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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
76/110

シーン2

<あらすじ>

 怪しい行商人であるティアと魔法書を取引する。


────────────────────


ユキ:

「あ、塩のことをまた忘れていました・・・。」


ユキは市場を出た辺りで、前々から買おう買おうと思っていた調味料の塩のことを思い出した。


今更戻るのは面倒なので、ユキは今回に限っては塩を諦めた。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


ユキが消耗品を補充して調練場に向かっていると、不意に地響きをユキは感じた。


見れば十騎の狼がユキの方に向かってきていた。


十騎の狼はユキの周りを囲むように展開すると、十騎の内一騎から一人降りてきた。


狼から降りた男:

「・・・私のことを覚えているか?」


歴戦の雰囲気を漂わせる男は、ユキにそう尋ねた。


ユキは少し考え、男のことを思い出そうとした。


しかし本当に思い出せない。


ユキ:

「覚えてないですね。

出直してきて下さい。」


ユキに忘れられていた男:

「・・・貴様に一杯食わされた、調練場で教官をしている者だ。」


ユキ:

「あー、あの運がナメクジな雑魚。

その節はどうも。」


運がナメクジな雑魚:

「・・・貴様に決闘を申し込む。

逃げることは許さん。」


ユキ:

「面倒臭いですね・・・。

名誉のためですか?」


ユキに決闘を申し込んだ男:

「そうだ。

誇りのために、貴様を殺す。」


ユキ:

「はぁー。

・・・いいでしょう。

二度と面倒を起こせないよう、確実に息の根を止めてあげます。」


ユキは荷物を足下に降ろし、男に対して構えた。


そして指先をクイッと曲げて挑発した。


男が殺気立って抜刀した。


一瞬の内に踏み込み、突き殺す形でユキの懐に入り込む。


しかしユキは、男の剣を手の甲で弾くと、その腹部に膝蹴りを食らわせた。


男は血反吐を吐いて後退する。


そこをユキは頭を肘打ちして地面に叩き付けた。


ユキ:

「立て、雑魚。

このままでは惨めだぞ?」


男は跳ねるように起き上がると、そのままユキに斬りかかった。


ユキは上体を反らして剣戟を躱すと、その勢いのままバク転で距離をとった。


そして地面に足をつくと、強く踏み込んで男に飛び膝蹴りを食らわせた。


男は吹き飛び、ユキ達の周りを囲む戦士の内の一人を巻き込んだ。


包囲網が少し歪む。


ユキは男の方に一瞬で移動すると、倒れ込んだ男の腹部を強く踏んだ。


ユキ:

「起きろ。

楽に死ねると思うな。」


男はユキが腹部をもう一度踏み潰そうとした瞬間に横に転がって逃れ、立ち上がると我武者羅にユキに殴り掛かった。


男の拳を掴むと、ユキは男を投げ飛ばした。


あまりの勢いに地面が少し砕けた。


仰向けになった男の、今度は顔面を踏み潰そうとしたとき、不意に背後の男の部下と思われる戦士が斬りかかってきた。


ユキは起き上がろうとする男を蹴り飛ばすと、斬りかかってきた戦士の剣を手の甲で受ける。


戦士の剣は、ユキの籠手に容易く受け止められた。


ユキは何を言うでもなく、無言で斬りかかってきた戦士の顔面を殴った。


戦士は容易く気絶し、決闘を挑んできた男は骨を折ったのか上手く立ち上がることが出来ずにいる。


ユキ:

「・・・せっかく気分がノってきたのに、萎えました。

殺す価値もありません。

出直してきて下さい。」


ユキはそういうと、荷物を回収して、周囲の戦士達を押し除けて包囲網を出て行った。


包囲網の外では、騎獣のゲンタが暇そうに欠伸をしていた。


ユキ:

「主人が襲われてたのに暢気なものですね、この黒んぼ。」


ユキは少し腹が立ったので、ゲンタをなじるようにしつこく小突いた。


ゲンタは迷惑そうな目をしている。


余計腹が立ったユキは、ユキの頬をワシワシしてやった。


逆らっても無駄なことを悟っているのか、ゲンタはされるままになっていた。


─────調練場─────


調練場に行くと、直属の上司であるデナグド百人長が待っていた。


デナグド:

「待っていたよ。

・・・部下が迷惑を掛けたようだね。」


決闘を挑んできた男のことを把握しているらしいデナグドはユキに謝罪した。


ユキ:

「気にしていませんよ。

それより部下達は揃っていますか?」


デナグド:

「あぁ・・・2人だけだけどね。

あと2人はもう少し掛かるんじゃないかな。」


デナグド曰く、ダンとビンドが帰還していて、ミランダとジャグがまだらしい。


ユキ:

