りながら、声がした方を見る。
見れば、十人くらいの戦士に囲まれた一人の男が、静かな目をユキに向けていた。
男:
「殺せ。」
男がそう言うと、男を囲んでいた戦士達は、一斉にユキに向かってくる。
練度が今までに築き上げた屍の比では無かった。
ユキは、この男と十人の戦士達が、今回の敵の真髄だと悟った。
決して残党ではない。
ユキは敵の攻撃を凌ぎながら岩山の方を見た。
部下達はやられてしまったのだろうか。
一瞬頭によぎる。
しかし、直ぐにその考えを振り払った。
そんなものは後で確認すれば良いことだ。
ユキは強引に、一番近くに居た精鋭の頸を掴むと、その骨を折り、致命傷を与え、更に近くに居た精鋭に投げつけた。
やはり練度が高く、死に掛けの仲間といえど情けをかけることなく躱し、ユキに一撃入れようと構えてくる。
しかし視界が一瞬、仲間の屍体に隠れてしまった。
屍体を投げると同時に踏み込んでいたユキは、既に精鋭の構えの懐に入り込んでしまっている。
次の瞬間、精鋭の胸が貫かれ血飛沫を上げた。
後方に居た精鋭の顔に血飛沫が掛かる。
視界が利かなくなる。
それを見逃すユキでは無かった。
カバーに入ろうとする他の精鋭を咆哮の音圧で吹き飛ばすと、そのまま視界を塞がれた精鋭に迫り、掴み掛り、その肉体を硬い地面に叩きつけた。
およそ人が耐えうる速度を遥かに超えた速度で硬い地面に叩きつけられた精鋭は、その肉や骨が弾け、天然の手榴弾になった。
それで数人の精鋭が負傷する。
しかしそれだけでは終わらず、飛び散った血液が煙幕となり、精鋭達の視界を塞いだ。
当然ユキの視界も塞がれる。
しかしユキは、カンで全ての精鋭達の場所を当てると、その命を奪った。
精鋭:
「・・・見事。」
最後の精鋭の命を奪ったとき、そんな声が聞こえた。
視界が晴れると、それが精鋭に囲まれていた男だと気付いた。
どうやら精鋭に混じって指揮をとっていたようだ。
他の精鋭と動きが遜色なく、ユキは全く気が付かなった。
個人としての戦闘能力はユキの直属の上司にあたる百人長のデナグドに劣るが、集団として戦うということに関しては恐らくデナグドより上だろうと思えた。
ユキは敬意と共に、その首を引き千切った。
この男の首なら、最高の手土産になると思ったのだ。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
ユキが残党を始末し、手土産として持って帰る男の首を革で包んでいると、不意に後ろから声が聞こえた。
見れば、薬神の洞窟から4人の部下が五体満足で出てきたところだった。
傷だらけな上、戦塵に塗れているが、確かに生きていた。
悪運が強い奴らだと、ユキは思った。
ダン:
「・・・こっちは全て片付いた。
そっちは・・・聞くまでもないか。」
ユキ:
「えぇ、全て始末しました。
サイコーでしたよ?」
ダン:
「そうか・・・。」
ジャグ:
「何人も何人も出てきて死ぬかと思ったよ!
囲まれたときなんて絶対終わったと思った!」
ミランダ:
「まぁまぁ。
皆無事で良かったじゃ~ん。」
ビンド:
「ホントにね。
最低でも数人は死ぬと思ってたし。」
ビンドが、いつもの天然さからは想像できないようなシビアなことを言う。
ユキ:
「実際私も死んだかと思ってました。
ていうか、こっちに本営から首領が来てたんですけど?」
ユキは革に包まれた男の首を掲げた。
推定隊長だが、ユキは十中八九そうだろうと見ていた。
ダン:
「・・・そんなような戦士には会ってないな。
入れ違ったのか?」
ジャグ:
「あっぶな!!」
ミランダ:
「ユキちゃん、隊長さんどうだった?」
ユキ:
「強かったですよ。
恐らく、集団戦ではデナグド百人長以上です。」
ミランダ:
「わぁ!
ビックリだね!」
ユキ:
「ホントですよ・・・。」
言うことも言ったので、ユキは首を荷物に仕舞い、ゲンタ達騎獣を呼び寄せて帰路についた。




