移動シーン1
・薬神の迷宮 -> 薬神の洞窟
<あらすじ>
世話になっていたデナグド百人長を殴る。
────────────────────
─────調練場─────
百人長であるデナグドを張り倒したユキは、調練場の宿泊施設に泊まり翌日を迎えた。
日の出と共に起きたユキは、死んだように眠っていた部下達を叩き起こした。
そして昨日の事を話す。
ユキ:
「───というワケで、早速薬神の洞窟に殴り込みます。」
ダン:
「信じられん・・・あのデナグドさんから一本とるとは・・・。」
ユキ:
「確かに強かったです。
今まで私が戦った相手の中で五本の指に入りますね。」
ダン:
「そうか・・・。」
ミランダ:
「すご~い、ユキちゃん!」
ジャグ:
「え~・・・。」
ビンド:
「薬神の洞窟、楽しみだな。」
思い思いの反応を見せる部下とその騎獣の狼を連れ、ユキは鍛冶屋に向かった。
─────鍛冶屋─────
ユキ:
「ダフネル、居ますかぁ!?」
ダフネル:
「うるさいぞ!
このクソガキがぁ!!」
ユキはダフネルに、部下達と自分の騎獣の鞍と鞄を頼んだ。
ダフネルは在庫から適当な鞍と鞄を見繕ってくれた。
ただ、ゲンタの狼具(馬具の狼版)だけがサイズが無く、少し調整が必要だった。
しかしやがて、全員の狼具が揃うと、ユキはダフネルが満足するだけの価値ある素材を渡し、鍛冶屋を立ち去った。
────────────────────
鍛冶屋の他にも皮剥屋や薬屋などで軍需物資を揃えると、ユキは部下を連れて薬神の洞窟に向かった。
近所の薬神の洞窟までの距離は・・・3日だ。
ユキ達は五騎で並んで樹海の中を進む。
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
移動中、ユキ達は魔物に遭遇した。
遭遇した魔物は・・・氷堅頭竜だ。
【ユキの手帳】
・氷堅頭竜
破壊力のバケモノ。
頭突きで巨岩を砕き、尻尾で樹木を伐採する。
まともに相手にすると死ぬので、急所を突いてさっさと仕留めるのが吉。
肉は固めで、しっかりとした下処理をしないとまともに食べることが出来ない。
しっかりと下処理した肉には歯応えがあり旨味が強い上等な肉になる。
肉は燻製にするか、ステーキにするのがオススメ。
実は一番美味いのは硬い頭骨に守られた脳。
塩ゆでにすると絶品。
────────────────────
数は・・・3体だ。
少なめの群れだ。
ユキは部下に指示を出し、3体の内2体をビンドとミランダに足止めさせ、残りのジャグとダンを引き連れて1体ずつ仕留めることにした。
ビンドとミランダが2体の攪乱をしている内に、ジャグとダンを1体に差し向け、その強大な破壊力を封じ込めると、ユキは氷堅頭竜にタックルするゲンタの勢いに乗った上で、鞍の上から氷堅頭竜に飛び乗り、その勢いで氷堅頭竜の首に組み付くと、その喉を噛み千切った。
血飛沫を上げて倒れ伏す氷堅頭竜。
残り2体。
ゲンタの上に戻り、二人の部下と合流すると、ユキは足止めを任せたビンドとミランダの方を見た。
ビンドの方から攪乱を無視した氷堅頭竜が向かってくる。
ミランダは・・・やられてる。
このままでは危ない。
ユキはミランダの方にダンとジャグを差し向けると、一騎でビンドの方から向かってきた氷堅頭竜に対した。
ビンドはミランダの方に向かわせた。
ユキの方に向かっている氷堅頭竜は、分厚い頭骨を前に出し、頭突きの構えを崩さない。
まともにぶつかるとゲンタ共々吹き飛ばされるのは間違い無かった。
ユキはゲンタに指示を出し、その鞍から横に飛んだ。
ゲンタはその逆に飛ぶ。
氷堅頭竜の進行方向が空いた形になった。
ゲンタはその牙を氷堅頭竜の足に食い込ませ、その足を止めると、ユキがその上から氷堅頭竜の頭骨に拳をめり込ませる。
氷堅頭竜は地面に、もの凄い勢いで倒れ伏した。
あまりの勢いに雪が舞い、その下の地面が砕けた。
流石の氷堅頭竜の頭骨も、その威力に耐えうることが出来ず、頭頂部から砕け、その生命活動を停止した。
ゲンタがユキの傍らに戻る。
ユキが残りの1体の方を見ると、部下の4人が氷堅頭竜相手にボロ雑巾にされているところだった。
調練の成果か、生来の悪運か、何とか致命傷は避けられているが全滅は時間の問題というところだった。
ゲンタがユキに視線を向けるが、ユキはそれを手で制して、地面を強く踏み込んだ。
大地が砕けるほどの加速をもって、ユキは一瞬で暴れる氷堅頭竜の懐に潜り込むと、その柔らかな腹部に拳の一撃を叩き込んだ。
奥義、一閃。
轟音と共に、内臓がグチャグチャになった氷堅頭竜は吹き飛び、絶命した。
ゲンタを連れて、ボロ雑巾になった部下達に治癒の水薬を飲ませたり掛けたりすると、ユキは仕留めた氷堅頭竜の解体を命じた。
ユキは這々の体で解体を進める部下達を尻目に、荷物から”浮遊の魔法書”を取り出し、座り込んだゲンタを背もたれにして読み込んだ。
ユキは浮遊の魔法を覚えた!
・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・
ユキ:
「まぁ・・・上等じゃないですか?
まともに暴れる氷堅頭竜相手に生き残っただけでも大したものですよ。」
ダン:
「だが・・・結局一体も仕留められなかった。」
ユキ達は何時もより大きな焚き火を囲んで、仕留めた氷堅頭竜の肉を口にしていた。
下処理に随分と手間が掛かり、すっかり夜になってしまった。
ユキはすっかり意気消沈してしまったダンのメンタルケアをしている。
他の面々も口数が少ないが、ダンほど落ち込んではいない。
特にビンドは氷堅頭竜の肉の味に舌鼓を打ち、食べ方を工夫するだけの余裕があった。
ダン:
「お前は3体全てを仕留めたのに・・・惨めなものだ。」
ユキ:
「それは私と比べるからですよ。
私ほど凄い存在と比べると、誰でも惨めになってしまうものです。」
ダン:
「・・・お前の自己評価の高さは何なんだ?」
ユキ:
「さぁ?
物心ついた頃にはこうでしたね。」
ユキは氷堅頭竜のステーキを口に入れた。
強い旨味が口の中に広がる。
ユキ:
「これからですよ、これから。
氷堅頭竜相手に生き残れるだけのタマがあるなら、明日も生き残れます。
生き残れるということは、成長出来るということです。
一年後には氷堅頭竜など楽なものですよ。」
ダン:
「・・・そういうものか。」
ユキ:
「そういうものですよ。
さ、今はコレを食べてしまいましょう。
いつか、私に貴方が仕留めたものを出して下さいね。」
ダン:
「あぁ。」
ダンは少しスッキリした様子で肉を口に運んだ。