「はぁ・・・じゃあ2人を呼んで貰えますか?」


デナグド:

「分かったよ。」


デナグドは近くを通りかかった部下に頼んで2人を連れてこさせた。


ダン:

「・・・遅かったな。」


ビンド:

「久しぶりだね、ユキ。

・・・いや、ユキ隊長と呼ぶべきかな?」


2人はそれぞれ自分の騎獣となった狼を連れていた。


ダンの狼は主人に似て真面目そうな狼で、ビンドの狼も主人に似てとぼけた顔をしていた。


ゲンタが睨み付けると、ダンの狼は萎縮して伏せる姿勢をとり、ビントの狼はよく分かっていないらしく、狼の挨拶にあたる尻を嗅ぐ行為をした。


しかしどちらが上の立場にあたるは自然と分かっているのか、ビントの嗅ぎは明らかに短く、ゲンタが返礼として嗅ぐ時間は明らかに長かった。


尻を嗅ぐ時間が長いほうが、立場が上にあたる。


ゲンタはこの短時間で、2匹から自身が上だと認めさせた。


あるいは元々下で、久々に会っただけなのかもしれない。


ユキ:

「ダン、そのセリフは私のものですよ?

あとビンド、私は細かいことは気にしない主義です。

好きに呼んで貰って構いません。」


ビンド:

「そういうことなら。

ユキ。」


ユキ:

「そういうことです。

・・・さて、あと2人がくるまで親交を深めましょうか。」


そう言うと、ユキは二人を連れて、デナグドの指導の下調練に励んだ。


・・・。

・・・・・・。

・・・・・・・・・。


ミランダは一日後、ジャグは二日後に来た。


ミランダの狼も主人に似ておっとりして、ジャグの狼は神経質そうだ。


ミランダの狼はゲンタに対してビンドの狼と同じように尻を嗅ぐ挨拶をした。


やはりゲンタの方が嗅ぐ時間は長い。


ジャグの狼はゲンタを見た途端逃げようとしたが、流石に逃げ切れずに噛み付かれた挙句、マウントをとられていた。


・・・恐らくゲンタも神経質なところがあるので、同族嫌悪でソリが悪いのだろう。


そうなると自然と体格で劣るジャグの狼が圧迫される形になる。


とはいえどちらが上かを示しておくのは悪くない。


そういうワケで、ユキはゲンタの頭を押さえつけて大人しくさせた。


そうして全員揃った後、ユキは全員を使った、隊長としての調練をした。


過剰なほど密集した陣形で調練を行い、満足のいく出来になるまで調練を繰り返した。


やがて満足のいく動きになると、ユキの隊は一つの生き物のように動けるようになっていた。


ユキ:

「フフッ・・・隊長も悪くありませんね。

出来ることが増えて嬉しいですよ。」


デナグド:

「凄い調練だったね。

ウチも見習わないとなぁ・・・。」


実際ユキの調練は凄まじく、単調な動作の繰り返しでありながら調練場で他の隊を圧倒するほどの熱量を放っていた。


それだけに隊員の疲労は凄まじく、調練が終わる度に死んだように眠っていた。


今も、ユキこそピンピンしているが、他の隊員は死んだように眠っていた。


ユキ:

「まぁ、調練に関しては素人ですけど、集団戦闘でこれ以上ないという動きまで仕上げたと思います。

あとは実戦で経験を積むしかないですね。」


デナグド:

「そうかもね。

実戦無しだと練度にも限界があるし・・・。」


ユキ:

「そんなワケでデナグド百人長、相談があるのですが。」


デナグド:

「何かな?」


ユキは近くの薬神の迷宮の話をした。


そこに攻撃を掛けたい旨も伝えた。


それに対するデナグドの反応は芳しくなかった。


デナグド:

「悪いけど、ユキちゃん。

私はその作戦には賛成できないかな。」


ユキ:

「・・・理由を聞いても?」


デナグド:

「まず、五人隊で百人隊相当の戦力を相手にするなんて正気の沙汰じゃない。

最低でも五十人隊は欲しい。

次に、この話は既に上に通してあって、待機するように言われてる。

百人隊を預かる身として、傘下の五人隊の暴走を許すわけにはいかない。」


ユキ:

「つまり・・・ビビッてるわけですか?」


デナグド:

「・・・怯えてるワケじゃない。

ただ私は、百人隊長として正しくありたいだけだよ。」


ユキ:

「確かに百人隊長としては正しいですね。

でも、戦略的には致命的に誤りです。」


デナグド:

「・・・。」


ユキ:

「この集落は、このままでは早晩近くに巨大な外敵を抱えるハメになり、やがて貴方の大事な百人隊はゴミみたいに踏み潰されます。

貴方の言う上は、対応すら出来ません。

そしてやがて上すら食い殺されます。」


デナグド:

