シーン3
・<ユキの手帳>を気が向いたときに表示することに変更。
<あらすじ>
久しぶりに仲良しのおじいちゃんに会ったユキ、はしゃぐ。
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六日目。
─────孤児院─────
ユキは旧知の仲である飢爺と呼ばれる老人と、ネファタフルと呼ばれるチェスの亜種のようなボードゲームをして一夜を過ごした。
徹夜した形になるが、ユキの頭はグッスリ寝たのと同じように冴えていた。
結果として、ユキの勝率は3割くらいだった。
飢爺には7割方負けた計算になる。
しかしこれでも1割勝率は上がっている。
飢爺はネファタフルに関しては尋常では無いほど強い。
それに3割は勝っているのだから、誇っても良いのだが、ユキの心は屈辱に塗れていた。
ユキ:
「チッ、次は完勝してやります。
覚悟しておくことですね。」
飢爺:
「フン、負け犬が良く吠えおるわ。」
ユキと飢爺は甜瓜を囓りながら朝日を拝んだ。
色々やったが、二人の間には清々しい空気が流れていた。
ユキ:
「・・・さて、エディを探しますか。
昨日は結局帰ってきませんでしたからね。」
飢爺:
「気を遣ったのだろう。
いつもの態度からは想像もつかんが、そういうところもある。」
飢爺はネファタフルを指しているときの雰囲気が抜けないのか、神妙な口調を崩せていなかった。
二人が孤児院の周りをほっつき歩いていると、焚き火をつついているエディに遭遇した。
鍋を使って朝食を作っているようだ。
ユキ:
「どうも、エディ。
私達もご相伴に預かってもいいですか?」
エディ:
「・・・丁度煮上がったところなのですが・・・謀りましたか?」
飢爺:
「いや?
なんのことだか。」
本当に何も無いのに、飢爺は思わせ振りな発言をする。
エディの側には、小さく解体された肉が何個も積み上げられており、3人が食べるには十分な量が確保されていた。
3人分の食事を用意するつもりはあったが、それは自分が一番美味しい思いをしてからだと決めていたのだろう。
そんなときに間が悪くユキと飢爺が訪れたのだ。
悪態もつきたくなる。
ユキは焚き火の近くに腰を下ろすと、鍋にナイフを突っ込み、自分の肉を確保した。
飢爺も同じように確保する。
エディは諦めて、自分の肉をとった。
昨日からエディは割を食っている。
ユキ:
「昨日の話ですが、私の騎獣・・・ゲンタはどうでしたか?」
エディ:
「ほう、あの狼はゲンタというのですか。
なんというか・・・平凡ですね。」
ユキ:
「私の名前が平凡ですからね。
騎獣が大層な名前というのも腹が立つでしょう?」
エディ:
「そういうものですか。
まぁ・・・名前さえ良ければいいというものではありませんからね。」
エディは少し遠いところを見ながらそう言った。
ユキ:
「それで、ゲンタはどうでした?
噛まれました?」
エディは無言で明後日の方向を指差した。
見ると、ゲンタが気配を消して様子を窺っているところだった。
エディ:
「はっきり言って、貴方の狼は悪くありません。
私がここに来た段階ではあんな様子でした。
実力差が良く分かっていますね。」
ゲンタはユキ達三人が肉を食べているのに、警戒して全く近寄ってくる様子が無い。
それほどまでにエディを警戒しているようだった。
ユキ:
「ゲンタ、こっちに来なさい。
エディに挨拶を。」
ユキにそう声を掛けられて、ゲンタはようやく近づいてくる。
その足取りは非常にゆっくりとしたもので、エディの一挙一動に神経を研ぎ澄ませているのが良く分かった。
飢爺:
「うむ!
最近の狼には珍しいな!
これ程までに警戒心が強いとは!!」
ユキ:
「初見で私を殺しに掛かって来ましたからね。」
エディ:
「それだけ野生に近い意識でいたということでしょう。
良いことです。」
そこまで言って、ようやくゲンタはユキの横にやってきた。
しかしその目はエディを、次点で飢爺を警戒している。
ユキ:
「ゲンタ、貴方が目の敵にしているのは私の師匠にあたるエディという者です。
そして若干注意を払っているのが客人の飢爺。
どちらも少なくとも貴方より上の立場ですから、粗相の無いように。
・・・勿論、私にも粗相をしてはいけませんよ?」
最近のゲンタからの扱いを思い出し、一応釘を刺した。
ゲンタは言葉を分かっているのかいないのか、数秒ユキを見つめていたが、やがて諦めたのか焚き火の近くに陣取った。
エディは自分の分の肉を食うと、ゲンタに取り分けた肉を投げた。
ゲンタは下げ渡された肉を、少し匂いを嗅いでから口に入れた。
エディを上と認めたということなのだろう。
飢爺も肉を下げ渡したが、こちらは手を付けなかった。
飢爺はゲンタの中では違ったということだ。
ユキは飢爺からゲンタに下げ渡された肉を回収して食べた。
ゲンタはそれを怪訝そうな目で見る。
ユキ:
「飢爺にはエディとは違う強さがあるということです。
あと、食べ物をあまり無駄にしてはいけませんよ?」
ゲンタは納得したのかしてないのか、軽く鼻を鳴らした。
ユキはゲンタの分の肉を取り分けると、自分の分の肉を食べてからゲンタに下げ渡した。
これは直ぐに口に入れた。
ユキ達は朝食を楽しんだ。