「・・・例えそうだとしても、私は命令に忠実でありたいと思っているよ。」


ユキ:

「救いようのない真面目ですね。

・・・いいでしょう。」


ユキはデナグドに表に出るよう言った。


ユキ:

「決闘です。

私が勝ったら、私の独断専行を黙認して貰います。

上には頭に血の上った若輩者の暴走とでも言えばいいでしょう。

古今東西、よくあることじゃないですか。」


デナグド:

「私が勝ったら?」


ユキ:

「此処で敵を待ち構えて、全員殺してやりますよ。」


デナグド:

「いいね、私も命拾い出来そうだよ。」


デナグドは剣を取って表に出た。


ユキも後に続く。


デナグドは部下に言って、人の垣根を作り出した。


ここの全員が決闘の証人ということだろう。


デナグド:

「条件はさっきので良いね。」


ユキ:

「勿論。」


ユキは拳を構え、デナグドは片手剣と木の円盾を構えた。


デナグドとユキから、陽炎のような揺らぎが発生した。


次の瞬間、ユキとデナグドの足場が砕け、二人の姿が消えた。


更に次の瞬間には二人は組み合っていた。


ユキの跳び蹴りをデナグドが円盾で受け、デナグドの剣をユキは籠手で弾いている。


二人は火花を散らしてすれ違い、その勢いのまま剣と拳がぶつかった。


衝撃で突風が生まれ、地面が陥没する。


暫く競り合っていたが、やがてユキがバックステップで下がり、デナグドが迫ってきたのに合わせて回し蹴りを食らわせた。


デナグドはそれを円盾で受けたが、勢いを殺しきることが出来ずに吹き飛ぶ。


しかし人の垣根にぶつかる前に、デナグドはバク転の要領で勢いを殺して立ち上がる。


そのまま地面を砕く程の勢いでユキに斬りかかる。


ユキはそれを籠手で弾いて逸らす。


逸らされて空を切った剣は、その勢いのまま地面を切り裂いて突き刺さり、デナグドはそれを軸にしてユキを蹴り飛ばした。


ユキは蹴り飛ばされた勢いを、爪を地面に突き刺して殺す。


そしてそのまま爪で地面を切り裂いて攻撃に転じ、ユキの爪は物理的な間合を超えた範囲を切り裂いた。


ユキから放たれた五本の剣筋に相当する爪撃を、デナグドは剣で全て弾いた。


しかしその防御は、デナグドの視界を塞いでしまう。


ユキはそれを利用して、次の瞬間にはデナグドの眼前に迫り、その顔面に一撃を食らわせた。


しかしデナグドも負けておらず、何とか踏みとどまると、強靱な意志で円盾の縁をユキの腹部に叩き込んだ。


両者、血反吐を吐く。


そして次の瞬間には両者距離をとる。


デナグド:

「・・・凄いね、ユキちゃん。

まさか私が子供と競り合うことがあるなんて思わなかったよ。」


ユキ:

「私もデナグド百人長のことを思いの外ナメていたかもしれません。

謝罪しますよ。」


決闘中とは思えない、和やかな空気が両者の間に流れる。


しかし観戦する人々をして、次の一撃が決着の一撃になるという予感があった。


ユキ:

「お詫びの印として、私のとっておきをお見せします。」


デナグド:

「いいね。

そのとっておきを叩き潰して泣きっ面を拝んであげるよ。」


ユキ:

「・・・フフッ・・・戦士らしくなってきたじゃないですか。」


デナグド:

「・・・そうかもね。

久しぶりに、戦士になれたかも。」


それで会話は終わりだった。


ユキの魔力が凶悪なまでに立ち上り、やがて静かになる。


その様を、デナグドは静かに眺めていた。


瞬きをする。


ユキの姿が消える。


円盾を構える。


硬い感触。


衝撃。


ユキが立っていた地面が弾け飛ぶ。


轟音。


突風。


挿絵(By みてみん)


デナグドは立っていた。


ユキは何時の間にかデナグドの後ろに立っていた。


デナグドが手に持っていた木の円盾は見るも無惨に砕けている。


デナグドが口から血を吐いた。


ユキ:

「”一閃”。

ただ速く、勢いのまま一撃を叩き込む。

それだけの奥義です。」


デナグド:

「フフッ・・・懐かしいな。

それでよくエディ様に叩き潰されたっけ・・・。」


デナグドは倒れた。


もう意識はない。


ユキ:

「誰かデナグド百人長の治療を!

速く薬を飲ませないと死にますよ!」


その言葉で周囲に一斉に動き出す。


介抱されるデナグドを見ながら、ユキはポーチから治癒の水薬を取り出して呷った。

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